Monthly Archives: May 2015

グーグル年次開発者会議 Google I/O 2015 (The Annual Developers Conference) が2015年5月28日、29日の2日間サンフランシスコのモスコーンセンター(Moscone Center)で開催される

Google I/O 2015 – Keynote (2:08:27)

参考

  1. Google I/O 2015: “Google I/O is for developers – the creative coders who are building what’s next. Each year, we explore the latest in tech, mobile & beyond.”
  2. Google I/O 2015基調講演で見えた熾烈なAppleへの対抗心 (週刊アスキー2015年05月30日):”
    グーグルは5月28、29日の2日間、開発者向けイベント『Google I/O 2015』を開催した。… Android OSの次期バージョン“M”が披露されるなど、注目の発表がいくつかあった。… 今回特に驚かされたのが『Googleフォト』として、アルバムサービスを強化してきた点だ。… IoT機器向けのOSとなる『Brillo』やそれらを結ぶ『WEAVE』を投入するなど、着々とIoT分野の開拓にも余念がない。… 非接触のモバイル決済サービス『Android Pay』も開始。…”
  3. Googleは勝負所をさらに強化した – 私はこう見る「Google I/O 2015」(小山安博編)(マイナビニュース 2015/05/30):”米Googleの開発者向けカンファレンス「Google I/O 2015」の基調講演では、次期Androidのプレビュー版「M Developer Preview」をはじめ、様々なトピックスが出た。”
  4. 「Google I/O 2015」開催 – iOSを強く意識した基調講演に(マイナビーニュース2015/05/29):”米西海岸時間の28日、米サンフランシスコでGoogleの開発者向けカンファレンス「Google I/O 2015」が開催され、Sundar Pichai氏などによる基調講演が行われた。ここでは、モバイル関連を中心に基調講演での発表内容についてレポートしよう。”
  5. Google I/O 2015開幕–「Android M」開発者プレビューやIoTプラットフォームなど発表 (CNET Japan 2015/05/29):”Googleの開発者会議「Google I/O」が米国時間5月28日、サンフランシスコで開幕した。…次期モバイルOS「Android M」の開発者プレビューが発表されるとともに、決済プラットフォーム「Android Pay」をはじめとする搭載機能の詳細が明らかになった。またその他にも新サービス「Google Photos」やIoT用プラットフォーム「Brillo」が発表されたほか、「Cardboard」などの既存製品のアップデートなどが明らかになった。 “
  6. グーグルが明かしたワクワク5つの近未来 開発者会議の基調講演を読み解く(松村太郎/東洋経済ONLINE 2015年05月29日)
  7. io2015 (techcrunch.com)
  8. Google I/O 2015 Wrap-Up: Bangs and Whimpers (SLASH GEAR, May 30, 2015)
  9. 「Android M」、指紋認証技術を搭載 (CNET|Japan 2015/05/29):”1年以上前からうわさされていた指紋センサの追加は、Googleと「Android」にとって重要なステップとなる。Microsoft、Apple、サムスンなどは、すでに指紋認証技術を自社製品に取り入れているからだ。”
  10. Google Photosハンズオン:怖いくらい賢い(GIZMODO日本版 2015.05.30):”Google I/Oで、新たな写真管理サービスGoogle Photosが発表されました。米Gizmodoのマリオ・アギラー記者とブレント・ローズ記者によるファーストインプレッションは上々のようです”
  11. Google、IoTプラットフォームProject Brillo発表。Android派生の超軽量OS(engadget日本版 2015年05月29日):”Project Brillo はPCやスマートフォンなど従来の『コンピュータ』だけでなく、自動車からドアロックまであらゆるものをスマートにつなぐ IoT (Internet of Things)、もののインターネット向けプラットフォーム。”
  12.  米グーグル、「スマートジーンズ」開発 リーバイスと(日本経済新聞 2015/5/30):”サンフランシスコ市内で開いた開発者会議「グーグルI/O」で披露したデモでは、タッチパッドの機能を持たせた布地の一部を指でたたいてスマホの音楽を再生したり、上下になぞって音量を操作したりしてみせた。”

ブラック企業の構造と研究者の雇用不安

先日、京大の山中伸弥教授が、「京大iPS細胞研究所は、これが民間企業ならすごいブラック企業」という表現をしたそうです(記事)。しかし、これは決して京都大学のiPS細胞研究所に限った話ではありません。研究者の雇用不安は、現在の日本の科学研究全体を覆う非常に深刻な問題です。

ブラック企業とは、定義にもよりますが、労働者を劣悪な労働条件で酷使し、峻烈な選別を行い、非情に使い捨て、組織だけが成長するような会社のことです(参照:コトバンク)、これはそっくりそのまま今の研究の世界にも当てはます。

研究室では、任期付きの研究者は少しでも早く成果を出さないといけないので必然的に長時間労働を強いられます。ポスドクの報酬は年齢や学歴からは一般の人が想像できないくらいに低く、時給換算したら国が法で定める最低賃金並みになります。ポストの数があまりにも少ないため、ある程度の成果を挙げたとして もそう簡単に定職は見つかりません。任期が切れたり財源が途切れれば、ボスが温情を施したくても研究者はラボを去らざるをえません。しかし買い手市場のおかげで研究室はまた新たな労働力を調達して存続し発展できます。現在の日本の科学研究において、研究室というのは構造的にブラック企業そのものなのです。

ブラック企業の場合は経営者の人格や経営姿勢が問われるところですが、研究室の場合は教授の人柄が良く部下思いであったとしても、現在の研究制度が抱えるこの構造的問題をどうすることもできません。

日本の科学技術政策に関する提言の中では、「至高の科学力で世界に先んじる」とか、 「世界的な卓越した教育研究拠点の形成」などと非常に耳当たりの良いフレーズが飛び交っていますが、人生設計もままならずに不安に苛まされているポスドクや任期付き教員ばかりという暗澹たる研究の現場で、そのような崇高な目標が本当に実現し得るのでしょうか?

”ポスドク等の約40%の年収は400 万円以下である。また半数以上が退職金や住宅手当の支給を受けられない。”

”任期制であることが結婚、子どもを持つこと、住宅購入などに影響すると考えている人の割合は70%もしくはそれ以上”

“1週間の労働時間は平均54.8 時間、40%以上が60 時間を超え、100 時間を超える人もいる”

”13%程度が自身もしくは配偶者の実家から経済的援助をうけている。年齢別では41 歳以上の人、また子どもの有無別では子どもがいる人が実家から援助を受けている率が高く、…”

“給与の財源は文部科学省研究費助成金( 26% )、その他の競争的資金(22%)、戦略的創造研究推進事業とグローバルCOE プログラム(それぞれ8%)が多く、上司の研究費による雇用が中心である”

“78%の人が次の職を探している。…大学や研究所での求人が少ないこと、公募していても形式的で内部昇格が多いことを危惧している。” (引用元:生命系における博士研究員(ポスドク)ならびに任期制助教及び任期制助手等の現状と課題 平成23年 日本学術会議題)

「世界最高水準の卓越した研究」の担い手の多くが、1年契約で年収が300万円台のポスドク(博士研究員)や時給1000円程度のラボテクニシャン(技術員) だったりするのが実際のところです(人件費の財源や機関にもよる)。しかも、彼らは成果を挙げても、どれほど優れた実験技術を持っていても、何歳になっても報酬は増えず生活の保証もありませ ん。せめて、能力や成果に応じてパーマネントの職を得る機会や、昇給の機会を与えるような人事制度へ早急に変えない限り、日本の科学研究は国際的な競争力を失っていくでしょう。

“ポスドクを複数回繰り返す35 才以上のポスドク(シニアポスドク)が2012 年の調査で全体の37.1%に達しています” (引用元:生科連からの<重要なお願い> 生物科学学会連合 ポスドク問題検討委員会

「酷使」や「使い捨て」というのは認識の問題もありますが、日夜研究に勤しんで、(少なくともボスがその地位に安泰で居られる程度の)論文成果(インパクトファクター5~10)を挙げ、ラボに対してもサイエンスにおいても貢献した研究者が、研究を辞めて教育職や研究事務に転向したり、研究や教育とは全く無関係な職に転じたり、最悪の場合完全に失業するしかないというのが、日本の科学研究の現状です。成果が出ない人間を切り捨てるブラック企業。成果が出ている人間をも切り捨てる研究所。現在の日本の研究社会は、ある意味、ブラック企業よりも更にブラックかもしれません。

”「お前が研究者をやめてくれて心底ほっとした」
母親もそんな言葉で大卒初任給ほどの待遇で居場所を探してきた息子の転身を心から喜んでくれ、…”
ポスドクからポスドクへ 円城塔 日本物理学会誌 Vol.263, No.7, 2008  PDF

 

 

参考

  1. 提言 生命系における博士研究員(ポスドク)ならびに任期制助教及び任期制助手等の現状と課題 平成23年(2011年)9月29日 日本学術会議 基礎医学委員会 (PDF55ページ)
  2. 生科連からの<重要なお願い> 生物科学学会連合より行政(国、地方)、企業、大学・研究機関、および研究者コミュニティーに対するお願い今、次世代を担う若手研究者が窮地に陥っています。ポスドク(任期付博士研究員)の雇用促進と研究者育成に是非ご協力ください。平成27 年4 月(第二版)生物科学学会連合 ポスドク問題検討委員会(PDF16ページ)
  3. 理研の松本理事長、人事制度の一本化・英語の公用語化などの改革案を発表 – 「他の研究機関の手本となるようなモデルを構築したい」(マイナビニュース 2015/05/25):”2つ目の柱は「至高の科学力で世界に先んじて新たな研究開発成果を創出する」となっている。”
  4. 地域別最低賃金の全国一覧(厚生労働省):平成26年度東京都最低賃金時間額888円
  5. 平成19 年度文部科学省科学技術振興調整費 女性研究者支援モデル育成事業「研究者養成のための男女平等プラン」成果 2007-1 研究者養成のための男女平等プランに関する調査(3)若手研究者の現状と支援ニーズ調査報告書(聞き取り調査編)(PDF194ページ):”具体的な数字を挙げてくれた例によれば、手取りで毎月18 万円程度ということであった(J 助手・20 代・男)。なお規程上は、早稲田大学全学共通で、助手には年間3 ヶ月分の賞与が与えられているとのことである。したがってJ さんの年間所得は270 万円前後と推定される。”
  6. アカデミックの世界は理不尽か? (Chem-Station)
  7. 作家の読書道 第101回:円城塔さん (インタビュー記事):”大学の状況って2000年を過ぎたあたりからものすごく変わって、これからどうなるかも全然わからない。下手をすると、各地を転々としながら、だいたい2年から5年任期の中で最後の1年は次の行き先を探さなくちゃいけない。定年が60歳だとすると、あと30年間くらい数年刻みで転々とする生活をやっていくのはさすがに無理だと思ったんです。”
  8. ポスドクからポスドクへ 円城塔 (日本物理学会誌 Vol.263, No.7, 2008  PDF)
  9. すごいことになってる  (アメリカポスドクの歩き方 2012/04/23): “十分な業績と能力があって人柄もよいポスドクが特任助教という名のポスドクへ平行移動していたり、同じように十分な業績と能力と人柄のよい任期付助教がそのまま任期付助教として平行移動している。最近多い。これはびっくりした。本当にびっくりと同時に本当に日本の科学の停滞がはじまってることを実感した。…Nature級の論文をもつ助教が任期切れで他へうつるのにほとんど論文のない准教授はそのままそのラボに残る。”
  10. STAP問題が照らし出した日本の医学生物学研究の構造的問題(小野昌弘のブログ Masahiro Ono’s blog 2014年04月02日):”彼らには土日なし、夜11時まで、というのが標準的な長時間労働が強制されるが、研究者という名目だけで、自分の研究を教授の許可なしには自由に発表できない。そして老いた教授たちがいつまでも職に居座っているから、若者が大学・研究機関で定職に就ける見込みは殆ど無い。彼らはいつまでも下働きとしてこき使われている。そして彼ら若者を「指導」している教授たち自身がどれだけ最新科学を理解しているかは疑問なのだから、当然その下についている大学院生・研究員たちは、「ピペド」以上の存在にはなれない。しかも定職がない・学位がかかっているといった弱みにつけこまれて日常的に教授から理不尽な圧力をかけられる。こうした異常な事態が普通に見られる。”

 

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CiRA これが民間企業ならすごいブラック企業

2015年5月23日に橿原ロイヤルホテル(奈良県橿原市)で奈良県立医科大学開学70周年記念式典が執り行われ、京都大の山中伸弥教授が記念講演を行いました。その中で所長を務める京都大iPS細胞研究所(CiRA)について、CiRAの約300人の教職員のうち9割が不安定な有期雇用であることから、「これが民間企業ならすごいブラック企業。何とかしないといけない」と、研究者の雇用不安にも言及したそうです。

 

参考

  1. iPS細胞研究所の9割有期雇用 山中教授「民間企業ならすごいブラック企業。何とかしないと」 奈良で講演産経WEST 2015.5.24):”一方で、所長を務める京都大iPS細胞研究所(CiRA)については、約300人の教職員のうち9割が不安定な有期雇用であることから、「これが民間企業ならすごいブラック企業。何とかしないといけない」と指摘。”
  2. 開学70周年記念式典を挙行しました(奈良県立医科大学 2015年5月27日):”記念講演 細井理事長・学長と古家理事(附属病院長)が座長となり、山中伸弥京都大学iPS細胞研究所所長・教授を講師にお迎えし、iPS細胞が移植治療だけでなく難病治療薬の開発にも重要な役割を果たし始めている等「iPS細胞研究の現状と医療応用に向けた取り組み」について、ご講演いただきました。”

 

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痕跡細胞からの記憶想起にシナプス増強は不要

逆行性健忘においても、記憶は痕跡細胞の中に保持されていることをMITの利根川研究室がマウスの実験で明らかにし、サイエンス誌に発表しました。論文タイトルはEngram cells retain memory under retrograde amnesia。

マウスを小箱に入れ、弱い電気刺激を与えて小箱の環境が怖いことを記憶させました。通常、こうした体験をさせた翌日に、マウスを同じ小箱に置くと怖い体験を思い出してマウスは“すくみ”ます。しかし、マウスが小箱は怖いと記憶した直後に、シナプス増強が起こらないようにする薬剤を与えると、マウスは怖い体験の記憶を失って、同じ小箱に入れられてもすくみませんでした。

ところが、翌日、怖い体験をした小箱とは別の小箱に同じマウスを入れ、怖い体験の記憶痕跡を人工的に活性化したところ、記憶を失ったはずのマウスがすくみました。これは、シナプス増強がなくても記憶は痕跡細胞群の中に直接、保存されていることを意味します。理化学研究所60秒でわかるプレスリリースより)

論文著者は、Tomás J. Ryan, Dheeraj S. Roy, Michele Pignatelli, Autumn Arons, Susumu Tonegawaで、最初の3人に関してはcontributed equally to this workとのことです。

Tonegawa Lab Members (利根川研究室ラボメンバー The RIKEN Brain Science Institute and the Picower Institute for Learning and Memory at MIT)

参考

    1. Engram cells retain memory under retrograde amnesia. Science 29 May 2015: Vol. 348 no. 6238 pp. 1007-1013 DOI: 10.1126/science.aaa5542 (Sciencemag.org)
    2. 記憶痕跡回路の中に記憶が蓄えられる-神経細胞同士のつながりの強化は記憶の想起には不要- (理化学研究所 2015年5月29日 60秒でわかるプレスリリース):より詳細な報道発表資料
    3. 逆行性健忘:発症前の過去のことがらを思い出すことができなくなること。外傷性脳損傷や認知症で発症することが多い。(理研プレスリリース補足説明
    4. 思い出せないけど…脳には記憶残る 理研がマウスで実験(朝日新聞デジタル 2015年5月29日):”認知症などで過去を思い出せないのは、記憶が失われたのではなく、残っているのに取り出せないだけ――。そんな可能性を示すマウス実験の成果を、理化学研究所のグループが29日付米科学誌サイエンスに発表する。”

日本の科学技術イノベーション総合戦略

新聞報道によると、日本政府は2015年5月28日、国の研究開発の指針となる今年の「科学技術イノベーション総合戦略」の原案を総合科学技術・イノベーション会議の会合で示しました。

参考

  1. 2015年(平成27年)5月28日 第9回基本計画専門調査会 (木)14:00~16:00 中央合同庁舎8号館6階 623会議室 配布資料  資料1第5期科学技術基本計画に向けた中間取りまとめ(案)(PDF28ページ)、資料2今後の予定について、資料3第8回基本計画専門調査会議事録(案)
  2. 総合科学技術・イノベーション会議(Council for Science, Technology and Innovation):総合科学技術・イノベーション会議は、内閣総理大臣、科学技術政策担当大臣のリーダーシップの下、各省より一段高い立場から、総合的・基本的な科学技術・イノベーション政策の企画立案及び総合調整を行うことを目的とした「重要政策に関する会議」の一つです。
  3. 科学技術イノベーション総合戦略2015構成(案)(PDF1ページ)
  4. CRDS-FY2014-FR-01 研究開発の俯瞰報告書 主要国の研究開発戦略(2015年)(PDF191ページ)
  5. 科学技術:おもてなしシステムを重点課題に 政府(毎日新聞 2015年05月28日):”2020年の東京五輪・パラリンピックに向け、多言語翻訳できるロボットの開発や、バスと信号機が通信して定時運行を可能にする「次世代都市交通システム」の実用化など、観光客のための「おもてなしシステム」構築を、重点課題として掲げた。”
  6. 自動運転車など科技戦略案提示 政府、16年度予算から振り分け(日本経済新聞 2015/5/28):”年間約4.5兆円で推移する科学技術関係予算を、2016年度予算から自動運転車や農作業の自動化といった重点分野に振り分ける。”
  7. 科学技術イノベーション総合戦略2014 ~未来創造に向けたイノベーションの懸け橋~ 平成26年6月24日 閣 議 (PDF82ページ)

学振 申請書の書き方と面接対策

学振関連記事

ネットで公開されている学振(日本学術振興会特別研究員)申請書の書き方ガイド・面接対策まとめ

心の準備

学術振興会特別研究員の審査方針に、「学術の将来を担う優れた研究者となることが十分期待できること」とあります。ですから、「私は、学術の将来を担う優れた研究者になります。」と公言する覚悟をまず持ちましょう。この公約を表現したものが学振申請書になります。

採用申請は、たかが10ページ程度の文章ですが、 書く精神的、肉体的負担は大きく、私も胃痛を生まれて初めて経験しました 「私は、誰よりも優秀なので、お金をもらうべきである」ぐらいの不遜さで書いた方が、個人的に採用されやすいと思っています( ω ) (めざせ学振!! かんたん特別研究員DC1採用申請の書き方 (文系院生向けです。) オニテンの読書会 2017-02-08

トップレベルの大学や研究所で研究職を取ろうと思ったら、大学院での目標を単に修士号の取得、博士号の取得に設定していてはだめです。 修士のうちにジャーナルに査読論文を出版して早めに学振をとり、博士課程では自力で論文を最低でも数本は出版するぐらいの心構えでなくてはそういうポジションは狙えません。 博士号などは、研究者にとって自動車免許程度のものであり、博士合格基準をはるかに上回る成果を挙げて博士号など「おまけ」でもらう、というレベルでないと厳しいでしょう。…学振になるべく早く採用されることが研究者として生き残っていく上で重要なポイントです。戸谷研 学生心得

不採用になったのは、君の存在性が否定されたからではないよ。(クマムシさんからの学振アドバイス

学振に落ちる人のほとんどは、トップを目指す覚悟が足りません。… 『うちの大学からの採用者なんてほとんど居ない』と嘆くあなたは、東大の、MITの院生にも負けない自信を持っていますか?(学振DC1を本気で狙うためにすべき4つのこと はてな匿名ダイアリー 2009-01-20)

【学振・都市伝説】特に学振DC1について、投稿論文業績、指導教員の知名度、大学のレベルが、採用の基準に関わるという噂を聞く。これは明らかに嘘で、投稿論文なし、知名度の低い指導教員、東大京大ではないが、DC1で採択された人を沢山知っている。そんなM2の皆さんは、悲観する必要はない。(@Markchloroさんによる学振書類書き方 まとめ

 

学振申請書の書き方

心構えから具体的な細かい書き方まで、網羅的でバランスの良いアドバイス集がネット上に多数あります。

学振特別研究員になるために~2018年度申請版  東京工業大学で開催された 日本学術振興会特別研究員 公募にかかる学内説明会 (2017年3月9日) での講演資料 (講師は『学振申請書の書き方とコツ DC/PD獲得を目指す若者へ』(講談社 2016年)の著者)

学振申請書を磨き上げる11のポイント [文章編・前編] 日本最大の化学ポータルサイト Chem-Station 2013/5/8 一般的な話題, 化学者のつぶやき 学振, 申請書, 科研費 投稿者: cosine

学振申請書を磨き上げる11のポイント [文章編・後編] 日本最大の化学ポータルサイト Chem-Station 2013/5/9 一般的な話題, 化学者のつぶやき 学振, 申請書, 科研費 投稿者: cosine

採択される申請書は申請者の抑えきれない情熱が文字に置き換えられたものである。もし申請書にイージーなミスが発見されたとすれば、申請者は書類を読み返す手間さえ惜しんだのだと、その程度の情熱しかなかったのだと冷徹な評価が下されてしまうだろう。学振に通るための5つのポイント 日本バイオロギング研究会の会報に寄稿した大学院生向けの文章 2013年5月2日

日本学術振興会 特別研究員(PD)に採用されるための申請書の書き方とその考察 Published on Mar 12, 2016 2016年3月12日に若手の会で発表した時に用いたスライド

博士課程で特別研究員(学振)として活躍するために U-runner’s View April 23 [Mon], 2012, 23:59

 

どう審査されるかの理解

採点基準と採点方法がわかると、どう書いたらいいかわからないという悩みが解消します。採点のポイントに即して書けば良いのですから。

日本学術振興会特別研究員申請対策説明会「審査について」京都大学 研究推進部研究推進課研究助成掛 平成29年3月22日(PDF) K.U.RESEARCH 京都大学研究支援 日本学術振興会特別研究員(DC・PD・RPD・海外特別研究員

 

一貫性を持たせること

「現在までの研究状況」と、「これからの研究計画」が統一的な学理の中で、一貫した流れになると良いです。(あしたからがんばる ―椀屋本舗 December 24, 2012 学振に2回落ちて3回目で通った話

最初から最後までぶれずに一本の筋を通すこと(PDF 申請書類作成にあたり注意した点 2013/4/5 2014年度(平成26年度)日本学術振興会特別研究員応募に関する説明会

書類はひとつの物語になっていなければならない。物語が「自分語り」でも「研究分野史」でもなく、自分の研究が後世から見たときにちゃんと歴史的物語になることを想定して、その筋道をすっと通してあれば、読み手はおもしろく読めるはずだ。【理想論】(@rhetoricoさんによる【学振書類】の書き方  togetter >人文 2013年4月20日

 

読める日本語で書くこと

日本語が危ういレベルの人は、これを良い機会と捉えて、国語力をもっと上げましょう。作文技術を習得するための本が多数出版されています。

ひとりの審査員が何人分もの申請書をみるので、審査員によっては誤字脱字、常体敬体、その他文章の体裁に乱れがあるもの、一言でいうと読みにくいものは中身を確認することなく切り捨てられる可能性がある。企画書などでも同じだと思うが、人に読んでもらうレベルに達していない文章はアカン、ということです。(学振とかの申請書の書き方について書いてみる Beyond the Silence Sound of Science 2016-03-21)

 

人に見せてもらうこと

百聞は一見に如かず。実例を見ると、「そう書けばいいのか!」ということが簡単にわかります。

同じ研究室ですでに学振を もらっている人がいたら、その人の研究計画書は絶対に勉強になるので、参考にするにせよしないにせよ、もらって見てみましょう。(学振取るまで(NAIST 版)

自分の申請書を書き上げる前にやるべきことがあります。… 一度書き上げてしまった申請書は、質が悪くても、自分の目には良い申請書に映ってしまいます。1. 学振に採用された人の申請書を集める(先輩から) 2. 学振に採用された人の申請書を集める(Webから) 3. 集めた申請書を採点する (学振特別研究員 申請書(DC1/DC2/PD)の書き方:審査員視点を忘れるな Sizzleがはしる 2016-03-24 )

この申請書,決してひとりで書くものではないんですね.… どんなに意気込んで「自分だけで!」なんて思っても,先生・先輩方の書く科研等の申請書に勝てるはずがありません.研究のアピール方法,書類の見易さ,図の使い方などなど...これは実際に聞いてみないと分かりません.近くにいる先生,学会などでお世話になっている先輩等,様々な人から情報を集めてください.(MINEHIROの日本学術振興会特別研究員DC1への道 ~申請書作成編~ 帯広畜産大学 環境微生物学研究室 2014/2/14

過去の申請書資料を学内者限定で閲覧できる大学もあるようです(京大)。

 

人に読んでもらうこと

自分で何回読み返しても、誤字脱字、論理のギャップや矛盾、説明の過不足、冗長さや無駄な語句、読みにくさ、レイアウトの悪さ、その他細かい点、根本的な考え違いなどになかなか気づけないものです。

指導教官とのやりとりだけだと、どうしても視野が狭くなって専門性が強くなりがちなので、それ以外の人に読んでもらうのも大事だと思います。(学振の申請書を書く時に気をつけたこと

私の場合は、初めて他の人(ラボ出身の先輩)に申請書を読んでもらいました。自分では見落としていた思いがけないポイントを多数指摘してもらって、わかりやすい申請書になったと思います。今回通ったのはこれが一番でかかったのでは、と個人的には思っています。(学振の申請書を書く時に気をつけたこと 酵母研究者の長くて短い一日 2011年3月 3日

申請書を交換できる友人を持とう(一番重要)◦ひとりよがりで書き上げてうまくいく人は少ない。◦恥ずかしがらずに人に見せる(学振&科研費申請書で気をつけたこと EVERNOTE更新日 2017/05/01

【学振申請書・大前提】学振に採用された経験のある人と、知り合いになれるかどうかが、採用の為の最大の秘訣である。そして、いろいろアドバイスをもらい、コメントしてもらう事が大切。(@Markchloro さんによる学振書類書き方のまとめ togetter 2013年5月7日

自分の周りには読んでくれそうな人がいないからといって諦めないでください。真剣さと覚悟を持って頼めば、いままでほとんど話したことがなかった先輩、先生も喜んで手助けしてくれるはずです。

 

わかりやすく書くこと

わかりやすい申請書を書ける人は、肝心なことが何かをよく考え抜いていて、論理もよく整理できていることが多い。([学振]申請書と論文の違い

何も知らない人に研究内容を説明する文章を作ります。(学振DCを取る方法(僕の場合) http://www.oishi.info.waseda.ac.jp/~takayasu/dc.html)

“研究目的が明快でない申請書はその時点で×”ともおっしゃっていた.申請書全文を読んで,審査員自ら研究目的を悟ってくれることはない.(審査員経験者から申請書の書き方について聞いてみた ちゃらんぽらんな新米漁師のブログ 2010年5月12日

最初に「これまでの研究」って書くじゃないですか。いきなり「研究」を書きすぎなんです。いきなり専門的すぎるんです。やっぱり読む側は申請書を書く人間にも、そのテーマにも興味をもっていくれるわけじゃないんですから、読む側にも納得できそうな問題提起を明示して、そこから「これまでの研究」と「現在の状況」をつなげていくのがいいんじゃないかな、って。(■絶対に受かるとは思わない学振申請書の書き方  はてな匿名ダイアリー 2016-03-28

 

申請書の具体例

生物学、医学、化学、コンピュータサイエンス、人文社会科学など分野は違っていても、良い申請書には論理的な流れ、熱意、ビジョンが見えるという共通点があり、実例から多くのことが学べます。

学振・海外学振の書き方  学振申請書の具体例 http://科研費.com/how-to-write-gakushin/

学振取るまで(NAIST 版)

2008年度にPDに通ったときの書類を置いておきます。 (http://jj57010.web.fc2.com/gakushin.html):社会科学・法哲学の内容 申請者の注釈付き

学振PDに提出した計画書をアップします 「人文学」の「外国語教育」枠で応募 2012年「不採用」 2013年「採用」 (こにしき(言葉、日本社会、教育)  April 09, 2014)

 

 

面接の対策

せっかく知らない人にアピールする場なので、この研究は面白そうだなと思ってもらいたいでしょう。面接官を楽しませるのが目標です。(学振DCを取る方法(僕の場合)

それよりも、予め用意してきたスピーチを、重要な点や研究の特長は特に強調しつつ、4分間流れるように披露するのが結局一番良いのである。(学振研究員面接審査について:スピーチ編

それでも想定外の質問はくるものだけど,これ以上ない!!ってくらいに準備しておくとなんとかそこで自信を保った回答ができます.(学振 面接 感想戦

業績がほとんどない中で採用になったのは、提案した研究のおもしろさ(わくわく感ときっちり感)を共感してもらえたからだと思います。(学振面接に行く (本番編)

 

【注意】申請書、面接の様式は変更されている部分があります。最新情報を公式サイトでご確認下さい。

 

参考

  1. 日本学術振興会特別研究員

 

更新:20170513 新たな検索結果を追加

1994年ノーベル経済学賞のナッシュ氏が死去

映画「ビューティフル・マインド」のモデルとなった1994年ノーベル経済学賞受賞の数学者ジョン・ナッシュ氏(86)と夫人のアリシア・ナッシュさん(82)が、5月23日に乗車中のタクシーの事故のため亡くなりました。ニュージャージー州で帰宅する途中で、タクシーは別の車を追い越そうとした際にガードレールに衝突し、夫妻が車外へ投げ出されたそうです。19日にノルウェーで行われたアーベル賞の授賞式に参加し自宅に帰る途中でした。

参考

  1. ‘Beautiful Mind’ mathematician John Nash, wife killed in car crash (CNN May 25, 2015):”John Forbes Nash Jr., the Princeton University mathematician whose life inspired the film “A Beautiful Mind,” and his wife died in a car crash Saturday, according to New Jersey State Police.”
  2. ‘A Beautiful Mind’ Mathematician John Nash and His Wife Killed in New Jersey Taxi Crash (ABC NEWS May 24, 2015):”Princeton University mathematician and Nobel Prize winner John Nash, whose life was the subject of the film “A Beautiful Mind,” was killed in a taxi crash along with his wife in New Jersey on Saturday. “
  3. John Nash, Nobel Prize Winner and Subject of ‘A Beautiful Mind,’ Killed in Car Crash (NBC NEWS): “John Nash, winner of the Nobel prize in economics and the subject of the movie “A Beautiful Mind,” was killed with his wife Saturday in a car crash in New Jersey, according to state police.”
  4. John F. Nash Jr., Math Genius Defined by a ‘Beautiful Mind,’ Dies at 86 (New York Times, MAY 24, 2015):”John F. Nash Jr., a mathematician who shared a Nobel Prize in 1994 for work that greatly extended the reach and power of modern economic theory and whose long descent into severe mental illness and eventual recovery were the subject of a book and a film, both titled “A Beautiful Mind,” was killed, along with his wife, in a car crash on Saturday in New Jersey. He was 86.”
  5. ‘A Beautiful Mind’ mathematician John Nash killed in taxi crash (7online.com):”The Nobel Prize-winning mathematician whose struggle with schizophrenia was chronicled in the 2001 movie “A Beautiful Mind” has died in a taxi crash along with his wife in New Jersey. “
  6. John F. Nash, Jr. and Louis Nirenberg share the Abel Prize (THE ABEL PRIZE):”The Norwegian Academy of Sciences and Letters has decided to award the Abel Prize for 2015 to the American mathematicians John F. Nash, Jr. and Louis Nirenberg “for striking and seminal contributions to the theory of nonlinear partial differential equations and its applications to geometric analysis.” The President of the Academy, Kirsti Strøm Bull, announced the new laureates today 25 March. They will receive the Abel Prize from His Majesty King Harald at a ceremony in Oslo on 19 May.”
  7. John F. Nash, Jr. and his wife Alicia killed in car accident (THE ABEL PRIZE):”John F. Nash, Jr., who together with Louis Nirenberg received the Abel Prize on Tuesday 19 May, was killed in a taxi accident on the New Jersey Turnpike on Saturday afternoon local time. Nash (86) and his wife Alicia (82) were on their way home after a week of Abel celebrations in Oslo and Bergen when they were both killed in the car crash.”
  8. ジョン・ナッシュさん事故死 米数学者、半生映画化も(朝日新聞DIGITAL2015年5月25日):”19日には、ノルウェー政府が数学での研究実績を評価するために設けた「アーベル賞」の授賞式のため、オスロを訪れていた。米メディアによると、23日に帰国し、空港から自宅に戻る途中に事故に遭ったという。”
  9. 米数学者のジョン・ナッシュさんが交通事故死、半生映画化も(CNN 2015.05.25):”米ニュージャージー州の警察当局は25日までに、米プリンストン大学の数学者で、その半生が映画「ビューティフル・マインド」の題材にもなったジョン・ナッシュさんが交通事故で死亡したと発表した。”
  10. 「ゲーム理論」でノーベル賞の米数学者が事故死 ジョン・ナッシュ氏、映画化でアカデミー賞(産経ニュース 2015.5.25);”米プリンストン大学教授などを歴任、複数の人間や国家などの間の相互作用をモデル化した「ゲーム理論」分野の業績で、94年にノーベル経済学賞を受賞した。”
  11. Home Page of John F. Nash, Jr. (http://web.math.princeton.edu/jfnj/)
  12. Prize Seminar, December 8, 1994 The Work of John Nash in Game Theory (nobelprize.org)

論文から学ぶHypothesis-driven research

もともと記載的な学問である解剖学などは別として、サイエンスの世界ではまず仮説を立ててそれを検証するという仮説駆動型研究が”作法”であり、今後もそうそう変わらないでしょう。ビッグデータの時代といわれている現在は、最初にデータありきの「データ駆動型」研究もあるとは思いますが、解析方法を選ぶ際に、そこになんらかの仮説が存在しているはずです。

研究費の申請書を書くにしても、論文を書くにしても、プレゼンテーションをするにしても、検証すべき仮説が中心に据えられます。にもかかわらず、仮説駆動型の研究姿勢が日本で十分に教育されてきたかといえば、不思議なことに全くそうはみえません。いいジャーナルに論文を出すことに困難を感じる日本人が多いとすれば、それは仮説駆動型の研究を行うための教育がほとんどなされていこなかったせいではないかと思います。

研究のやり方の違いにもびっくりしました。日本では、針でも突っ込んで何が出てくるか見てみようという調子だけれど、エックルス先生は、予想を頭の中で組み立て、計画的に実験する。(未知に挑戦する私の脳  伊藤 正男  JT生命誌研究館 サイエンティスト・ライブラリー

 

研究室における仮説不在の教育の実態は、実験科学に限らないようです。広中平祐 著『生きること 学ぶこと』にも同様のことが指摘されています。

 この「仮説」ということについては欧米人と日本人では、考え方がかなり違う。欧米人はまず仮説をたててから演繹するという考え方が強い。
私はよく、米国の学生に向かって、
「君たちは今どういうことを研究しているのか」
 と質問することがある。そうすると、彼らは、まず自分のもっている仮説を説明する。
ところが、日本の学生に同じような質問をすると、大抵、
「私は代数を勉強しています」
「幾何を勉強しています」
 という答えが返ってくる。
 要するに、米国の学生はまず仮説を立てて、それからいろいろ演繹してみて、ダメだったらその仮説を変えればいいという考え方をするが、日本の学生は、とにかく何かを勉強してみて、それを足場にして論文を書いてみようと考える。そして、それがつまらなくなってきたら方向を変えて何か新しい方向を決めればいい、それまでのやり方を改良していけばいい、こういう研究態度が非常に多いのである。
 仮説を立てるということは、ある意味で勇気のいることである。というのは、数学の分野でも物理の分野でも、初めに立てた仮説は大抵ダメだというジンクスがあるからだ。
 しかし、仮説を立てて一生懸命研究しているうちに意外な発見が生まれるのである。だから私は、初めに立てた仮説はダメなものでも、やはり仮説は立てなければならないと思う。
 そういう意味で、若い読者諸君が今後、創造的な仕事をしていこうとするならば、この仮説を立てて演繹するという考え方をもっと採り入れるべきだと思うのである。
(広中平祐 著『生きること 学ぶこと』集英社文庫1984年 114~115ページ)

 

大学院生が仮説不在のまま5年間なんとなく実験を続けて何かしら実験結果を得たとしても、完全に手遅れであり、それらのデータをもとに良いストーリーをつくることは困難です。

研究を始める時、計画を立てるとき、実験をするときには、必ず自分なりの仮説を構築してから始める癖をつけてください。そうすることが、結局はゴールへの最短で最善の道になるのです。仮説も無しに、やってみなければ分からない、やってみたらできるかもしれないと力任せに実験をするような愚かな真似を決してしないでくださいそんな事をしてもサイエンスとしては何の意味も 無く、ただの博打でしかないのですから。(必ず仮説を定義する 総合技術コンサルティング&人材育成 ジャパン・リサーチ・ラボ)

一つの研究はその成果を論文にまとめることにより一区切りつくわけですが、良いストーリーがないと良い論文にはなりません。また、仮説が書かれていない研究提案書で研究費を申請しても、通る可能性は低いでしょう。「仮説」と聞くと仰々しく感じる人がいるかもしれませんが、そもそも研究の場で使われる仮説とは何でしょうか?

 「まず実験をしてみてそれから考えよう」ということは多くの研究者がとっている姿勢で、一見これには仮説がないように思えるが、本当は違うと思う。例えば、変異体の遺伝学的スクリーニングは、関与している遺伝子の存在を仮定してそれを検証する実験であるし、あるタンパク質の細胞内局在を見る実験は、それが特定のオルガネラや領域に局在しているのではないかという仮説の検証である。ただ、仮説をどれだけ意識するか、どれだけ深い仮説をもつかには研究者によって大きな違いがあると思う。グラント申請レベルのプロジェクトに仮説があるのは当然であるが、どんなに些細な実験にも仮説は存在するはずである。仮説がなければ検証不可能で、そのような実験は目的を失っている。…(【細胞生物,Vol 15, No. 1 (2004)巻頭言より転載】東京大学大学院医学系研究科 水島研究室 分子生物学分野

仮説とは、簡単にいえば、「合理性のある提案」だとDavid Lindsay氏は著書の中で説明しています。ただし仮説は2つの特徴を備えていなければなりません。一つは「これまでの知見と矛盾しない」こと。もう一つは「検証可能である」ことです。

There are many texts on the philosophy of science and scientific method that deal extensively with the hypothesis but, in short, we can describe it as ‘a reasonable scientific proposal’. It is not a statement of fact but a statement that takes us just beyond known information and anticipates the next logical step in a sequence of supportable precepts. The hypothesis has to have two attributes to be useful in scientific investigation: it must fit the known information and it must be testable. To comply with the first attribute, you the scientist have to read and understand the literature. To comply with the second, you have to do an experiments. In essence, the paper you are about to write concerns nothing other than those two things. You can see why the hypothesis is so central to scientific writing. (強調のため一部太字 引用元:David Lindsay, Scientific Writing = Thinking in Words, page 7)

あまり教育的でない研究室に入ってしまった大学院生であっても、実際の論文を読むことにより仮説駆動型研究の何たるかを学ぶことができます。論文を構成する上でhypothesisがどのように使われているかを、以下、5つの論文を例に見てみます。

(1)その研究分野における比較的大きな仮説

この例ではまず仮説を提示し、仮説を検証するための実験結果を述べ、その実験結果が仮説に合うものであったと結論しています。

Neuronal oscillations have been hypothesized to play an important role in cognition and its ensuing behavior, but evidence that links a specific neuronal oscillation to a discrete cognitive event is largely lacking. We measured neuronal activity in the entorhinal-hippocampal circuit while mice performed a reward-based spatial working memory task. During the memory retention period, a transient burst of high gamma synchronization preceded an animal’s correct choice in both prospective planning and retrospective mistake correction, but not an animal’s incorrect choice. Optogenetic inhibition of the circuit targeted to the choice point area resulted in a coordinated reduction in both high gamma synchrony and correct execution of a working-memory-guided behavior. These findings suggest that transient high gamma synchrony contributes to the successful execution of spatial working memory. Furthermore, our data are consistent with an association between transient high gamma synchrony and explicit awareness of the working memory content. (強調のため一部太字 引用元:Cell 157(4):845-857の要旨)

(2)実験一つ分の小さな仮説

仮説と一口にいっても、ある研究分野に何十年も君臨しているような大きなものから、下の例のように、研究論文の中で自分で設定した小さな仮説まで様々なものがありえます。

Given that LPA is known to activate cortical contractility via the Rho/Rock pathway, we hypothesized that a mechanical polarization mechanism of the cell cortex could trigger the transformation of progenitor cells into stable-bleb cells (Carvalho et al., 2013). To test this hypothesis, we treated stable-bleb cells with the Rho kinase inhibitor Y-27632 or the myosin-II inhibitor Blebbistatin (Figure 2C). Treated cells lost their characteristic polarization, supporting a critical role for Rho/Rock-mediated cortical contractility in driving stable-bleb cell transformation. (強調のため一部太字 引用元:Cell 160(4):673-685のResultsセクションの一部)

(3)論文一つをまとめるための仮説

Hyothesizeという言葉は研究論文で比較的広い意味合いで用いられることもあります。下の例では、採用した方法論の有効性を示すのにHyothesizeという言葉が使われています。

Since computational modeling suggests that a failure to segregate protein damage may result in a reduced fitness (Erjavec et al., 2008) and functions crucial for cellular fitness are often performed by parallel partly redundant pathways, we hypothesized that machineries involved in the partitioning of protein aggregates could be identified by systematically screening for genetic interactions between SIR2 and nonessential and essential genes using synthetic genetic arrays (SGA) analysis ( Tong et al., 2001 and Tong et al., 2004). Using this approach, we found that cells lacking Sir2p share many genetic interactions with the conditional actin mutant, which is a result of sir2Δ cells showing a defect in CCT-chaperonin-dependent folding of actin. (強調のため一部太字 引用元:Cell 140(2):257-267 イントロダクション)

(4)因子を発見するための仮説

何か新規の因子を(偶然)発見した場合には仮説に基づいたストーリーを作りにくいのではないかと思う人がいるかもしれませんが、そんなことはありません。合理的な理由に基づいてある因子の存在を仮定し、その因子が満たすべき条件を挙げ、実際にそれらの条件を満たす因子を発見したという下の論文のような論理展開は、実際の発見のいきさつがどうであれ適用可能です。

Given the potential for nutrients to stimulate inflammatory pathways and the importance of keeping these pathways in check, we hypothesized that previously unrecognized counterregulatory mechanisms might exist to protect cells from activation of inflammatory pathways during physiological fluctuations in nutrient exposure or in nutrient-rich conditions. We reasoned that a factor participating in such a coordinating mechanism between nutrient and inflammatory responses would be expected to meet several criteria: (1) the gene product should be present in tissue types responsible for nutrient clearance from blood, such as adipose tissue; (2) expression or activity should be regulated by both nutritional and inflammatory stimuli; (3) the factor should regulate inflammatory signaling components and/or gene expression (cells or tissues lacking such a factor would then exhibit excess or prolonged inflammation in response to challenges by both nutrients and inflammatory mediators); (4) the factor should regulate cellular metabolism, and its absence should result in impaired cellular metabolic function; and (5) through regulation of metabolic function in particular cell types and organs, the factor should also impact systemic metabolism.
In this study, we identify six-transmembrane protein of prostate 2 (STAMP2) as a factor meeting these criteria. (強調のため一部太字 引用元:Cell 129(3):537-548 イントロダクション)

(5)複数の仮説の検討

ある現象を説明するために(相対立する)複数の仮説を提示し、各々から予言される内容と実際の実験結果との整合性を検証することによりどちらの仮説が正しいかを示すという組み立て方も論文に強い説得力を与えます。

At present, two theories attempt to link airway epithelial ion transport to lung defense and predict how mutations in CFTR adversely affect these relationships. One theory, the “hypotonic (low salt) ASL/defensin” hypothesis, postulates that normal airway epithelia are covered by an ASL with a [NaCl] sufficiently low (≤ 50 mM NaCl) to activate defensins and create an antimicrobial “shield” on airway surfaces (31, 38 and 10). Generation of a low [NaCl], hypotonic ASL reflects selective transepithelial absorption of salt but not water from ASL, presumably a consequence of putative airway epithelial water impermeability or surface forces (31, 44 and 46). Defensin inactivation by iso- or hypertonic ASL (i.e., [NaCl] > 100 mM) in CF is postulated to reflect the Cl impermeability of CF epithelial cells (38 and 10). The second theory, the “isotonic volume transport/mucus clearance hypothesis,” predicts that airway epithelia regulate the volume (height) of ASL by isotonic ion and water transport to optimize mucus clearance (Boucher 1994a). In CF, the rate of isotonic ion and water (volume) transport is abnormally high, which is predicted to reduce ASL volume, concentrate mucus, and lead to abnormal mucus transport and retention of tenacious mucus masses (plaques) in airways that serve as the nidus of infection (14 and 5).
… By measuring ASL ion composition, we tested key predictions of the hypotonic (low salt) ASL/defensin hypothesis: (1) that normal airway epithelia generate and maintain hypotonic (or low salt) solutions on airway surfaces, and (2) that CF airway surface liquid is isotonic (Joris et al. 1993) or hypertonic (with excess salt) (Gilljam et al. 1989). A second series of experiments tested key aspects of the isotonic hypothesis: (1) that normal airway epithelia are isotonic volume-absorbing epithelia that produce an isotonic ASL; (2) that CF airway epithelia absorb volume isotonically at abnormally high rates; and (3) that mucus transport is deranged by depletion of the ASL through excessive isotonic volume absorption. (強調のため一部太字 引用元:Cell 95(7):1005-1015のイントロダクションの一部を抜粋)

Good science would pit theory A against theories B, C, D and E with an experiment where each theory gave different predictions. (引用元:Nakagawa and Cuthill. Effect size, confidence interval and statistical significance: a practical guide for biologists. Biol. Rev. (2007), 82, pp. 591–605. doi:10.1111/j.1469-185X.2007.00027.x

いずれにせよ、仮説の提示→検証結果の報告という流れにするのが典型的な論文の書き方です。しかし、実験科学ではそもそもうまくいくはずの実験が最初のステップで躓いたり、予想に反したことが結果が得られることも多いので、実験データが何も得られていない段階で仮説を立てることに抵抗感がある人もいるかもしれません。その点に関しては、Whitesides博士のアドバイスが参考になります。

当初は仮説Aを検証すべく始めた研究だが、実際のデータを眺めてみると、仮説Bのほうがよりよく説明できるようだ――仮にこうなってしまっても、心配はい らない。すべての事項を書き出し、仮説・目的・データの最適たるコンビネーションを選びとればよい。完成した論文上での研究目的と、仕事に取り掛かる理由 付けとしての研究目的は、往々にして異なるものだ。良質な科学といえども、大抵は日和見主義的・修正主義的なものだ。(Whitesides’ Group: Writing a paper 化学者のつぶやき Chemi-station)

このアドバイスは、仮説なしに始めた研究だが実際のデータが出たあとで仮説を考え始める人をも勇気付けます。

参考

  1. 記載型と仮説駆動型の研究(長束・鈴木研究室ブログ2017年02月08日):”現代生物学では仮説駆動(Hypothesis driven)型研究が高く評価されます。”
  2. David Lindsay, Scientific Writing = Thinking in Words (PDFリンク
  3. Martyn Shuttleworth (Aug 1, 2009). How to Write a Hypothesis. Retrieved May 23, 2015 from Explorable.com: https://explorable.com/how-to-write-a-hypothesis
  4. 東京大学大学院新領域創成科学研究科情報生命科学専攻 コラム:”仮説の実験的検証にとどまらず、大量データから帰納的に真実を導く素養を持った研究者を養成する計画です。(森下真一) … これまでの仮説駆動型の研究スタイルでは、研究者がそれまで蓄えた知識と深い洞察のもとに仮説をたて、それを巧妙かつ小規模な実験によって検証するという ことで生命科学が進められてきました。一方、データ駆動型では、ハイスループットな測定装置を使って、まずは網羅的に大量データを取得し、それを貯めてお き、解くべき問題に応じて、その中から仮説候補を探し出すということで研究が進められます。(高木利久)”
  5. 東京大学 大学院理学系研究科 生物科学専攻 黒田研究室ウェブサイト:”…これらの手法は、これまでの知識に基づき仮説を立て検証するという仮説駆動型のアプローチです。これまでの生命科学では一般的な方法です。…一方、…これらのアプローチは、大規模データをあるアルゴリズ ムに則り計算機によりアンバイアスに解析するデータ駆動型のアプローチです。最近発展してきているビッグデータの解析と同じコンセプトを持つアプローチで す。”
  6. バイオサイエンスデータベースセンター(NBDC)の進捗と合同ポータルサイトの開設 (ライフサイエンス委員会報告 資料2 平成24年1月26日)(PDF):”仮説駆動型からデータ駆動型(データ中心科学)へ”
  7. Theory vs. Hypothesis vs. Law… Explained!
  8. 良い科学研究論文を能率よくラボから出すために~学生・ポスドクがボスとやるべき協同作業

 

更新 20170623 広中平祐の著書から引用

 

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アマミホシゾラフグ 2015年新種トップ10に

何年も前から奄美大島の海底でダイバーらによって目撃されていたミステリーサークル。誰が一体何の目的でこのような不思議な幾何学模様を海底の砂場に作っていたのか、その謎が解けたのが2014年でした。ミステリーサークルをつくっていたのは、新種のフグ。このフグが「新種トップ10」に選ばれました。

「新種トップ10」は、米ニューヨーク州立大の国際生物種探査研究所(State University of New York College of Environmental Science and Forestry (ESF))が毎年選び、分類学の父と呼ばれる植物学者リンネの誕生日5月23日に合わせて発表しているものです。

ESF: Top 10 New Species for 2015

Pufferfish: ‘Crop Circles’ under the Sea
Torquigener albomaculosus
Location: Japan

How it made the Top 10: Scientists recently solved a 20-year-old mystery under the sea and discovered a new fish. Intricate circles with geometric designs about six feet (2 meters) in diameter, found on the seafloor off the coast of Amami-Ōshima Island, were as weird and unexplained as crop circles. They turn out to be the work of a new species of pufferfish, Torquigener albomaculosus. Males construct these circles as spawning nests by swimming and wriggling in the seafloor sand. The nests, used only once, are made to attract females. The nests have double edges and radiating troughs in a spoke-like geometry. The design isn’t just for show. Scientists discovered the ridges and grooves of the circle serve to minimize ocean current at the center of the nest. This protects the eggs from the turbulent waters and possibly predators too. Yoji Okata, an underwater photographer, first observed the artistic behavior. Subsequently, a team of ichthyologists and a television crew carried out an expedition to record the phenomenon.

ESFによる説明を日本語に訳しておきます。

フグ:海底のミステリーサークル
Torquigener albomaculosus
場所:日本
トップ10に選ばれた理由:最近、科学者らは20年来の海底の謎を解き、新種の魚を発見しました。奄美大島の海岸沖の海底で発見された直径約2メートルの幾何学的なデザインをもった複雑なサークルは、ミステリーサークルと同様に奇妙で説明がつかないものでした。そのサークルは新種のフグTorquigener albomaculosusによって作られたものであることが明らかになりました。雄が、海底の砂場を体をよじらせて泳ぎながら、産卵用の巣としてこれらのサークルを構築します。その巣は、一度きりしか使われませんが、メスを誘い寄せるために作られるのです。その巣は、縁が2重になっていて、車輪のスポークのような幾何模様の放射状の溝があります。このデザインは単に見せるためだけではありません。科学者の発見によると、サークルにある畝と溝は巣の中心部分で潮の流れを最小にする効果があります。このことにより卵はかき乱すような水野流れや、おそらくは捕食者からも守られているのです。水中写真家の大方洋二氏が初めてこの芸術的な行動を観察しました。その後、魚類学者のチームとテレビクルーがこの現象を記録するための調査を行いました。

アマミホシゾラフグを紹介したBBCの番組。アマミホシゾラフグのオスがミステリーサークルを作るプロセスや、産卵行動が、美しい映像で紹介されています。

Japanese Pufferfish Masterpiece – BBC Life story David Attenborough (7分17秒)

Attracting attention is an essential part of winning a mate. The world’s oceans are filled with brilliant colours,…all designed to make their wearers conspicuous. Unfortunately this small, Japanese puffer fish is dull,…almost to the point of invisibility but to compensate,…he is probably nature’s greatest artist. To grab a female’s attention, he creates …something that almost defies belief. His only tools are his fins. In his head, a plan of mathematical perfection. He ploughs the sand, breaking it up into the finest of particles. These shells aren’t just rubbish to be removed,…he uses them to decorate the bridges of his construction. He can’t rest for more than a moment, but must work 24 hours…a day for a week, or the current will destroy his creation. A final tidy up and his masterpiece is complete. Nowhere else in nature does an animal construct something…as complex and perfect as this. If this doesn’t get him noticed, nothing will. Now it’s ready for inspection. A female, swollen with eggs. To make sure she gets the best view, he encourages her into the centre. Inspection over,…she withdraws to await the final stage of the process. By the next morning all the softest sand is now in the middle. The centre of the arena has been flattened. Right on cue here she is. This is what she wanted. It’s a perfect bed for her eggs. The male now grasps her cheek and then fertilises her miniscule eggs. And with a quick flick of his fins, he buries them. They carry on like this until she has finished laying. An hour of his rough affection leaves a love bite on her cheek. Finally, she leaves. He stays to fan the eggs until they hatch,…while his extraordinary work of art fades away around him. (転載元Transcript)

番組のシーンの概略。

0:23 色鮮やかな他の海の生き物たちに比べると、アマミホシゾラフグはとても地味で目立ちません。しかし、おそらく自然界でもっともすばらしい芸術家なのです。
0:38 オスはメスを惹きつけるために、ほとんど信じられないようなことをします。
0:54 彼が用いる道具は、ヒレだけ。
1:55 彼は休むことなく、1日24時間、1週間働かなければなりません。そうしないと、潮の流れが彼の創作物を壊してしまうことになるでしょう。
2:22 彼のマスターピースの完成
3:42 メスが登場し雄がつくった作品をチェック
4:16 メスは一度退場し、最終工程を待ちます。翌朝までには、一番やわらかい砂が真ん中に集められています。アリーナの真ん中の部分は平らにされています。
5:08 メスにとって完璧な産卵の場ができあがっています。オスはメスのほほを噛み、メスが産んだ卵に精子をかけ受精させます。
5:25 オスはひれをパタパタと動かして卵を埋めます。メスが卵を産み切るまでこれらの行動が繰り返されます。
6:38 メスは去り、オスは卵の世話をするために残ります。

参考

  1. ESF: Top 10 New Species for 2015 On the list: agile spider, North American dinosaur and fish that makes circles in the sand (ESF, State University of New York College of Environmental Science and Forestry 5/21/2015)
  2. Keiichi Matsuura. A new pufferfish of the genus Torquigener that builds “mystery circles” on sandy bottoms in the Ryukyu Islands, Japan (Actinopterygii: Tetraodontiformes: Tetraodontidae). Ichthyological Research January 2015, Volume 62, Issue 2, pp 207-212 Date: 06 Sep 2014
  3. 奄美大島の海底にミステリーサークルを作るフグ「アマミホシゾラフグ」が世界の新種トップ10(2015年)に選ばれました (PDFリンク)(国立科学博物館 平成27年5月21日):”独立行政法人国立科学博物館(館長:林良博)の名誉研究員、松浦啓一が2014年に新種として発表した「アマミホシゾラフグTorquigener albomaculosus Matsuura, 2014」が、国際生物種探査研究所(ニューヨーク州立大学)の世界の新種トップ10(2015年)に選ばれました。”
  4. あのフグがついに新種!(ブログ 水中写真家・大方洋二の魚って不思議! 2014/9/7):”奄美大島の海底で発見されたミステリーサークル。NHK「ダーウィンが来た!」で長期ロケを行い、放送後にインターネットで情報が流れたために海外のメディアから問い合わせが殺到。あの BBCも取材に訪れたほど。”
  5. SBI講座『ミステリーサークルの謎』:”2014年2月2日、瀬戸内町公民館で「大島海峡ミステリーサークルの謎」についての講演会が開催されました。講演会の様子やミステリーサークルが出現する奄美大島海峡について、マリンステイションのダイビングスタッフ伊藤がお伝えします。…講師の松浦啓一さんは水産学博士で魚類分類学のスペシャリスト。…このミステリーサークルは2007年に清水で伊藤が初めて発見して以来、正体は謎のまま。まさにミステリーだったのですが、2011年に水中写真家の大方洋二さんとともに、フグとサークルの関係を確認しました。なんと大方洋二さんは今から20年程前にも嘉鉄でサークルを見た事があったそうです。”
  6. アマミホシゾラフグ フグ科 学名 Torquigener albomaculosus 奄美大島・瀬戸内町の清水と嘉鉄海域で発見された海底ミステリーサークルの作者である。(せとうちなんでも探検隊 奄美大島の瀬戸内町文化遺産活用実行委員会のプロジェクト)
  7. See the top 10 new species of 2015 – in pictures (The Guardian 21 May 2015):”A cartwheeling spider and a dinosaur dubbed the ‘chicken from hell’ are among the 10 most amazing creatures chosen by scientists from over 18,000 species new to science in the last year. Find out more on the SUNY College of Environmental Science and Forestry website”
  8. アマミホシゾラフグ:巣作り名人、「新種トップ10」に (毎日新聞 2015年05月21日):”同研究所は生物多様性の保全などを目的に08年からトップ10を発表。今回は昨年新種とされた約1万8000種から選んだ。”
  9. ミステリーサークル描くフグ「世界の新種」に (読売新聞 YOMIURI ONLINE 2015年05月22日):”鹿児島・奄美大島で海底に美しい「ミステリーサークル」を描くフグが、国際的な研究組織が選ぶ今年の「世界の新種トップ10」に入ったと、国立科学博物館が21日発表した。…同館の松浦啓一・名誉研究員(66)らが新種と確認し、昨年、星をちりばめたような模様から「アマミホシゾラフグ」と命名した。…調査に参加した水中写真家の大方洋二さん(73)は、「何十年も潜って一番驚いた発見」と喜んでいる。”
  10. NHK ミラクル・スピーシーズ ダーウィンが来た!:”新種TOP10とは?アメリカのニューヨーク州立大学・国際生物種探査研究所は、毎年5月23日、分類学の父で植物学者のカール・リンネの誕生日にあわせて、前年度に発見された18000種にも及ぶ新種の中からTOP10を選出し、発表しています。”
  11. 海底のミステリーサークルができるまで。
  12. NHK総合「ダーウィンが来た!生きもの新伝説」 – 世紀の発見!海底のミステリーサークル – 放送日 2012年9月9日(日) 19:30~20:00 (gooテレビ番組):”シッポウフグの仲間がやって来た。フグは地面を掘ったり、海藻を抜きながらミステリーサークルをつくっていた。胸びれや尾びれなど、体全体を使って、発見から6日目にミステリーサークルができていた。さらにフグは、貝殻の欠片を集めて、丸くて真ん中に細かい砂があり、スジ模様や起伏などのある形を作っていた。”

Silvia博士 生活を犠牲にしない論文量産術

「できる研究者の論文生産術 どうすれば『たくさん』書けるのか」の著者ポール.J・シルヴィア氏が2012年4月27日に行った講演の動画があります。しかしこの講演ではとりとめもなく延々とフリートークが続くので、ポイントを掴むには彼の著書を読むほうが早いです。

たくさんの論文が書けるのは生まれつきの才能ではなくスキルです。だから、そのやり方を学ぶことができます。(前書きより)

この本には非常に実践的な教えが書かれています。原稿が書きかけのままで憂鬱な気分になっている教授から出てくる典型的な言い訳が、「書く時間が見つからない」というものです。しかし、講義の時間がみつからないと言い訳する教授はいません。予定された授業の時間がきたら、授業をするしかないからです。論文を書くのも全く同じで、何曜日の何時から何時までは論文を執筆する時間と決めて、その時間には他の予定は一切入れずに論文の執筆に専念するということを習慣化しなさいと説いています。科学者はプロのライターなのですから、講義の時間に必ず講義をするのと同様、書くと決めた時間に必ず書きなさいとシルヴィアさんは言います。

ちなみにポール・シルヴィアさんが自分で決めた執筆の時間帯は、平日の朝8時から10時までだそうです。朝起きたら、着替えもせずシャワーも浴びず、Eメールのチェックもせず、珈琲を淹れてすぐに机に向かうとのこと。

論文を書けない理由は実はまだまだあります。現実的なところでは、書く前にデータの解析をしなければいけないとか、論文を書き始める前に参考文献を読まなければいけない、などなど。しかし、大丈夫です。シルヴィアさんは、これらもみな「ライティング」とみなします。論文の書き方の本を読むことまでも「ライティング」に含めます。これでもう書かない理由はほとんど潰されてしまいました。

論文を書く環境が悪い、椅子の座り心地が良くない、机が悪いと言って悪あがきする人がいるかもしれません。そういう人達のために、シルヴィアさんはこの本の執筆に使った机と椅子の写真を見せています。インターネットがつながらない部屋、引き出しもない机、質素な椅子。ウインドウズOSすら載っていないPC,DOS上で動くワープロソフト。書くためにはそれで十分だったとシルヴィアさんは言います。

それでもまだ、書く気が起こらない、インスピレーションが湧いてこない、どうしても書けない(Writer’s block)という人がいます。そんな人たちへの最も効果的な処方箋がまさに「決めた時間に書くことの習慣化」なのです。

論文をたくさん書かなければいけない研究者のためのライフハックツールとでも言うべき本。

How to Write a Lot – Paul J Sylvia (http://exordio.qfb.umich.mx/archivos%20pdf%20de%20trabajo%20umsnh/Leer%20escribir%20PDF%202014/Escritura%202014/How%20to%20Write%20a%20Lot%20-%20Paul%20J%20Sylvia.pdf)(73ページPDFへのリンク)

Paul Silvia, PhD – How to Publish a Lot and Still Have a Life Pt 1 (1時間1分31秒)

Paul Silvia, PhD – How to Publish a Lot and Still Have a Life Pt 2 (44分46秒)

Paul Silvia, PhD – How to Publish a Lot and Still Have a Life Pt 3 (31分59秒)

Paul Silvia, PhD – How to Publish a Lot and Still Have a Life Pt 4 (1時間18分4秒)

 

ポール.J・シルヴィア氏の著書

 

 

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米 海兵隊の輸送機MV22オスプレイが着陸に失敗し墜落

ハワイニュースナウで報道された墜落の瞬間を捉えた映像。
Hawaii military aircraft Osprey crash / Hawaii News Now

オスプレイはヘリコプターのように垂直離着陸ができ、しかも飛行機のように速く飛べる、両者のいいとこどりをしたような画期的な航空機です。

オスプレイ開発が始まったきっかけ、開発における相次ぐ事故、初の戦闘までを描いたドキュメンタリー番組「FLIGHT OF THE V-22 OSPREY (THE MILITARY CHANNEL)」。
V22 Osprey Documentary (44:53)

参考

  1. 1 killed, 21 injured in Osprey crash at Bellows Air Force Station (HAWAII NEWS NOW, May 18, 2015):”According to the military, an MV-22 Osprey from the 15th Marine Expeditionary Unit experienced a “hard landing” while conducting training at the Marine Corps Training Area at Bellows.The aircraft had 22 people on board when it went down around 11:40 a.m. According to the military, one Marine died and 21 were transported to local hospitals for assessment and treatment. On Monday morning, one Marine remained in critical condition, and three others were still hospitalized, but stable, officials said. The remaining Marines were treated and released.”
  2. オスプレイ、ハワイで着陸失敗 1人死亡21人搬送(朝日新聞デジタル 2015年5月18日):”… 海兵隊仕様のMV22は、すでに米軍普天間飛行場に24機配備されており、陸上自衛隊も同機種のオスプレイを2018年度までに米側から計17機購入することを決め、佐賀空港への配備を検討している。このほか、米国防総省は今月11日、米空軍仕様で特殊部隊などの輸送に使用するオスプレイCV22を計10機、横田基地(東京都福生市など)に配備すると発表している。…”
  3. Accidents and incidents involving the V-22 Osprey (Wikipedia)

小保方晴子氏の「STAP細胞」にES細胞が混入していた件で、何者かがES細胞を若山研から盗んだとする告発状を兵庫県警が受理 捜査へ

あのSTAP現象とは一体何だったのでしょうか?科学的には、STAP細胞の正体はES細胞だったという結論に落ち着きました。

しかし、STAP細胞事件は全く終わっていません。ES細胞を若山研究室から持ち出して小保方晴子氏の冷凍庫に保管し、小保方氏が培養する「STAP幹細胞」のシャーレに混入させた人間は一体誰か?という一番肝心な疑問が残っています。

研究室の出入りは厳重には管理されておらず誰でも出入り可能だったとはいえ、実験内容や実験スケジュールを熟知している人間でないかぎり培養中の細胞への混入を行うことなどはまず不可能でしょう。

日本のサイエンスの信頼回復のためには犯人の特定が必要だとして、容疑者不詳の窃盗容疑の告発状が兵庫県警に提出され、受理されました。

複数の報道内容を合わせると、今回の告発状を提出していたのは元・理化学研究所研究員の石川智久氏で、告発に至った動機を以下のように語っています。なお、今回2015年5月14日付けで受理された告発状の内容は「容疑者不詳の窃盗」ですが、2015年1月の段階では、当時の報道によれば、小保方晴子氏を告発の対象にした文面になっていました。

以下の動画はおそらく2015年1月の頃の内容です。


2:33 (なぜ告発を?)

まじめに研究している研究者は今回のことは許しがたいと思っていると思うので。

かといって、研究者が犯人探しができるかというとできないし、それと、学術界が、これまで調査委員会がいろいろ調べた結果、いいところまでいったけど最終的に犯人の特定はできなかったということで。で犯人を特定するためには警察の介入が必要であろうということが考えられるので。やはり白黒明確にするしかないだろうと。じゃあ、誰がやるの?と。私しかないでしょう。

それはどういうことかというと、大学教授といえども被雇用者です。国家公務員、準国家公務員ですよね。そうすると、学長に対して、私が告発してもいいでしょうかと言ったら大学のほうから絶対にストップが来るでしょう。あるいは理化学研究所の中の研究員がいくらやろうと思ったって理化学研究所ははそれを承諾しないでしょう。そうなってくると誰がやるのか?一般市民がやっていいの?と。一般市民は知識がないのでそれはできない。私はたまたま去年の3月31日まで理化学研究所の研究をしてましたから内部の状態もよく知ってますし。

日本の社会から、正義が今失われていることを危惧していまして。やはり今回の件に関しては社会正義というものを守らなくちゃいけない。それと同時に日本の学術的な、研究の信用をもう一度復活させなくてはいけない。もしここで犯人を特定しなかったならば、ここ20年ぐらいは日本の学術界はは国際的な信用を失うことになるだろうと。…ベル研究所のヘンドリック・シェーンの場合にはきちんと裁判にも持っていったというのもあります。今回もきちんとそれをやらないといけないだろう。

この動画も2015年1月の時点での内容です。

小保方晴子氏への理研OBの刑事告発に対し、小保方氏の代理人・三木弁護士が反論!

参考

  1. STAP問題 告発状を警察が受理 (毎日放送 MBS NEWS):”告発状は今年1月に理研の元研究員の石川智久氏が提出していました。”
  2. STAP不正、窃盗容疑の告発受理…容疑者不詳 (読売新聞 YOMIURI ONLINE 2015年05月15日):”告発状などでは、理研の旧「発生・再生科学総合研究センター」(神戸市中央区)で2013年3月までの間に、小保方晴子・元研究員(31)が当時所属していた研究室から、何者かがES細胞入りのチューブ80本を盗んだとしている。”
  3. <STAP問題>ES細胞の窃盗容疑で告発受理 兵庫県警 (ヤフーニュース/毎日新聞 5月15日):”STAP細胞論文問題で、論文の共著者である若山照彦・山梨大教授(当時、理化学研究所チームリーダー)の研究室からES細胞(胚性幹細胞)が盗まれたとして、理研OBの男性が容疑者不詳で窃盗容疑の告発状を提出し、兵庫県警が受理したことが15日、明らかになった。…県警によると、受理は14日付。横浜市の理研研究所で上級研究員だった男性(60)が今年1月に告発状を提出していた。”
  4. ES細胞持ち出し混入の疑い 告発状受理 (NHKWEB 2015年5月15日):”STAP細胞の問題では、理化学研究所が、実際には別の万能細胞のES細胞だったと結論づけていますが、これを受けて研究者から警察に提出されていた告発状が受理されていたことが分かりました。”
  5. ES細胞を盗んだ?「刑事告発」された小保方さん――警察はどう動くのか(ヤフーニュース/弁護士ドットコム 2月2日):”STAP論文の筆頭著者である小保方晴子・元理化学研究所研究員が、既存の万能細胞であるES細胞を盗んで「STAP細胞」と偽った疑いがあるとして、刑事告発された。元理研上級研究員の石川智久氏(60)が1月下旬、兵庫県警に告発状を提出したのだ。…今回の告発状の提出を受けて、小保方氏の代理人をつとめる三木秀夫弁護士は「小保方氏がES細胞を窃盗したという事実はなく、その動機もない。告発状の内容は事実に反している」とコメントしている。”
  6. 窃盗で小保方氏を告発した石川博士「名誉毀損?受けて立つ」(東スポWeb 2015年01月28日):”…STAP細胞論文の不正問題に関連して、理化学研究所の元研究者で理学博士の石川智久氏(60)が26日、同論文の主著者で元理研研究員の小保方晴子氏(31)が研究室から胚性幹細胞(ES細胞)を盗んだとして、窃盗容疑での告発状を兵庫県警に提出した。県警は受理するか否かを慎重に検討する。…石川氏は言う。「小保方氏は当時、ハーバード大学のバカンティ教授の博士研究員として主な籍を置き、理研へは客員として出向している立場だった。A社から出向している人物がB社の物を盗んだとなれば、B社の知的財産を盗んだということになります。小保方氏もこれと同じ」…現段階で石川氏の告発状は兵庫県警に受理されていない。「(受理されるまで)これから半年、1年かかるか分からない。告発状を警察が用意したフォーマットに書き直したり、分かりにくい部分について警察から説明の要請があると思うので、真摯に応えていく。私のこの告発の究極のゴールは立件まで持っていくこと。先々は詐欺罪、横領罪まで進むべき。国民の税金が無駄に使われた実験なので、厳しく追及していかなくてはならない」”
  7. 窃盗容疑で小保方晴子氏を刑事告発へ(東スポWeb 2015年01月24日):”告発状に添付される証拠は、小保方研究室にあった「2つの箱」に入っていた「チューブ」の写真。1つ目の箱のチューブにはES細胞が入っていた。2つ目の箱のチューブには「STAP幹細胞」と書かれているものがあったという。だが、その中身はES細胞など別の細胞が入っていたという。”
  8. 小保方氏保管の「STAP細胞」はES細胞 理研外部調査委員会報告書と記者会見の模様【FULL動画】

辛い状況の仲間を助ける、ドブネズミの共感力

大変な思いをしている人に手を差し伸べるのは、人間や犬などの高等な動物だけが持つ優しさかというとそうでもないようです。関西学院大学の研究グループが、ラット(ドブネズミ)にも仲間を助ける感覚が存在していることを2015年5月12日にAnimal Cognition誌で報告しました。

下の写真に示すように、2つの区画のうち水を張ったほうに一匹のラットを入れ、他方にも別のラットを入れます。真ん中の透明な仕切りにはドアがついていて、水がないほうにいるラットはそのドアを開けて、水中にいるラットを助け出すことができるつくりになっています。このような装置で、ラットが水中の仲間を助けるため仕切りのドアを開けるかどうかを調べる実験を行いました。

RatRescueAnnotated
(説明の語句を除く写真部分は関西学院大学報道資料より転載)

この実験の結果、ラットが、水中にいる仲間のラットを助ける行動をとることが明らかになりました。

面白いことに、自分自身にこの辛い”水責め”経験があるラットのほうが、仲間を助けるまでの時間が早いということが示されました。下記の図で、横軸はセッション回数、縦軸はドアを開けるのにかかった時間。自らも”水責め”された経験があるラットは、2、3回のセッション後には仲間を速やかに助けることを学習しています。

RatRescue2
(関西学院大学報道資料より転載)

自分自身が過去に苦しんだことがある人のほうが、他人の苦しみを察する能力が高いということに通じるのでしょうか。

参考

  1. Nobuya Sato, Ling Tan, Kazushi Tate, Maya Okada. Rats demonstrate helping behavior toward a soaked conspecific. Animal Cognition, 12 May 2015 ; DOI: 10.1007/s10071-015-0872-2
  2. 溺れる友に手を差し伸べるラット  —ラットにおける援助行動— (関西学院大学 報道資料2015年5月11日)(PDFファイル3ページ):”関西学院大学文学部・佐藤暢哉教授およびその研究グループは、齧歯(げっし)類であるラットが、窮地に陥っている仲間のラットに対して共感し、その苦境から助け出すことを示しました。”
  3. Rats will try to save other rats from drowning (ScienceDaily May 12, 2015):”Rats have more heart than you might think.”
  4. ラットに共感能力:「助けなきゃ」水責めに仲間が反応 (毎日新聞 2015年05月12日):”ラットは、水に入れられた仲間がいると苦境を察して助けようとすると、関西学院大(兵庫県西宮市)の研究グループが実験で示し、独の比較認知科学誌(電子版)で12日発表した。”

太田朋子博士がクラフォード賞受賞講演

2015年のクラフォード賞は国立遺伝学研究所の太田朋子名誉教授(81歳)と米ハーバード大学のリチャード・C・レウォンティン名誉教授(85歳)に対して贈られました。

2015年月5日-7日にスウェーデンのストックホルムとルンドで開催された「クラフォード・デイズ2015」では、その授賞式と受賞記念講演が取り行われました。

クラフォード賞 (Crafoordpriset) は1980年に設立され、天文学、数学、地球科学、生物科学(環境、進化)の分野、また、賞の創設者クラフォードが患っていた関節炎の研究で優れた業績を上げた研究者をスウェーデン王立科学アカデミーが顕彰するものですが、日本人としては2009年(関節炎)の岸本忠三博士、平野俊夫博士に続いて3人目の受賞となります。

2015年5月5日に太田朋子博士がストックホルムのスウェーデン王立科学アカデミーで行った講演の動画。
Genotype to phenotype link and nearneutrality in evolution

0:07- Staffan Normark氏(Permanent Secretary of the Royal Swedish Academy of Sciences)の開催の挨拶
4:26- Hans Ellegren氏(the Crafoord Prize Committee)による紹介
12:45- 太田朋子博士の講演

The Crafoord Prize in Biosciences 2015(http://www.kva.se/sv/Priser/Crafoordpriset/

参考

  1. TOMOKO OHTA. Slightly Deleterious Mutant Substitutions in Evolution. Nature 246, 96-98 (9 November 1973)
  2. 太田朋子「分子進化のほぼ中立説」(講談社ブルーバックス2009年05月20日):”1968年、国立遺伝学研究所の木村資生博士によって提唱された「中立説」は、自然選択説を信奉していた進化の研究者たちにたいへん大きな衝撃を与えまし た。その共同研究者で、中立説の理論的発展に貢献した著者が、実際の生物進化に即してさらに理論的に推し進めた仮説が、現在は国際的にも高く評価されてい る「ほぼ中立説」です。”
  3. ほぼ中立説(遺伝学電子博物館):”一方筆者は1970年始めから、有害と中立の中間クラスのアミノ酸置換が相当あるのではないかと考え討してきました。これをほぼ中立説と呼びます。図に考え方を示します。さてほぼ中立なクラスが沢山あるとしますと中立説とどのように違ってくるのでしょうか。完全中立な突然変異が今までの遺伝子を置き換えていく速度は突然変異率に等しく他の要因とは無関係であることがわかっています。しかしほぼ中立なクラスでは、集団の大きさが重要な要因としてかかわってきます。一般に有利な突然変異はまれ で多くは有害ですが、集団が大きいとそれだけ淘汰が有効に働いて変異は集団から除かれることが多いのです。集団が小さいと、中立なものの割合がふえて、置換速度が高まるわけです。したがってほぼ中立説では、進化速度と集団の大きさとの間には負の相関が期待されます。そして偶然と自然淘汰との相互作用というとても複雑な問題をはらんでいます。 ”
  4. 分子進化のほぼ中立説(または、弱有害突然変異体仮説)(ウィキペディア):”分子進化の中立説から発展し、分子レベルでの弱有害突然変異(あるいは、弱有利突然変異)が生物進化にに及ぼす効果を理論的に説明する仮説である。”
  5. Crafoord Days 2015 (The Crafoord Prize公式ウェブサイト):シンポジウムなどのレクチャー動画が視聴できます。
  6. Crafoord Days 2015, 5–7 May in Stockholm and Lund, Sweden(プログラム冊子PDF 20ページ)
  7. The Crafoord Prize in Biosciences 2015 (The Crafoord Prize プレスリリース 2015-01-15):”The Royal Swedish Academy of Sciences has decided to award the 2015 Crafoord Prize in Biosciences to Richard Lewontin, Harvard University, Cambridge, MA, USA, and Tomoko Ohta, National Institute of Genetics, Mishima, Japan “for their pioneering analyses and fundamental contributions to the understanding of genetic polymorphism”.”
  8. Tomoko Ohta en av årets Crafoordvinnare (sverigesradio.se)
  9. 国立遺伝学研究所名誉教授太田朋子先生のクラフォード賞受賞が決定 (国立遺伝学研究所 Close-up!第26回 インタビュー)
  10. Tomoko Ohta Current Biology Volume 22, Issue 16, 21 August 2012, Pages R618–R619
    (カレントバイオロジー誌に掲載されたインタビュー記事)What turned you on to biology and to your particular field of study?
  11. TOMOKO OHTA (Profiles, Perspectives on molecular evolution, caltech.edu)
  12. 太田朋子(ウィキペディア):”日本の遺伝学者。木村資生による、遺伝子の「分子進化の中立説」(Kimura 1968,1969)発表後、木村資生と共同で中立進化説の基礎固めを行った。”
  13. クラフォード賞(ウィキペディア):”クラフォード賞 (Crafoordpriset) は、ホルガー・クラフォード(人工腎臓の発明者)及び、彼の妻アンナ=グレタ・クラフォードによって1980年に設立された賞である。賞はスウェーデン王立科学アカデミーが顕彰に関わっており、ノーベル賞が扱わない科学領域を補完する目的がある。”
  14. Lewontin & Ohta win the Crafoord Prize (scienceblogs.com January 15, 2015)
  15. 太田朋子・遺伝研名誉教授らにクラフォード賞(ハザードラボ 2015-01-16):”スウェーデン王立科学アカデミーは15日、生物の進化の仕組みについて画期的な研究成果を上げた、国立遺伝学研究所の太田朋子名誉教授(81歳)と米ハーバード大学のリチャード・C・レウォンティン名誉教授(85歳)の2人にクラフォード賞を贈ると発表した。”
  16. Professor Richard Lewontin awarded the 2015 Crafoord Prize in Biosciences (Harvard gazette January 15, 2015):”Until the 1960s, biologists believed that most individuals in a population were fairly similar, genetically speaking. But Richard Lewontin made the revolutionary discovery that genetic variation between individuals in a population was actually very different, and that the variation was many times greater thane expected. The results were published in Genetics in 1966 and aroused a great deal of attention.”
  17. Richard Lewontin (Wikipedia)
  18. The Concept of Race with Richard Lewontin (YOUTUBE 1:15:00)
  19. Gene, Organism and Environment with Richard Lewontin (YOUTUBE 58:14)

2015年(平成27年)6月から「機能性表示食品制度」を利用した商品が続々登場

機能性表示食品とは?

機能性表示食品は、事業者の責任で、科学的根拠を基に商品パッケージに機能性を表示するものとして、消費者庁に届け出られた食品。

なぜ今、機能性表示食品制度?

機能性を表示することができる食品は、これまで国が個別に許可した特定保健用食品(トクホ)と国の規格基準に適合した栄養機能食品に限られていました。そこで、機能性を分かりやすく表示した商品の選択肢を増やし、消費者がそうした商品の正しい情報を得て選択できるよう、平成27年4月に、新しく「機能性表示食品」制度がはじまりました。

機能性表示食品と特定保健用食品(トクホ)あるいは栄養機能食品との違いは?

特定保健用食品(トクホ)は、健康の維持増進に役立つことが科学的根拠に基づいて認められ、「コレステロールの吸収を抑える」などの表示が許可されている食品です。表示されている効果や安全性については国が審査を行い、食品ごとに消費者庁長官が許可しています。

それに対して、機能性表示食品は事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品です。販売前に安全性及び機能性の根拠に関する情報などが消費者庁長官へ届け出られたものです。特定保健用食品とは異なり、消費者庁長官の個別の許可を受けたものではありません。

ちなみに、栄養機能食品というのは、一日に必要な栄養成分(ビタミン、ミネラルなど)が不足しがちな場合、その補給・補完のために利用できる食品です。すでに科学的根拠が確認された栄養成分を一定の基準量含む食品であれば、特に届出などをしなくても、国が定めた表現によって機能性を表示することができます。

機能性表示食品制度において、食品の機能性はどうやって科学的に評価されるの?

科学的な根拠を説明する手法は以下の2つのうちのいづれかを用いることができます
●一つは、最終製品を用いた「臨床試験」です。「臨床試験」は、人を対象として、ある成分又は食品
の摂取が健康状態などに及ぼす影響について評価する介入研究。
●もう一つは、研究レビュー(一定のルールに基づき文献を検索し、総合的に評価(システマ
ティックレビュー))。

研究レビューの場合は具体的にどのような手順によるの?

研究レビューの実施手順

①最終製品又は最終製品に含まれる機能性関与成分について、「表示したい機能性」に関する臨床試験や観察研究などの研究論文が登録されているデータベースを用いて、研究レビューの実施者があらかじめ設定した方法で論文を抽出。機能性に関して肯定的な論文だけを意図的に抽出することは認められない。

②抽出されたすべての論文について、最終製品の特性及び対象者、表示しようとする機能性との適合度などの観点から論文を絞り込み、これらの論文で最終製品又は機能性関与成分に「機能性がある」と認められているのか、もしくは認められていないのかを分類。

③肯定的・否定的・不明瞭な結果をすべてあわせて、最終製品又は機能性関与成分に「機能性がある」と認められるかどうかについて総合的に判断。

④研究レビューについては他の人にも再現できるよう、使用したデータベース、論文を検索するときに用いたキーワード、論文の採否条件、不採用とした論文名など、すべてのプロセスについて詳細に届出を行う必要がある。

研究レビューの手順を簡単にまとめると

①事前に決定した手順に従い、論文を選別
②各論文の質を踏まえ、総合的観点から機能性を科学的に評価
③評価のプロセスと結果を公開

研究レビューにおける主な注意事項

①査読付きの研究論文で、機能性が確認されていること(学会発表の内容だけでは不可/有識者の講演や談話などは不可/新聞、雑誌などの記事、学説、起源や由来などは不可)
②人を対象とした臨床試験や観察研究で、機能性が確認されていること(動物や細胞レベルの実験では不可/サプリメント形状の食品を販売しようとする場合は観察研究は不可)
③販売対象とする人と年齢、性別、人種などの観点から著しく異なる属性の人だけを対象としていないこと
④機能性関与成分に関する研究レビューを行う場合、当該研究レビューに係る成分と最終製品に含まれる成分の同等性について考察されていること
⑤研究レビューは、信頼性を確保するため、専門知識を持った複数の人で実施すること
⑥著作権法に抵触していないこと

消費庁 機能性表示食品に関する情報 届出詳細内容1~25

ナイスリムエッセンス ラクトフェリン ライオン株式会社 ラクトフェリン 本品にはラクトフェリンが含まれるので、内臓脂肪を減らすのを助け、高めのBMIの改善に役立ちます。
食事の生茶 キリンビバレッジ株式会社 難消化性デキストリン 本品には難消化性デキストリン(食物繊維)が含まれます。
難消化性デキストリンは、食事から摂取した脂肪の吸収を抑えて排出を増加させるとともに、糖の吸収をおだやかにするため、食後の血中中性脂肪や血糖値の上昇をおだやかにすることが報告されています。さらに、おなかの調子を整えることも報告されています。
本品は、脂肪の多い食事を摂りがちな方、食後の血糖値が気になる方、おなかの調子をすっきり整えたい方に適した飲料です。
パーフェクトフリー 麒麟麦酒株式会社 難消化性デキストリン 本品には難消化性デキストリン(食物繊維)が含まれます。
難消化性デキストリンは、食事から摂取した脂肪の吸収を抑えて排出を増加させるとともに、糖の吸収をおだやかにするため、食後の血中中性脂肪や血糖値の上昇をおだやかにすることが報告されています。
本品は、脂肪の多い食事を摂りがちな方や食後の血糖値が気になる方に適しています。
ヒアロモイスチャー240 キユーピー株式会社 ヒアルロン酸Na 本品にはヒアルロン酸Naが含まれます。ヒアルロン酸Naは肌の水分保持に役立ち、乾燥を緩和する機能があることが報告されています。
ディアナチュラゴールド ヒアルロン酸 アサヒフードアンドヘルスケア株式会社 ヒアルロン酸Na 本品にはヒアルロン酸Naが含まれます。ヒアルロン酸Naは肌の潤いに役立つことが報告されています。
健脂サポート 株式会社ファンケル モノグルコシルヘスペリジン 本品には、モノグルコシルヘスペリジンが含まれます。
中性脂肪を減らす作用のあるモノグルコシルヘスペリジンは、中性脂肪が高めの方の健康に役立つことが報告されています。
えんきん 株式会社ファンケル ルテイン
アスタキサンチン
シアニジン-3-グルコシド
DHA
本品にはルテイン・アスタキサンチン・シアニジン-3-グルコシド・DHAが含まれるので、手元のピント調節機能を助けると共に、目の使用による肩・首筋への負担を和らげます。
蹴脂粒 株式会社リコム キトグルカン(エノキタケ抽出物):エノキタケ由来遊離脂肪酸混合物 本品は、キトグルカン(エノキタケ抽出物)を配合しており、体脂肪(内臓脂肪)を減少させる働きがあります。体脂肪が気になる方、肥満気味の方に適しています。
メディスリム(12粒) 株式会社東洋新薬 葛の花由来イソフラボン 本品には、葛の花由来イソフラボンが含まれるので、内臓脂肪(おなかの脂肪)を減らすのを助ける機能があります。
メディスキン 株式会社東洋新薬 米由来グルコシルセラミド 本品には、米由来グルコシルセラミドが含まれます。米由来グルコシルセラミドには、肌の保湿力(バリア機能)を高める機能があるため、肌の調子を整える機能があることが報告されています。
「アミール」WATER(        ウォーター) カルピス株式会社 「ラクトトリペプチド」(VPP、IPP) 本品には「ラクトトリペプチド」(VPP、IPP)が含まれます。「ラクトトリペプチド」(VPP、IPP)には血圧が高めの方に適した機能があることが報告されています。
ビフィーナR(レギュラー) 森下仁丹株式会社 ビフィズス菌(ロンガム種)
同菌(ビフィズス菌(ロンガム種))の別呼称として
ビフィズス菌(Bifidobacterium longum)
又はビフィズス菌(ビフィドバクテリウム ロンガム)
又はビフィズス菌(B.longum)
又はBifidobacterium longum
又はB.longum
本品には生きたビフィズス菌(ロンガム種)が含まれます。ビフィズス菌(ロンガム種)には腸内フローラを良好にし、便通を改善する機能があることが報告されています。
ビフィーナEX(エクセレント) 森下仁丹株式会社 ビフィズス菌(ロンガム種)
同菌(ビフィズス菌(ロンガム種))の別呼称として
ビフィズス菌(Bifidobacterium longum)
又はビフィズス菌(ビフィドバクテリウム ロンガム)
又はビフィズス菌(B.longum)
又はBifidobacterium longum
又はB.longum
本品には生きたビフィズス菌(ロンガム種)が含まれます。ビフィズス菌(ロンガム種)には腸内フローラを良好にし、便通を改善する機能があることが報告されています。
ビフィーナS(スーパー) 森下仁丹株式会社 ビフィズス菌(ロンガム種)
同菌(ビフィズス菌(ロンガム種))の別呼称として
ビフィズス菌(Bifidobacterium longum)
又はビフィズス菌(ビフィドバクテリウム ロンガム)
又はビフィズス菌(B.longum)
又はBifidobacterium longum
又はB.longum
本品には生きたビフィズス菌(ロンガム種)が含まれます。ビフィズス菌(ロンガム種)には腸内フローラを良好にし、便通を改善する機能があることが報告されています。
ビフィーナS(スーパー)Pearl(パール) 森下仁丹株式会社 ビフィズス菌(ロンガム種)
同菌(ビフィズス菌(ロンガム種))の別呼称として
ビフィズス菌(Bifidobacterium longum)
又はビフィズス菌(ビフィドバクテリウム ロンガム)
又はビフィズス菌(B.longum)
又はBifidobacterium longum
又はB.longum
本品には生きたビフィズス菌(ロンガム種)が含まれます。ビフィズス菌(ロンガム種)には腸内フローラを良好にし、便通を改善する機能があることが報告されています。
ローズヒップ 森下仁丹株式会社 ローズヒップ由来ティリロサイド 本品にはローズヒップ由来ティリロサイドが含まれるので、体脂肪を減らす機能があります。
ヒアルロン酸 森下仁丹株式会社 ヒアルロン酸ナトリウム
又はヒアルロン酸Na
本品にはヒアルロン酸ナトリウム(ヒアルロン酸Na)が含まれます。ヒアルロン酸ナトリウムには皮膚の水分量を高める機能があることが報告されています。
ビルベリー 森下仁丹株式会社 ビルベリー由来アントシアニン 本品にはビルベリー由来アントシアニンが含まれます。ビルベリー由来アントシアニンには目のピント調節機能をサポートし、焦点を合わせやすくすることで、目の調子を整える機能があることが報告されています。
ディアナチュラゴールド 甘草グラボノイド アサヒフードアンドヘルスケア株式会社 甘草由来グラブリジン 本品には、甘草由来グラブリジンが含まれます。甘草由来グラブリジンは体脂肪の増加を抑えることが報告されており、体脂肪が気になる方及び肥満気味の方に適しています。
ロートV5粒 ロート製薬株式会社 ルテインとゼアキサンチン 本品にはルテイン・ゼアキサンチンが含まれます。ルテイン・ゼアキサンチンには見る力の維持をサポートすることが報告されています。
ヒアルロン酸コラーゲン キューサイ株式会社 コラーゲンペプチド 本品にはコラーゲンペプチドが含まれるので、膝関節の曲げ伸ばしを助ける機能があります。膝関節が気になる方に適した食品です。

(引用元:消費庁 機能性表示食品に関する情報 届出詳細内容1~25

参考

  1. 「機能性表示食品」って何?(PDF)(消費者庁 平成27年4月)
  2. 「機能性表示食品」制度が はじまります! 食品関連事業者の方へ 商品の開発・販売を考える前に (PDF)(消費者庁 平成27年4月)
  3. 機能性表示食品に関する情報 届出詳細内容1~25 (消費者庁食品表示)
  4. 食品の新たな機能性表示制度の概要 (消費者庁食品表示企画課 資料2-3 平成26年11月)
  5. 消費者庁の機能性表示食品、サントリー、ファンケル、はくばく、JAかごしま茶業など届け出 (日経バイオテク 2015年4月3日):”消費者庁が2015年4月1日に届け出の受理を開始した機能性表示食品について、届け出を行ったことを発表した企業が増えている。受理された日の60日後から、新しい機能性表示の食品を販売できるようになる。”(記事閲覧には会員登録が必要)
  6. 森下仁丹、機能性表示食品のサプリメントブランド「ヘルスエイド」を新たに立ち上げ 4種類7商品の機能性表示食品を6月19日から、通販などで販売 (netshop.impress.co.jp 5月11日):”森下仁丹は、食品の機能性が表示できるようになる「機能性表示食品制度」に基づいた新たなサプリメントのブランドを立ち上げる。…新サプリメントブランド「ヘルスエイド」はまず、「ビフィーナ」「ローズヒップ」「ビルベリー」「ヒアルロン酸」の4種類(7商品)の機能性表示食品を用意。”
  7. トクホで疑問成分、機能性食品では受理 「安全審査」を求める声も(産経ニュース 2015.5.8):”指摘のあった成分を含む商品は、健康食品メーカー、リコム(東京都豊島区)が届け出たサプリメント「蹴脂(しゅうし)粒」。…これに対し同社は「成分の作用は医薬品よりはるかに弱く、1日摂取目安量は生のエノキタケに換算すると約4グラム程度。人での試験でも心拍数や血圧などで副作用は認められなかった」としている。”
  8. ワールドビジネスサテライト 健康食品の新表示見抜く目利き術 3月24日
  9. 機能性表示食品セミナー(2015MAR11) 薬事法ドットコム 持田騎一郎
  10. 初の 「機能性表示食品」が誕生! 「 えんきん」「健脂サポート 」、6月に発売 (ファンケル 2015年4月17日 報道関係者各位(参考資料))
  11. 機能性表示食品「えんきん」の根拠は、お粗末すぎる (科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体 FOOCOM.NET 2015年5月1日):”安全性や機能性などの資料を熟読しての個人的な感想は、「こんなレベルで、ここまで派手に機能性をうたってしまうのか!」だった。”
  12. 商品名:えんきん。表示しようとする機能性:本品にはルテイン・アスタキサンチン・シアニジン-3-グルコシド・DHAが含まれるので、手元のピント調節機能を助けると共に、目の使用による肩・首筋への負担を和らげます。機能性の科学的根拠に関する点検表(PDF)(消費者庁 機能性表示食品に関する情報 届出詳細 機能性情報)

CREST・さきがけ 応募締め切り迫る!

科学研究費補助金(科研費)がボトムアップ型なのに対して、「CREST」や「さきがけ」は日本が国の政策として研究の方向性を予め決めて行う、いわゆるトップダウン型の研究助成です。

「CREST」は、科学技術イノベーションに大きく寄与する卓越した成果を創出するネットワーク型研究(チーム型)で、研究期間は5年半以内、研 究 費は総額1.5 ~ 5 億円/ チーム。平成27年度第1期CREST研究提案募集に対する応募の締め切りが5/19( 火) 正午。

「さきがけ」は科学技術イノベーションの源泉となる成果を世界に先駆けて創出するネットワーク型研究(個人型)で、研究期間は3年半以内、研 究 費が総額3 ~ 4 千万円。平成27年度第1期さきがけ研究提案募集応募締め切りが5/12( 火) 正午。

CRESTやさきがけに応募するにあたっては、トップダウン型という特質を理解したうえで申請書を書く必要があります。

JSTグラントの申請書のポイント
•戦略目標にそって研究総括が定めた「領域のねらい」、「募集に当たって」などが公表されます。
•いくら基礎的にすぐれた研究でも、「領域のねらい」に合致しないと採用されません。
•研究論文ではありません。あくまで研究課題の提案を書いて下さい。専門外の方も審査に加わります。わかりやすく、図をまじえて書いて下さい。
•これまでの研究成果もすべて書くのではなく、当課題の提案の根拠になるものにとどめて下さい。

申請書の審査ポイント
•オリジナリティがあるか。
•個人(CRESTの場合研究代表者のチーム)の貢献がどの程度あるか。
•期間内にどこまでしようとしているのか。
•計画は申請金額に見合っているか。
•基礎となる予備研究があるか。
•パブリケーションの能力があるか。
(引用元:JST CREST,さきがけの特徴と申請のポイント http://home.sato-gallery.com/research/Grant-Proposal-JSTkobe2014.pdf

CREST

研究領域

(研究領域ウェブサイトへのリンク)

研究総括 戦略目標 発足年度
現代の数理科学と連携するモデリング手法の構築 坪井 俊
(東京大学 大学院数理科学研究科 教授)
平成27年4月6日 坪井 俊 研究総括による研究領域趣旨説明
社会における支配原理・法則が明確でない諸現象を数学的に記述・解明するモデルの構築 平成
26年度
人間と調和した創造的協働を実現する知的情報処理システムの構築 萩田 紀博
(国際電気通信基礎技術研究所取締役/社会メディア総合研究所所長)
平成27年4月6日萩田紀博研究総括による研究領域趣旨説明
人間と機械の創造的協働を実現する知的情報処理技術の開発
統合1細胞解析のための革新的技術基盤 菅野 純夫
(東京大学 大学院新領域創成科学研究科 教授)
生体制御の機能解明に資する統合1細胞解析基盤技術の創出
二次元機能性原子・分子薄膜の創製と利用に資する基盤技術の創出 黒部 篤
(株式会社東芝 研究開発センター 理事)
二次元機能性原子・分子薄膜による革新的部素材・デバイスの創製と応用展開
再生可能エネルギーからのエネルギーキャリアの製造とその利用のための革新的基盤技術の創出 江口 浩一
(京都大学 大学院工学研究科 教授)
再生可能エネルギーの輸送・貯蔵・利用に向けた革新的エネルギーキャリア利用基盤技術の創出 平成
25年度
素材・デバイス・システム融合による革新的ナノエレクトロニクスの創成 桜井 貴康
(東京大学 生産技術研究所 教授)
横山 直樹(副研究総括)
(株式会社富士通研究所 フェロー)

平成27年4月7日 桜井貴康研究総括より説明
情報デバイスの超低消費電力化や多機能化の実現に向けた、素材技術・デバイス技術・ナノシステム最適化技術等の融合による革新的基盤技術の創成
超空間制御に基づく高度な特性を有する革新的機能素材等の創製 瀬戸山 亨
(三菱化学株式会社 フェロー・執行役員/株式会社三菱化学科学技術研究センター 瀬戸山研究室長)
平成25年4月26日 H25年度公­募説明会 瀬戸山 亨 研究総括
選択的物質貯蔵・輸送・分離・変換等を実現する物質中の微細な空間空隙構造制御技術による新機能材料の創製
科学的発見・社会的課題解決に向けた各分野のビッグデータ利活用推進のための次世代アプリケーション技術の創出・高度化 田中 譲
(北海道大学 大学院情報科学研究科 特任教授)

平成27年4月6日 田中 譲 研究総括による研究領域趣旨説明
分野を超えたビッグデータ利活用により新たな知識や洞察を得るための革新的な情報技術及びそれらを支える数理的手法の創出・高度化・体系化
ビッグデータ統合利活用のための次世代基盤技術の創出・体系化 喜連川 優
(国立情報学研究所 所長/東京大学生産技術研究所 教授)

平成27年4月6日 喜連川 優 研究総括による研究領域趣旨説明
分野を超えたビッグデータ利活用により新たな知識や洞察を得るための革新的な情報技術及びそれらを支える数理的手法の創出・高度化・体系化

さきがけ

研究領域(研究領域ウェブサイトへのリンク) 研究総括 戦略目標 発足年度
社会的課題の解決に向けた数学と諸分野の協働 國府 寛司
(京都大学 大学院理学研究科 教授)
H26年度さきがけ「数学協働」領域(研究総括:國府寛司)募集説明会
社会における支配原理・法則が明確でない諸現象を数学的に記述・解明するモデルの構築/分野を超えたビッグデータ利活用により新たな知識や洞察を得るための革新的な情報技術及びそれらを支える数理的手法の創出・高度化・体系化 平成
26年度
社会と調和した情報基盤技術の構築 安浦 寛人
(九州大学 理事・副学長)
2015年4月2日さきがけ「社会情報基盤」領域(研究総括:安浦 寛人)募集説明会)
人間と機械の創造的協働を実現する知的情報処理技術の開発/分野を超えたビッグデータ利活用により新たな知識や洞察を得るための革新的な情報技術及びそれらを支える数理的手法の創出・高度化・体系化
統合1細胞解析のための革新的技術基盤 浜地 格
(京都大学 大学院工学研究科 教授)
生体制御の機能解明に資する統合1細胞解析基盤技術の創出
再生可能エネルギーからのエネルギーキャリアの製造とその利用のための革新的基盤技術の創出 江口 浩一
(京都大学 大学院工学研究科 教授)
再生可能エネルギーの輸送・貯蔵・利用に向けた革新的エネルギーキャリア利用基盤技術の創出 平成
25年度
素材・デバイス・システム融合による革新的ナノエレクトロニクスの創成 桜井 貴康
(東京大学 生産技術研究所 教授)
横山 直樹(副研究総括)
(株式会社富士通研究所 フェロー)
平成27年度募集さきが­け選考方針 横山直樹副研究総括
情報デバイスの超低消費電力化や多機能化の実現に向けた、素材技術・デバイス技術・ナノシステム最適化技術等の融合による革新的基盤技術の創成
疾患における代謝産物の解析および代謝制御に基づく革新的医療基盤技術の創出 小田 吉哉
(エーザイ・プロダクトクリエーション・システムズ バイオマーカー&パーソナライズド・メディスン機能ユニット プレジデント)
H25年度 CREST及びさきがけ募集説明会 「疾患代謝産物」領域(2) さきがけ研究領域「疾患における代謝産物の解析および代謝制御に基づく 革新的医療基盤技術の創出」(小田吉哉研究総括)
疾患実態を反映する生体内化合物を基軸とした創薬基盤技術の創出
超空間制御と革新的機能創成 黒田 一幸
(早稲田大学 理工学術院 教授)
H25年度 さきがけ公募説明会「超空間制御」領域 黒田研究総括
選択的物質貯蔵・輸送・分離・変換等を実現する物質中の微細な空間空隙構造制御技術による新機能材料の創製
ビッグデータ統合利活用のための次世代基盤技術の創出・体系化 喜連川 優
(国立情報学研究所 所長/東京大学生産技術研究所 教授)
平成27年4月6日 喜連川 優 研究総括による研究領域趣旨説明
分野を超えたビッグデータ利活用により新たな知識や洞察を得るための革新的な情報技術及びそれらを支える数理的手法の創出・高度化・体系化

(引用元:JST 科学技術振興機構 研究提案を募集する研究領域(第1期)、およびYOUTUBEより関連動画をピックアップ)

参考

  1. 研究提案を募集する研究領域(第1期)(JST 科学技術振興機構)
  2. 平成27年度 第1期 CREST・さきがけ 研究提案募集リーフレット(PDF)(JST 科学技術振興機構)

論文出版に向けての、ボスとの協同作業

大学院に進学した学生や新しいポスドクが、新しいラボでしばらくの間研究テーマを模索し、やがて面白そうでしかも自分にできそうなことを見つけて研究を始める。ボスもそれを認めて、やりたいようにやらせる。数年後、ラッキーなことにそれなりに実験データが溜まってきて、論文を書き始める。しかし、いざ書くとなると、なかなか筆が思うように進まない。それはなぜかというと、せっかく得られた実験結果から導き出せる結論があまりにも弱いから。こうなってしまうと、良い論文を出すことは困難です。

研究プロジェクトを一度始めてしまうと、研究分野にもよりますが数ヶ月、あるいは数年間、その研究を続けることになります。その努力が良い論文として結実しないことには、本人の研究者としてのキャリアが危ぶまれますし、ラボも停滞します。最終的なアウトプットの段階でこのような後悔をしないためには、どうすればいいのでしょうか?

良い科学研究論文を能率よくラボから出すための指針を、ハーバード大学の化学者、ホワイトサイズ教授が短いエッセイにまとめています。この文章はかなり有名で、既にいろいろなところで紹介されています。

これを書いたジョージ・ホワイトサイズ教授は、これまで950本以上の論文を書いており、1981年から1997年の間でもっともよく引用された 1,000人の科学者のうち、5位にランキングされている人であり、さらに2011年12月の時点で、現存する科学者の中で一番h指標が高い研究者なので す。ハーバード大学でMITを取り、同大学で教授になって、300人を超える学生と学者を指導してきました。(http://www.editage.jp/insights/a-3-page-guide-to-scientific-writing)

以下のサイトでは、日本語訳も紹介されています。

今回紹介する文献“Whitesides’ Group: Writing a Paper”では、世界一線級の化学者であるGeorge M. Whitesides教授が自ら、優れた論文執筆法を解説しています。具体的には『アウトライン法』――すなわち、始めに論文の枠組み(アウトライン)を作り、研究データの蓄積と同時並行して何度も修正を加えてゆく、実験データはその時々で補完、図表重視のアピールを心がけ、テキストを書くのは一番最後、という論文作成法――の提唱を通じ、研究のプロダクティビティ・時間効率の向上に効果的たる仕事術にも触れています。http://www.chem-station.com/blog/2009/12/whitesides_group_writing_a_pa.html

もともとAdvanced Materialsという学術誌に2004年に掲載されたものですが、このジャーナルのアクセスランキングでいまでも上位に入るほどの人気エッセイです。

英語の原文はこちら:Whitesides’ Group: Writing a Paper, Whitesides, G.M., Advanced Materials, 2004, 16, 1375-1377. (ラボのウェブサイト上のPDFリンク)。

ホワイトサイズ教授が論文執筆について語るインタビュー動画
Publishing Your Research 101 – Episode 1: How to Write a Paper to Communicate Your Research

 

参考

  1. Whitesides’ Group: Writing a Paper, Whitesides, G.M., Advanced Materials, 2004, 16, 1375-1377:ラボのウェブサイト上のPDFリンク
  2. Whitesides Research Group: Professor George M. Whitesides, Department of Chemistry and Chemical Biologym Harvard University:ホワイトサイズ教授の研究室ウェブサイト
  3. 化学者のつぶやき Whitesides’ Group: Writing a paper(Chem-Station 日本最大の化学ポータルサイト 2009年12月24日)
  4. 科学的文章を書くための3ページのガイド(editage Insights 2014年3月31日)

 

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研究論文を能率よく書くためのコツ7個

研究分野が違えば、論文のフォーマットは大きく異なります。以下の動画はコンピュータサイエンスの分野でConference paperをどうやって能率よく仕上げるかについてのサイモン・ペイトン・ジョーンズ(Simon Peyton Jones)氏によるセミナーです。研究の進め方や論文を書くことに関しては普遍的な部分があるため、実験科学など他の分野の研究者にとっても非常に示唆に富む内容です。

Professor Simon Peyton Jones (Computer Scientist)
How to Write a Great Research Paper

00:20  #1 Don’t wait: write
04:13  #2 Identify your key idea
07:18  #3 Tell a story
09:34  #4 Nail your contributions
16:44  #5 Related work: later
23:47  #6 Put your readers first
28:40  #7 Listen to your readers
(34:19 トークの終わり。この動画ではなぜか、再び繰り返しになっているようです。)

同じトピックに関する別の場所でのトーク(60分間バージョン)。こちらのウェブサイト(http://research.microsoft.com/apps/video/default.aspx?id=168649)ではスライドが別に表示されます。

参考

  1. Simon Peyton Jones, Microsoft Research: Research skills
  2. Choosing a venue: conference or journal? by Michael Ernst (2006)
  3. Mentoring Advice on “Conferences Versus Journals” for CSE Faculty  by Kevin W. Bowyer (2012)

 

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【研究費不正】北大教授夫婦が二重に研究費を獲得

夫婦ともに研究者というカップルは多いのですが、新聞報道によれば、研究の実態は一つなのに研究費を二重取りしていたという例が北海道大学で発覚しました。

有賀早苗教授の側には研究の実態がないにもかかわらず、2006年度に800万円、07年度に750万円を不正受給していたという。(朝日新聞 2015年5月1日)

研究者が受給した科学研究費補助金の内容は、KAKEN科学研究費助成事業上で公開されています。

研究機関:北海道大学
研究種目:基盤研究(B)
配分額 総額:17750千円2006年度:8000千円 (直接経費:8000千円)2007年度:9750千円 (直接経費:7500千円, 間接経費:2250千円)
研究課題番号:18390253 家族性パーキンソン病PARK7原因遺伝子DJ-1の機能解析と創薬 Function of DJ-1, a causative gene for familial Parkinson’s disease PARK7
代表者:有賀 早苗 北海道大学・大学院・農学研究科・教授
研究分担者:有賀 寛芳 北海道大学・大学院・薬学研究院・教授

研究機関:北海道大学
研究種目:特定領域研究
配分額 総額:8200千円2006年度:4100千円 (直接経費:4100千円)2007年度:4100千円 (直接経費:4100千円)
研究課題番号:18023002 パーキンソン病PARK7の原因遺伝子DJ-1の機能解析
代表者:有賀 寛芳 北海道大学・大学院・薬学研究院・教授
研究分担者:有賀 早苗 北海道大学・大学院・農学研究院・教授

研究成果の概要も同じくデータベース上で公開されています。2つの研究プロジェクトの成果報告書は以下の通り。

研究課題番号:18390253 研究概要(最新報告)
1)DJ-1の機能解析-ドパミン生合成におけるDJ-1の機能
DJ-1はTH, DDCに直接結合し、活性を正に制御することを明らかにした。パーキンソン病患者で見られるDJ-1変異体にはその活性がない。また、ヘテロ変異体は野生型DJ-1に対し、dominant negative効果を示し、ヘテロ変異も発症の一因となることが示唆された。H_2O_2,6-OHDAなどで細胞に酸化ストレスを与えると、DJ-1の106番目のシステイン(C106)が、-SOH, SO_2H, SO_3Hと酸化される。軽度のC106酸化はTH, DDC活性を上昇させ、過度の酸化は逆に活性抑制を示したことにより、弧発性パーキンソン病発症におけるDJ-1機能が類推された。

2)DJ-1とDJ-1結合化合物による神経変性疾患治療薬への応用
虚血性脳梗塞モデルラット脳へのDJ-1注入により顕著に症状が抑制された。DJ-1結合化合物は、DJ-1のC106への過度の酸化を抑制することで、DJ-1活性を維持することを明らかとした。
更に、DJ-1結合化合物の更なる活性上昇を狙って、in silicoで構造改変した。また、250万化合物ライブラリーを使ったin silico大規模スクリーニングで、DJ-1結合化合物を複数単離した。

研究課題番号:18023002 研究概要(最新報告)
1)DJ-1の機能解析-ドパミン生合成におけるDJ-1の機能
DJ-1はTH, DDCに直接結合し、活性を正に制御することを明らかにした。パーキンソン病患者で見られるDJ-1変異体にはその活性がない。また、ヘテロ変異体は野生 型DJ-1に対し、dominant negative効果を示し、ヘテロ変異も発症の一因となることが示唆された。H_2O_2, 6-OHDAなどで細胞に酸化ストレスを与えると、DJ-1の106番月のシステイン(C106)が、-SOH, SO_2H, SO_3Hと酸化される。軽度のC106酸化はTH, DDC活性を上昇させ、過度の酸化は逆に活性抑制を示したことにより、弧発性パーキンソン病発症におけるDJ-1機能が類推された。

2)DJ-1とDJ-1結合化合物による神経変性疾患治療薬への応用
虚血性脳梗塞モデルラット脳へのDJ-1注入により顕著に症状が抑制された。DJ-1結合化合物は、DJ-1のC106への過度の酸化を抑制することで、DJ-1活性を維持することを明らかとした。
更に、DJ-1結合化合物の更なる活性上昇を狙って、in silicoで構造改変した。また、250万化合物ライブラリーを使ったin silico大規模スクリーニングで、DJ-1結合化合物を複数単離した。

夫婦の研究テーマが非常に近く、共同研究として発表論文でも互いに共著者として名前を入れ合う例は珍しくなく、その場合は似たような成果報告書になることがあるかもしれません。夫婦である二人の研究がどれくらい独立しているのかを外部の人間が判断するのは難しいものがあります。

ただ上の報告書を見ると、2つの異なる研究助成であるはずなのに、報告書の文章が完全に一致しています。いくらなんでも、これでは釈明の余地はないのでしょう。せめて、二人の研究代表者がそれぞれ独立に報告書を書いていれば、こういうことは起きえないわけで、あまりにも露骨過ぎたかなと思います。論文報告が複数あれば、2つに振り分けるなどしておけば2つは別の研究だと主張できたかもしれません。

まあいずれにせよ今回は、「研究の実態がなかった」という北大の内部調査結果が、不正と判断する根拠になったのでしょう。

参考

  1. 教授夫婦、研究費不正取得 北大が処分、1550万円(産経ニュース2015.5.1):”北海道大は1日、農学研究院の有賀早苗教授(59)が、実体のない研究に科学研究費を申請し、計約1550万円を不正取得したとして、停職10カ月の懲戒処分にしたと発表した。…有賀教授は平成18年から19年にかけて、パーキンソン病患者に特有のがん遺伝子に関する研究費を申請したが、計画通り研究が行われておらず、研究成果などが夫の有賀特任教授が代表者となっている別の報告書と同じ内容だった。”
  2. <北大>科学研究費を不正受給 教授夫婦を停職10カ月 (Yahoo!ニュース/毎日新聞 5月1日:”北海道大は1日、国から計1550万円の科学研究費補助金を不正受給したとして、同大大学院農学研究院の有賀早苗教授(57)と夫で同大大学院薬学研究院の寛芳特任教授(64)を停職10カ月にしたと発表した。
  3. 研究費1550万円を不正受給、北大教授を停職10カ月(朝日新聞デジタル 2015年5月1日):” 北海道大学は1日、夫の研究を妻の研究としても申請し、計1550万円の公的研究費を受けていたとして、大学院農学研究院の有賀早苗教授(57)と、夫で大学院薬学研究院の有賀寛芳特任教授(64)を、ともに停職10カ月の懲戒処分にしたと発表した。”