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2014年4月7日理化学研究所丹羽博士らがSTAP細胞検証実験計画で記者会見

STAP細胞検証実験を行なう神戸理研の丹羽博士らが、実験計画を説明するための記者会見を2014年4月7日に東京で開きました。

「STAP細胞」論文問題 共同執筆者、STAP細胞検証実験の概要を発表(14/04/07)

STAP細胞作製プロトコール(Protocol Exchange)の責任著者が今になってSTAP細胞が「あるかどうか分からない」のだとすると、あのプロトコールは一体何だったのでしょうか?NATURE誌のSTAP細胞論文は小保方氏のみが研究不正で断罪されましたが、NATURE論文疑惑の釈明として後から出されたSTAP細胞作製プロトコールの著者は小保方、笹井、丹羽(責任著者)の3氏です。

理研調査委員会の最終報告にあるようにデータ捏造、改竄は小保方氏一人の行為だったとしても、この「後出しプロトコール」こそが研究不正の組織的隠蔽工作そのものだと感じた人も多いはずです。STAP細胞が「あるかどうか分からない」 のにSTAP細胞作製プロトコールを連名で発表した責任は誰がどう取るのでしょうか?

笹井氏は、NATURE論文の中に多数の不正データが見つかった現時点でもなおSTAP現象でしか説明がつかない部分があると述べています。だとすれば、NATURE論文にまだ残っているという信頼できるデータが何なのかのまず最初に説明をすべきではないでしょうか?それをやらずにSTAP細胞の検証実験に踏み切った場合、STAP細胞捏造論文を出した著者らがさらに多額の税金を使ってSTAP細胞「仮説」の検証実験を行うことに国民が理解を示せるでしょうか?

小原雄治・国立遺伝学研究所特任教授は産経ニュースへ寄稿した中で、

理研は今後、細胞の存在を調べる再現実験を行うというが、まずは論文の真正なデータを検証可能な形で明らかにし、再現実験に値するかどうか見極めた方がいいのではないか。もしリンパ球の目印がなければ、再現実験は幽霊を追い掛けるようなものだ。(http://sankei.jp.msn.com/science/news/140407/scn14040710100003-n1.htm)

と指摘しています。

参考

  1. 「STAP現象はあくまでも一つの仮説」 論文の共著者・丹羽氏が記者会見で明言(弁護士ドットコム 2014年04月07日 21時13分):丹羽氏によると、STAP細胞の研究においては、主に、論文の構成に関するアドバイスを小保方ユニットリーダーにおこなっていた。2014年2月以降は、実験手順書(プロトコル)を作成するため、実験の流れを3回ほど確認したが、自ら手を動かして実験をしていたわけではなかったという。
  2. STAP論文問題、検証実験の詳細は 会見の一問一答(朝日新聞デジタル 2014年4月7日23時11分):丹羽氏は、どのようにSTAP細胞の研究にかかわったのか。丹羽 2013年1月から研究に参加した。論文の構成への助言や、幹細胞の研究をしているので、その方面から適切に表現できるよう助言した。直接、実験はしていない。
  3. 「共著者の1人として心よりおわび」 丹羽氏が記者会見 再現実験へ(ITメディアニュース2014年04月07日 14時42分 更新):丹羽氏はNature論文の撤回に同意しており、STAP細胞の存在については、「あるかどうか分からない」という立場。「あるかどうかを知りたいというスタンスから、検証実験に参加することにした」
  4. 小保方氏を検証に加えず 理研チームが会見、「協力は得たい」(産経ニュース 2014.4.7 15:45):実験責任者の相沢慎一特別顧問は、小保方氏しか知らない実験のテクニックもあり得るとして「協力を得られるものなら得たい」と話した。
  5. STAP論文の共著者が7日会見(日本経済新聞 2014/4/4 22:30):理化学研究所は7日午後、新型万能細胞「STAP(スタップ)細胞」の存在を検証する実験計画を説明するため、論文の共著者の一人である理研発生・再生科学総合研究センターの丹羽仁史・プロジェクトリーダーらが東京都内で記者会見する。
  6. Haruko Obokata,Yoshiki Sasai & Hitoshi Niwa. Essential technical tips for STAP cell conversion culture from somatic cells.     Protocol Exchange  (2014) doi:10.1038/protex.2014.008. Published online 5 March 2014. Corresponding author Correspondence to:Hitoshi Niwa (niwa@cdb.riken.jp)
  7. 「理研は元データ開示し根本的検証を」 小原雄治・国立遺伝学研究所特任教授(産経ニュース 2014.4.7 10:31):小保方晴子氏らは捏造とされた画像について、本来の画像が存在するとしているが、調査委員会の最終報告では、実験ノートの不備などで、それが真正なものとは証明できなかったと解釈できる。
  8. 調査委員会報告の概要を受けてのコメント(理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター 笹井 芳樹 2014 年 4 月1日)(PDFリンク):なお、Figure 2 の免疫染色の画像の件では、以前に、画像の不正流用の組織的な隠匿などの疑義を問う一部の報道がありましたが、そう言った事実は一切ないことをここに述べさせていただきます。Figure 2 の免疫染色の画像の取り違いの調査委員会への報告の際、私どもの当初の説明に不十分なものがあったとのご指摘も報告書にございましたが、これは自己点検での発見された過誤を追加報告する際の私どもの不手際によるものであり、隠蔽とは次元の異なるものであります。…刺激惹起性多能性獲得という現象の真偽は、今後の生物学研究に大きな影響をもつものであり、今後、その検証は厳密かつ公正に行うことが必須であると思います。また、理研には、そうした集中的な検証に貢献する責務があると思っております。仮に、今回疑義を生じたデータを除いてみたとしも、その他のデータで刺激惹起性多能性獲得を前提としない説明が容易にできないものがあると私は考えており、理研内外での予断のない再現検証に対して積極的に協力して、真偽の解明に貢献したいと思っております。

【実録】「生命科学研究を考えるガチ議論」シンポジウム

2013年12月5日(木)の夜、第36回日本分子生物学学会年会企画として行なわれた「生命科学研究を考えるガチ議論」。近藤 滋氏(大阪大学大学院 教授, 年会大会長, ガチ議論代表)、宮川 剛氏(藤田保健衛生大学 教授, ガチ議論スタッフ)らが企画し、宮野 公樹氏(京都大学学際融合教育研究推進センター准教授・総長学事補佐)がファシリテーター役を務めて、川上 伸昭氏(文部科学省政策評価審議官)、斉藤 卓也氏(文部科学省タスクフォース戦略室長)、鈴木 寛氏(元文部科学副大臣)、原山 優子氏(内閣府総合科学技術会議常任議員)、安宅 和人氏(ヤフー株式会社・CSO)らをパネリストに迎えてのこの集まり。神戸国際会議場1階メインホールを埋め尽くした研究者らとともに何が議論されどのような結論が導かれたのでしょうか?

日本の科学を考える(http://scienceinjapan.org)ウェブサイトで、シンポ・テープ起こしが順次公表されています。

トピック1【諸悪の根源、単年度予算制度】 単年度予算制度によって、年度末駆け込みによる無駄な使用、残券ゼロ化の無駄な努力、そし て預かり金という不正、などの諸問題が発生。全ての公的研究費の複数年度予算化をお願いしたいという提案。アンケートでは「研究費の基金化を全ての種目について進めるべきだと思いますか?」に対して「はい」が88%。約9割が基金化を希望しているという結果。

トピック2【研究者の雑用が多すぎ】

トピック3【研究者のポスト問題】 ポスドク1万人計画後、ポスト競争が加熱。競争過多で研究にマイナス。常勤と非常勤の待遇の差が大きすぎ。5年、あるいは10年の雇い止めも大問題。提案:安定性と競争性を担保する日本版テニュアトラックのようなものができないか。身分そのものは安定させるけれども、基本報酬は低く抑え、競争的なアドオン給与をつける。よほどのことがない限りテニュアが取得できるように。「このようなテニュアトラック制度、導入してほしいですか?」約9割が導入を希望。

トピック4【ギャンブル性が高すぎる競争的研究費】当たるか外れるかのall or none。安定した基盤的研究費の導入を提案。研究者の過去の実績の評価に主に基づき、研究費の額が緩やかに変動。突然ゼロになったり極端に増えるということはなし。アンケートでは、9割以上がこのような研究費の導入を希望。

などのトピックをはじめ、さまざまな話題に関して議論が行なわれたようです。

リンク:第36回日本分子生物学学会年会企画「生命科学研究を考えるガチ議論」シンポジウム書き起こし