Daily Archives: February 17, 2014

賄賂受領の京大薬元教授に対し懲役2年の実刑

物品納入業者から賄賂を受け取った罪に問われた裁判で、辻本豪三(元)京都大学大学院薬学研究科教授(61)に対する判決が17日に東京地方裁判所で言い渡されました。辻本豪三元教授は、医療機器販売会社「メド城取(しろとり)」から渡されたクレジットカードを使って自分の遊興費や家族との飲食代、子への援助などの支出に使っており、これらの合計約940万円分の利益が賄賂と認定されたものです。

億単位の研究費を動かす立場の大学教授が業者から賄賂を受け取り、納入業者の選定で便宜を図るという行為は悪質な行為ですが、今回の事件は実はそれだけにとどまらないようです。

「これで良いのか,京都大学の公益通報」という法律事務所のインターネット記事によると、辻本豪三(元)京都大学教授の行っていたことは業者から賄賂を受け取っていたことにとどまらないようです。しかも、辻本豪三教授の研究室内で行われていた研究費の不正に関して過去に内部通報があったにもかかわらず、京都大学は「調査の結果、通報対象事実は認められませんでした」としか回答せず、事実上不正を黙認していたのいうのですから驚きます。これではせっかく勇気を持って内部告発した人間がまったく報われません。辻本豪三教授が行っていたことは、なかなか巧妙です。

教授は,自らNPO法人をつくり,知人を理事長に据え,教室員らを理事にした。もちろんNPO法人を実質的に動か していたのは教授である。そのやり方の概略は,たとえば公的資金を原資とする研究および調査教授業務の一部を当該NPO法人に請け負わせることにして,見積もりを出させる。その見積もりはNPO法人に所属する教室員などに作成させ,最終的には教授がチェックする。調査自体も教室員にアルバイトとしてやらせて,アルバイト料を支払っていた。教室員らはこれがNPO法人の仕事などと思わず,むしろ教授の指示によるので研究活動の一端かと思って手伝っていたよう である。しかし最も大きな問題は、NPO法人への委託費と作業をした教室員に対するアルバイト料の間に大きな差があることで、このマージンがどのように使われたかは不明である。
本来なら,外部委託研究費の使途明細はすべて京大事務局において管理する仕 組みになっているのだが,NPO法人を間に通すと,その部分は別人格法人の会計処理になるので大学当局の管理も監査も及ばない。NPO法人の監督は京都府が行うが,京都府は金の使い途の当・不当までは干渉しない。それ故,NPO法 人における請負金額の使途明細はすべていわば水面下に沈められて,誰も問題にしようがなくなってしまうのである。このように間にNPO法人を通すことによ って,教授は個人秘書ともいうべき理事長を指図して,管理・監査の及ばない金を自由に使う ことが出来るというわけである。(「これで良いのか,京都大学の公益通報」より引用 http://kawanaka-law.jp)

参考ウェブサイト

  1. 京大元教授に懲役2年の判決 物品納入めぐる汚職事件(朝日新聞デジタル 2014年2月17日15時27分):吉村裁判長の言葉「提供された利益を自分の遊興や家族との飲食、子への援助などに見さかいなく使ってお り、公的立場にいることを踏まえた分別が感じられない。同種事案のなかでも違法性の高い悪質な事案で、実刑が相当」
  2. 京大の元教授に懲役2年の実刑判決(NHK NEWS WEB 2月17日 16時32分) :東京地方裁判所の吉村典晃裁判長は「研究の第一人者として多額の予算を獲得できる立場を悪用した悪質な犯行だ。辻本元教授はゲノム創薬科学分野の第一人者として多額の予算を獲得できる立場を悪用した。賄賂は自分の遊興費などに見境なく使っていて分別が感じられない。国立大学の機器調達の適正さを大きく損ねる悪質な犯行だ」と指摘。
  3. これで良いのか,京都大学の公益通報(川中法律事務所 Posted on 2月 10th)

小保方博士のSTAP細胞ネイチャー論文に疑義

日本人若手女性研究者による快挙として日本だけでなく世界中を沸かせたSTAP細胞の発見ですが、驚いたことに、STAP細胞作製を報告した小保方博士らのネイチャー論文のデータの信頼性に関して疑義が生ずるという非常に残念な状況になっています。

Obokata et al., Nature 505;676–680 図1b

Fig1b

Obokata et al., Nature 505;676–680 図2g

Fig2g

異なる個体のマウスを用いた実験データのはずなのに、上図1bと図2gで胎盤(緑色の蛍光写真の中の、周辺部が茶色の円形の組織)の形態が、向きや縦横比は異なりますが酷似しており、同一個体の写真としか思えないという指摘がなされています。

またObokata et al., Nature 505,641–647の論文の図1iでは下に示すように明らかに3番のレーンを切り貼りした形跡が窺えます。

ArticleFig1i     ArticleFig1Contrast

左側は論文の原図。右側はコントラストを変えて背景の明るさを強調したもの。3番目のレーンだけ背景が黒くいため、切り貼りされたものとわかります。

また、同じ筆頭著者が2011年に出した論文に関してもゲル上のDNAのバンドを反転させて別の図に流用した可能性が指摘されています。

理化学研究所は「研究成果自体は揺るがないと考えている」そうですが、たとえ論文の一部であったとしてもデータの”不適切な取り扱い”があれば、論文そのものの信憑性が著しく低下することは否めません。

データの”不適切な取り扱い”は単純ミスなのか意図的なのか?

意図的だとしたら動機は?単純なミスなら原因は?

”不適切さ”が指摘された以外のデータに関しては、どこまで信用していいのか?

ネイチャー誌はこの問題にどう対処するのか(「訂正」を受け入れるのかそれとも「論文取り下げ」にするのか)?

理化学研究所は小保方博士および他の著者らをどう処遇するのか?

そもそも本当にSTAP細胞はできていたのか?他の研究室でこの論文の実験結果の再現性は確認できているのか?

疑問が尽きません。

ちなみに、2013年日本分子生物学会年会のウェブサイト内の文書に、このような場合にネイチャー(Nature)編集部はどういう対処をするかに関して編集者の人の見解があります。

基本は-Principle of Scientific Publication is “Trust”。論文の中身に疑義が有った場合、Allegation(告発)はすべて基本受け付けている(匿名であろうが)。
中身としては図の問題が多い。Image duplication, Image manipulation など。
その場合は著者にoriginal data と詳細な説明を要求する。それを見て判断する。
もし、“look for intent to mislead as opposed to sloppy practice”.(意図的な不正)が見つかれば、著者の所属機関に連絡し、その報告を待つ(最終決定の前に)。
結果,結論が正しいなら(Conclusion stands), retraction ではなく、Correction を選ぶのが方針(意図的なものが無ければ、retraction にはならないと個人的には判断)。

2013年日本分子生物学会年会 理事会企画フォーラム「研究公正性の確保のために今何をすべきか?」3.研究不正を防ぐジャーナルシステム(12月4日(水曜日)10:00-11:30)のセッション報告速報(PDFファイル

⇒ 小保方博士らのSTAP細胞論文をネイチャー(NATURE)誌も調査へ

STAP細胞作製は本当に真実なのかどうか、今世界中の研究室が再現性を確認するための努力を続けています。Knoepfler Lab Stem Cell Blog STAP NEW DATAというウェブサイトでは、ポジティブな結果、ネガティブな結果にかかわらずSTAP細胞再現性テストの結果の投稿を呼びかけており、用いた刺激条件や培養条件の詳細および得られた結果の写真が投稿されています。実験の一例として、多能性獲得の指標となるマーカー遺伝子のプロモーター活性を、GFP(緑色蛍光蛋白質)レポーターの蛍光として確認するというものがありますが、「細胞が緑色に光った!」と喜んだのもつかの間、後になって自家蛍光に過ぎないことがわかったなどという失敗談も報告されていたりして、研究者の努力がリアルタイムで感じられます。

⇒ 「こんなことで研究そのものまで疑われるのは悔しい」

参考記事&参考ウェブサイト

  1. On the articles of Haruko Obokata, who discovered STAP cells (stapcell.blogspot.jp)
  2. 小保方晴子が筆頭著者の論文の不適切さについて (世界変動展望)
  3. 論文捏造&研究不正@JuuichiJigen
  4. STAP論文を検証=「不自然な画像」指摘受け-理化学研究所 (時事ドットコム 2014/02/17-11:37):理化学研究所(神戸市)は17日、マウスで新しい万能細胞「STAP(スタップ)細胞」を作ったと発表した小保方晴子研究ユニットリーダーらの論文につい て、「不自然な画像データが使われている」とインターネット上などで指摘を受けたため、外部の専門家を交え調査を始めたことを明らかにした。理研は「研究 成果については揺るぎない」と説明している。
  5. Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells into pluripotency. Haruko Obokata,Teruhiko Wakayama,Yoshiki Sasai,Koji Kojima,Martin P. Vacanti,Hitoshi Niwa,Masayuki Yamato & Charles A. Vacanti. Nature 505,641–647 (30 January 2014) doi:10.1038/nature12968
  6. Bidirectional developmental potential in reprogrammed cells with acquired pluripotency. Haruko Obokata,Yoshiki Sasai,Hitoshi Niwa,Mitsutaka Kadota,Munazah Andrabi,Nozomu Takata,Mikiko Tokoro,Yukari Terashita,Shigenobu Yonemura,Charles A. Vacanti & Teruhiko Wakayama. Nature 505,676–680(30 January 2014) doi:10.1038/nature12969
  7. The Potential of Stem Cells in Adult Tissues Representative of the Three Germ Layers. Haruko Obokata, Koji Kojima, Karen Westerman, Masayuki Yamato, Teruo Okano, Satoshi Tsuneda, and Charles A. Vacanti. Tissue Engineering Part A. March 2011, 17(5-6): 607-615. doi:10.1089/ten.tea.2010.0385.