Monthly Archives: May 2013

ヒトクローン胚性幹細胞作製CELL論文に疑義

2005年にソウル大の黄禹錫博士がヒトクローン胚性幹細胞作製に成功したと論文発表したのが、捏造だったというのは衝撃的な出来事でした。2013年、ついに今度こそ本当にヒトクローン胚性幹細胞作製に成功したという論文がCELLに発表されましたが、論文の図の作成時に「同じデータを再利用していた」という「ミス」が複数見つかったり、「不自然に一致しすぎている2回の実験結果」を指摘する声が上がるなど、釈然としない事態になっています。

ネイチャーの解説記事は、単純なミスか不正行為かの判断を避けながらも、責任著者の釈明だけでなく、他の科学者の厳しい意見も紹介しています。なお、疑義に関する詳細な議論は、PubPeerというフォーラム上で行われています。

マイクロアレイによる遺伝子発現の定量に関しては、同じクローンの細胞を異なるディッシュで培養して実験した場合、このように発現パターンが99.8%も一致するのはほとんどあり得ないという専門家の指摘です。

CELLのエディターが論文の著者らに対して実験ノートの提出を求めることにより、「データを取り違えて図を作製してしまった。」、「確率が低かろうが一致したのが事実だから問題ない。」という釈明が受け入れられるものかどうかを判断できるでしょう。

試料の調整を独立に2回行いそれらを測定することと、試料の調整は1回のみでそれを2つにわけて2回測定することは、明確に区別されるべきです。どちらを行ったのかを論文中で明示する限り、何の問題もありません。しかし、サンプルを2つに分けただけなのに、サンプル調整を2回行ったと言って2回分の測定データを見せるならば、それは真実に反することになります。

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人クローン論文にミス「悪意ない」と責任者
2013.5.24 08:01
米オレゴン健康科学大のシュフラート・ミタリポフ博士は、人クローン胚性幹細胞(ES細胞)の論文に使われた写真や記述に複数の「悪意のないミス」があったことを認め、掲載した米科学誌セルに訂正を申し入れる考えを示した。英科学誌ネイチャー電子版が23日、伝え、セル誌は「小さなミスで、論文の科学的成果には影響しない」とするコメントを発表した。
論文の主執筆者は立花真仁研究員だが、博士はチームの責任者。博士は論文発表を急ぐあまり、同じ写真を2度使ったり、写真の説明を取り違えたりするなどのミスが起きたことが分かったと話した。
ネイチャーによると、博士は論文の7ページ目にある2種類の幹細胞の写真に付けた説明が入れ替わっていることを認め、幹細胞で働く遺伝子を調べたグラフに使われている画像も一部、誤ったものが使われていた。
人クローンES細胞をめぐっては、韓国ソウル大の黄禹錫元教授が発表した論文が捏造だった経緯がある。(共同)

  1. Stem-cell cloner acknowledges errors in groundbreaking paper (nature.com)
  2. Human Embryonic Stem Cells Derived by Somatic Cell Nuclear Transfer. (PubPeer)
  3. 人クローン論文にミス「悪意ない」と責任者 産経ニュース2013.5.24 08:01

阪大助教が研究の進まぬ大学院生を殴る蹴る!

大阪大学基礎工学研究科で起きたアカデミックハラスメントのニュースです。以下、ニュース記事の転載。

指導する学生2人に暴力をふるうなどのアカデミックハラスメントをしたとして、大阪大は15日、大学院基礎工学研究科の30代の男性助教を停職3カ月の懲戒処分としたと発表した。助教は「反省している」と話しているという。
 阪大によると、助教は昨年12月上旬、指導していた学生の研究が進んでいないことを激しく叱責。同月中旬には学生が持っていた論文のコピーを破り、脇腹を背後から蹴り上げるなどした。
 被害を受けた学生が大学側に相談し発覚。その後の調査で、平成23年にも別の学生の頭を平手で殴ったことが判明した。転載元:産経ニュース2013.5.15 22:07

データ捏造准教授が懲戒解雇に

以下、ニュースからの転載です。

日本経済新聞ウェブサイト2013/5/11 0:29
三重大准教授がデータ捏造 懲戒解雇に
三重大と名古屋大は10日、三重大大学院生物資源学研究科の青木直人准教授(47)が、名古屋大在籍時などに発表した論文で、捏造(ねつぞう)した画像データを掲載していたことを明らかにした。不正論文を研究実績として文部科学省所管の日本学術振興会などに補助金を申請、受け取っており、三重大は9日付で懲戒解雇処分とした。

FNN東海テレビNEWS 05/10(金) 18:52更新
論文データねつ造で三重大准教授を懲戒解雇
三重大学大学院の47歳の准教授が、データをねつ造するなどして11本の論文を不正に作成していたことがわかり、大学は准教授を懲戒解雇処分とした。懲戒解雇されたのは、三重大学大学院生物資源学研究科の青木直人准教授(47)。三重大学によると青木准教授は、名古屋大学の助手をしていた平成8年以降に発表した細胞の情報伝達に関する研究など11本の論文の69箇所について、別の実験で用いたデータを加工して載せるなどの不正行為をしていた。青木准教授は、「過って実験結果を掲載した」と説明していたが、該当する実験記録がほとんど確認できなかったという。このため三重大学は、意図的なデータのねつ造と認定し、青木准教授を9日付で懲戒解雇した。

以下、三重大学の公式発表(http://www.mie-u.ac.jp/topics/university/2013/05/post-285.html)より。
大学教員の研究不正及び懲戒処分について 2013年5月10日
(対象者)三重大学大学院生物資源学研究科 准教授
(事案の概要)
大学院生物資源学研究科准教授が捏造及び改ざんしたデータを用いた論文投稿を行ったとする三重大学宛申立があり,三重大学研究行動規範委員会予備調査委員会において予備調査した結果,「不正行為の可能性は有」と判断し,三重大学研究行動規範委員会において調査専門委員会による調査を行うことを決定した。
准教授は本学に赴任する以前は,名古屋大学に所属しており,両大学が協議の上,互いに協力しつつ独立して調査に当たることとした。
調査委員会では,指摘された研究論文,実験ノート及び元画像データ等の精査,関係資料の調査並びに被告発人からのヒアリングを実施した。研究行動規範委員会は,調査委員会の調査結果に基づき,研究不正行為があったと認定した。
(本学の対応)
①平成23年2月に研究不正に関する告発があり,研究行動規範委員会に調査専門委員会を設置し,慎重に調査した結果,平成25年1月に不正行為が存在すると認定した。
②平成25年2月,教育研究評議会に審査委員会を設置し,慎重に処分内容を審議した。
③審査委員会の審査結果を受け,平成25年5月9日の役員会の議決を経て,本学職員就業規則に従い,同日付けで懲戒解雇とした。

その他参考となる文書やウェブサイト

  1. 不正行為の疑いが指摘された10論文に関する認定 三重大学研究行動規範委員会(PDF)
  2. 三重大学 青木直人の論文捏造、不正 三重大学大学院生物資源学研究科と、名古屋大学大学院生命農学研究科の青木直人准教授による論文捏造、研究不正事件の追及ブログ(11JIGEN)