「 東大医学部論文不正疑惑 」 一覧

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東大医学部のフェイク論文がなぜ不正にならないの? (1)東大総長に聞いてみた

2016年8月にOrdinary_Researchersと名乗る研究者たちが、東大の大規模な論文不正を告発した(⇒記事)。告発文書は(おそらく第三者の手で)インターネット上にアップロードされ、閲覧できる(⇒記事)。東京大学は2017年8月1日に記者会見を行い、不正調査委員会の調査結果の結論を公表した。調査は理学系と医学系とで、別々に調査グループが組織され、理学系(分子細胞生物学研究所(分生研)の一研究室)の論文は不正と認定され、その研究室は事実上お取り潰し(ラボメンバーが全員離れた)となった。一方、医学系の5人の教授は不正なしという裁定が下された。新聞やテレビの報道では。分生研の不正認定が大々的に取り上げられ、医学系論文に関する不可解な裁定を批判的に伝えることはなかった(⇒記事)。 こうして、大きな謎が残った。告発文書を読む限り、悪質性において分生研の論文に勝るとも劣らないようにみえた医学系の論文の数々が、なぜ全て不正なしとされたのか?なぜ、理学系と医学系で天と地ほどの扱いの差があるのか?不思議でならないのは、報道資料や報告書本文で開示されている部分を読むだけでも、これって不正だよねとしか考えられないようなデータの取り扱いの事実が列挙されているにもかかわらず、結論だけは不正なしとされていることである。結論ありきの調査報告なのか?   東大の説明「オリジナルデータと再現データが一致しない論文」じゃ、研究者じゃない人は一体何のことかわからないだろうから、ここではわかりやすいように「フェイク論文」と呼ぶことにする。実際の実験で得られた数値とは異なる数値を報告した論文だからフェイク論文、要するにデータのでっちあげということ(ただし東大の現執行部によれば、これは研究不正にはあたらない)。太平洋をはさんだ某大国の大統領がやたらと発するフェイクニュースと同類と思ってくれればいい(ん、ちょっと違うか?大統領自身の発言という意味のつもり)。あるいは我が国の内閣総理大臣の発言と同じたぐい。「発表内容≠真実」ってことね。 政治の話はおいておいて、このフェイク論文がなぜ研究不正とは見なされないのかが、自分には謎で仕方がない。このニュースを最初に知ったとき、データを捏造して論文の図を作った人間は当然、直ちにとっちめられて研究の世界から叩き出されるものだと信じて疑わなかった。それが、どうしたことだ。東大の記者会見によれば、「医学部のほうには、不正行為などどこにもなかったよ」、というではないか。「なんだって?」と狐につままれたような感じがした。実験で得られた数値とは異なる数値からなるグラフを描いてネイチャーなどの論文を出しておいて、不正じゃないって?研究費を何億円も使って、いったい何やってんの?冗談じゃないよ。そんなことを認めたら、まじめに実験してるほかの研究者は一体なんなんだ? たとえて言うなら、マラソンの42.195kmのレースで、一部の選手が途中を車で移動してたようなもんだよ。でも不正じゃないから、記録を認めるとかいったら、競技が成立しないわな。別のたとえをするなら、勤勉な労働者に混じって、ニセ金を刷って使っている奴がいる、みたいな感じ。それくらいの悪質度といっていい。いや、研究者としての感覚でいえば、もっとかな。データ捏造ってのは、個人的には「強盗殺人」とかの凶悪犯罪のニュースを見たときと同じおぞましさを感じる。おっと、これは俺の主観であって、東大医学部のセンセーがたの名誉のために言っておくと、東大の現執行部は一切、研究不正とはみなしていない。でもさ、人にお金を支払ってもらうときに、日本銀行が発行した1万円札のかわりに、白い紙に手描きで1万円て書いたものを「ハイ、一万円」って手渡されて、受け取れる?しかも、日銀が「ソレ、全然、問題ないよ。」と言い出したらどうする?ふつう、ぶったまげるよね。それとおんなじことが今の日本の科学研究の世界で起きてるってわけよ。それも、東京大学医学部でだよ!?ウソだと思うなら、自分の目で確かめてくれ(⇒参考記事)。 東大医学部からフェイク論文がたくさん出てきたのに、「不正なし」と聞いたら、まあ、誰だって、「なんでだよ?」と思うわな。え、思わない?まあ、リアルでは憤っている人に会ったことがないので、ほとんどの人は無関心なのかもしらん。人のことなんてかまってる暇ないもんね。でも自分は、「そんなん、ありえんだろ?!」という思いがどうしても消えないので、思い切って、「なんで?」って東大に聞いてみた。別に医学部の先生とか東大総長に面識があるわけじゃないし、向こうも立場があるから答えにくいだろうし、個人的に聞くわけにもいかないから、「不正調査したときの調査結果見たいんだけど?」、と書面でお願いしたわけだ。すると、「待って、今資料用意するから」、「もうちょっと待って、資料が多すぎて大変だから」、っていうから、「うん、全然いいよ」、と首を長くして何ヶ月も待っていたわけだ。「一部、見せられない部分はあるんだけど」という返事だったから、「まあ、そんなこともあるよね」、と理解を示しながら、楽しみに待ってたわけだ。で、ようやく送ってきてくれた。で、送られてきた文書を見たら、どのページもどのページも墨塗りで真っ黒なわけ。「なんだよこれ、全部真っ黒で読む場所がほとんど無いじゃん。」 真面目な話、この”ノリ弁”のノリがない部分をみてみたら、Ordinary_Researchersが指摘した疑惑論文のうち、一部に関しては、論文投稿後に、雑誌社のほうで編集のミスがあって図がずれたりしてたらしい。もちろん、それは研究不正ではない。でも、そんなのは疑義が指摘されたたくさんの論文の中のごくわずか。ウソの中に真実もちょっとまぜて、全体としてウソをつくというやり方は、悪質なんだよね。東大の報告書はそんな印象。「ほら!単純なミスでした」、という部分を得意げに全面に出して、あたかも不正が全くなかったかのように見せようとしている(ように自分には見える)。 フェイクとかいう言葉を使って、名誉毀損だ!と文句いわれるのもつまらないから、念を押しておくけど、「フェイク」は、東大の説明「オリジナルデータと再現データが一致しない」という意味で使ってる。あなたが持っている日本語の辞書の意味通りだ。でも、東大に言わせると、それは不正じゃないだとさ。唇に唇を合わせたが、それはキスではない。だから性犯罪にはならないといった内容のニュースが最近あったけど、それとおんなじか。国語辞典の意味から外れた日本語を使わないと説明ができないような連中は、ろくでもないことをしてるってことだよ。 結局、東大医学部のフェイク論文はなぜ不正じゃないの?という疑問に答えるためには、調査報告書を隅々まで読む必要があるわけだけど、東大総長さんの回答は、「見せられません」、だったというわけよ。「法人文書開示決定通知書」っていう書面上の話なんだけど。調査報告書ってさ、本来、東大が納税者に報告するためのものだと思うんだよね。民主国家なら当たり前だよね。それがどうやら、まさかのまさか、調査委員会が東大総長に報告するためのものだと、総長さんは勘違いしているっぽいんだよね。研究費の出所は税金なのにねぇ。毎年毎年、東大にどれだけの税金が投入されてると思う?運営費交付金が800億円とか、科研費が200億円とか、途方もない金額だよ。ほかの大学とかと比べたら、ダントツで使いまくってるんだよ。そんなに恵まれた環境を享受しているくせに、「ほとんどの場合、測定値と論文のグラフの数値は合ってなんかいませんよ」、とか、「グラフはテキトーに手描きですよ」、とか、「エラーバーは手でずらしましたよ」、とか、あげくの果てに、「医科学研究ではそんなの通常ですけど?」、とか意味不明のトボケかましてみせたり、そんなふうに出鱈目なことをやりたいほうだいやって論文出しても研究不正じゃありませんって?いや、それはいくらなんでもありえんでしょ?まあ、100万歩譲って、不正じゃないと言い張るんだったら、調査報告書くらいちゃんと見せようよ。そうじゃないと、税金が無駄使いされていないかどうかを納税者がチェックしようがないじゃん?市民によるチェックを不可能にしてたら、民主主義の国とはとても言えないよね。 (つづく)   同じカテゴリーの記事一覧

東大医学部 異常な論文図表作成でも不正なし

年間何百億円もの研究費(=税金)を使っている東京大学なのですから、論文不正疑惑に関する調査報告書を納税者に対して全て公開すべきです。しかし、東京大学のウェブサイト上では22報論文に関する調査報告の骨子のみしか公開されておらず、医学研究科関係の記述は、「申立のあった5名について不正行為はない」の1行のみでした。Ordinary_Researchersによるデータ捏造疑惑の指摘は詳細かつ膨大で、説得力のあるものであり、それに対する東京大学の回答が「不正行為はない」の7文字だけというのは、あまりにも人を馬鹿にしすぎで、納税者に対しても、研究コミュニティに対しても説明責任をまったく果たしていません。   22報論文に関する調査報告書の本文はほとんどが墨消しされており、 22報論文に関する調査報告書 研究不正が本当にないのであれば一体何を隠す必要があるのか首を傾げたくなります。真っ黒に塗られた報告書なんて怪しさ満載ですが、墨消しされていない部分だけに限ってみても、見逃すことのできない異常な説明が目に付きます。たとえば、指摘事項が生じた原因として、 ④ Microsoft Excelその他のソフトでグラフ化したものをもとに、図をMicrosoft Power PointやAdobe Illustrator等の作画ソフトで描く過程で生じたもの(作画ソフトにコピーしたものを貼り付けずに、最初から手作業で描画したもの)(引用元:22報論文に関する調査報告書 太字強調は当サイト) ソフト間のコピーの際にグラフがずれたというだけでなく、コピーすらしていなくて手作業でグラフを描いていたものもあるというのですから驚愕させられます。小学生じゃあるまいし、研究者としてトレーニングを受けてきた人間が、いや、普通の高校生や大学生であっても、こんな馬鹿げたことはやらないでしょう。これは「研究者としてわきまえるべき注意義務を著しく怠った」ものであり、これが研究不正に認定されないというのは、信じがたいことです。PCを用いて実験データをグラフ化することが研究者の常識である以上、「手作業でグラフ作成=データでっちあげ」以外の解釈が自分には思い浮かびません。夏休みの宿題は全部やったけど、登校途中に全部ドブに落としてなくしたと言い出した小学生の言い訳をやさしく認めてあげた先生みたいで、大人が思いつかない言い訳を繰り出す小さな子供相手なら良いのかもしれませんが、プロの研究者相手に何やってんの?という話です。 ちなみに、ソフト間のコピーの際にグラフがずれたという言い訳にしても、グラフがずれるとわかっているのならそのような操作自体が不適切だというだけで、まったく正当化されません。グラフ作成と論文用の最終の図作成までを一つの統計ソフトを用いて行なえば済むだけの話です。エクセルとパワーポイント以外のソフトが買えない貧乏ラボならまだしも、何億円もの研究費を得ている東大医学部のラボで、こんな言い訳は通用しないでしょう。 オリジナルデータの数値に基づきエラーバーをひくと、エラーバーがグラフのY軸の上限値を超えてしまうという場面で、エラーバーの上端をY軸の上限値にとどめてしまった (引用元:22報論文に関する調査報告書 太字強調は当サイト) また、エラーバーがグラフのY軸の上限より大きくなったら、単純にY軸の上限を上げればいいだけの話で、勝手にエラーバーを短くする(=実験データの改竄)など有り得ません。これも、「研究者としてわきまえるべき注意義務を著しく怠った」とみなすべきでしょう。 数値の入力ミスという説明に関しても、 (6)⑥ グラフ作成の前提作業として、オリジナルデータの数値をグラフ作成ソフトに入力する過程において、誤った数値が入力されたもの 正しいデータに基づき作成された図と誤ったデータが入力されて作成された図とを比較したところ、論文の結論に影響を与えるような大きな「ずれ」ではないことが確認された。したがって、著者らの行為に、不正行為としての改ざんはない。(引用元:22報論文に関する調査報告書 太字強調は当サイト) ”大きな「ずれ」はない”という曖昧な表現をしており、正しいデータで再計算したときに、有意差があったのかなかったのかという疑問にきちんと答えていません。逃げ道を探したような日本語になっています。「論文の結論に影響を与える」かどうかと、「研究不正の有無」とはまったく別の次元の話であり、「著者らの行為に、不正行為としての改ざんはない」という結論を導く根拠には全くなりません。この説明はゴマカシもいいところです。誤った数値を入力することと、数値をでっち上げることとの区別は第三者にはつきませんから、万人が納得できるような具体的で詳細な説明があってしかるべきです。 そもそも、これらの説明がどの論文のどの図に該当するのかすら公表されておらず、「不正行為」と「不正とまではいえない行為」とをごちゃまぜにして誤魔化している可能性があります。東大の発表のやり方に関しては、なんといってもこれが一番深刻な問題です。なぜなら、記者会見での説明や配布する報道資料には程度の軽い事例の詳細だけ代表例として示しておけば、いくらでも不正の程度を印象操作できてしまい、もはや第三者には判断のしようがないからです。全ての指摘箇所に関する個別の説明がない限り、報告の責任を果たしたとはいえません。もっと強く言うなら、「個別の説明がない=隠蔽している」ということです。 部局調査においては、実験ノート、オリジナルデータが全部又は一部失われた場合であっても、関連する実験の実験ノートその他のデータ・記録の存在から論文の内容に近い実験が行なわれていることが確認された。部局調査の結果をふまえ、調査委員会は、全ての論文について、実験は実施されたものと認められ、本件においては捏造はないと判断した。(引用元:22報論文に関する調査報告書 太字強調は当サイト) 実験ノートやオリジナルデータが確認できていないものがあるにもかかわらず、「全ての」論文について実験は実施されたものと認められるというのは、論理的に破綻していて呆れてものも言えません。「実験ノートが存在しない」=「捏造の可能性が生じている」と考えるべきです。「論文の内容に近い実験が行なわれていること」など、捏造でない根拠にはまったくなりません。「論文の図と同一の条件で行なわれて同一の結果が得られた実験だが論文の図には使われていないもの」なら、捏造の疑いを晴らすことになりますが、近い実験という言葉も曖昧で意味不明ですし、その実験結果と疑惑のある論文の図の示す内容との関連性が説明されていない以上、この報告書の文面はまったく意味をなしません。論文では有意差が出たという結論だが、実験ノートに残っていた「関連する」実験結果では有意差は出ていないという場合も、この報告書のこの説明に該当してしまうわけですから、大きなゴマカシがあります。捏造の疑いを晴らす根拠がまったく示されていないにもかかわらず、捏造はないと判断しましたとムチャなことを言っています。   論文の図に示された数値が真正なものかどうかに関して言えば、著者らは、 指摘事項のうち論文のグラフに関する指摘については、著者らに対し、まずは申立者の指摘する、「グラフやそこから再現される数値が不自然である」という点についての意見を求めた。また、オリジナルデータの有無と、これが存在する場合には再現データとオリジナルデータとが一致しているか否かの確認を求めた。その結果、著者らの回答のほとんどが、「雑誌に掲載された論文の図及び再現データ値を確認したところ、申立者の指摘する事象がみられた」というもので、また「再現データとオリジナルデータは一致していない」というものであった。 (引用元:22報論文に関する調査報告書 太字強調は当サイト) 真正ではないと認めています。論文の図の示すものが、実験で得られた数値ではない(=つまりデタラメ)と論文著者ら自らが認めているのなら、論文の修正や撤回が直ちに行われるべきであり、1年以上も放置というのは誠実さに欠けます。これらの論文がいまだに「生きている」ということは、彼らはこれらの出鱈目な図表の論文業績に基づいて今後さらに何億円もの巨額の研究費を獲得していくことができるわけで、放置などもってのほかです。 報告書の大部分を墨消しして隠すなど、とんでもない話ですが、読める部分をざっと見ただけでもこれまで述べたように矛盾に満ちた報告書になっています。科学者である調査委員が作成した報告書にもかかわらず、非科学的で、論理もへったくれもない、国語的にも意味不明な、読んでいて痛々しくなる言葉の羅列にしかなっていないのは、一体どういうことでしょうか?私の個人的な仮説ですが、外部調査委員らは東大執行部からの要請により、不正があるにもかかわらず不正なしという結論ありきで無理やり報告書を作成させられたから、こんな恥ずかしい報告書になったのではないかと想像します。 調査報告書は、本来、指摘された論文の図ひとつひとつに関して、オリジナルデータの有無や論文データとの一致・不一致、有意差の有無の計算などを報告すべきであり、その情報がないと研究不正の有無の判断が研究者コミュニティにはできません。調査報告書の本文をウェブ上で公開しなかったり、調査報告書の本文のほとんどを黒塗りにしてしまう行為は、「隠蔽工作」にしか見えませんが、東京大学執行部の人たちはいったい何を隠蔽したいのでしょうか? 22報論文に関する調査では、東京大学分子細胞生物学研究所(分生研)の不正疑惑と、東京大学医学部の不正疑惑に関して、別々の調査委員会が立ち上げられて、それぞれ理学系の先生と医学系の先生が調査委員長を務めました。分生研の調査が極めて厳格、公正に行なわれたことは報道などからわかります。それに比べると、医学系の調査は「不正ではないから報告書は公開しない」という屁理屈で逃げ切ろうとしているようにしか見えません。黒塗りになっていないわずかな部分を見るだけでも、医学系論文の杜撰さ、でたらめぶりがわかります。理学系研究者も医学系研究者も同じサイエンスという土俵で生きており同じ学術誌に投稿する以上、同じモラルスタンダードが適用されるべきです。医学部に所属する研究者だけは、実験データと無関係なグラフを手作業で作っても研究不正とみなされないなど、絶対にあってはなりません。分生研の調査委員会が行なった調査と同じ厳格さをもって、医学系疑惑論文の全ての調査をやり直すことが望まれますが、まずは、東京大学は報告書の全文を包み隠さず直ちに公開し、研究者コミュニティによる判断を仰ぐべきです。   以下、「22報論文に関する調査報告書」(スキャンされた画像)の一部を手入力で写したもの。ただし、■■■■は墨消しの部分があること示す 第3.調査結果(医学系研究科関係) 1.はじめに(調査の概要) 医学系研究科関係の調査について、調査委員会は、部局調査で認められた事実を前提に、不正行為の有無の判断を行なった。その調査結果は次のとおりである。 2.指摘事項の概要 まず、申立者のしてきする事項については、大きく次のように整理できる。 A)グラフのエラーバーの長さや位置、点の配置等の不自然さ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ B)「再現データ」(数値)の不自然さ …

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現代ラボ用語の基礎知識

ラボでは当たり前に使われている言葉でも、一般の人には新鮮に響くことがあるようです。そんな、ラボ特有の言い回しをまとめてみました。(生物系のラボ。随時追加、変更あり) あ アクセプト【accept】投稿した論文が受理(掲載許可)されること。「リバイスに1年もかかったけど、やっとアクセプトされたよ!」「おめでとう!」 アクティビティ【activity】いい論文をコンスタントに出している状態。「あのラボはアクティビティが高いね。」 あてうま【当て馬】採用される人が予め決まっている公募の面接に呼ばれる他の候補者のこと。「東○大に面接に呼ばれたんだって?」「どうせ当て馬だと思うけど、しっかり準備して行くよ。」 あとがない【後が無い】①研究職の任期が切れる寸前だが、次の職がまだ決まっていない状態。「この論文、絶対通ってくれないと。俺、後が無いから。」 ②出すジャーナルを下げすぎて、もうこれ以上下げられない状態。 「サイレポにも蹴られて、もう後が無いよ。」「大丈夫、ジャーナルなんて、ほかにいくらでもあるから。」「いや、俺もう、後がないから。」 あれ、どうなった?【あれ、どうなった?】何も考えていないボスが、学生に進捗状況を聞くときに使う、いい加減な言葉。「おい、あれ、どうなった?」「今、実験している最中です。」「おお、そうか!」 「あれ、どうなった?」「あれってなんですか?」「あれだよ、あれ、ほら、その‥。」 い いいしごと【いい仕事】雑誌のインパクトファクターが、その雑誌の個々の論文の価値を示すものではないという批判は常に存在するが、現実的なこととして、インパクトファクターの高いジャーナルに出た論文や人を高く評価する傾向が多くの人に見られる。そのため、「いい仕事=いい論文」と、同義語のように用いられることが多い。「これはきっといい仕事になると思うよ。」「彼は凄くいい仕事をしていてね。」 いいとこねらう【いいとこ狙う】トップジャーナルへの掲載を目指すこと。「これなら、いいとこ狙えるんじゃない?」 イエローチップ【yellow tip】ピペットマンで200マイクロリットルまでを測りとるためのチップ。もともと純正のものは黄色だったことから。他社製品であろうと、色が何色であろうと、イエローチップと言えばこのサイズのチップのことを意味する。「昔は、貧乏なラボでは、イエローチップを洗って再利用していたんだぞ。」「昔は、ラボに新しく入って最初の仕事は、イエローチップを(ラックに)詰めることだったんだよ。」「いつの時代だよ?」 いきのこる【生き残る】アカデミアにおいて大学教員などのパーマネントの研究職を得ること。あるいは、任期付きであっても順調に次の職を得るか任期更新が行われ、コンスタントに仕事ができている状態。サバイブする、と同義。「なんとか生き残ることができた。」 「もう自分は生き残れないと思う。」 「今の時代、生き残るだけでも大変だね。」 いちゃもん【イチャモン】投稿論文に対する差読者のコメントの中で、差読者が、実行不可能な実験などを著者に要求してくること。「(査読コメントに目を通した後、)こんなの、イチャモンだよ!(怒)」 いっぱつアクセプト【一発アクセプト】リバイスを経ることなく速やかに投稿論文が受理されること。「ジャーナル下げたら、一発アクセプトだった。」 いわれたことだけ【言われたことだけ】①最近の若者が、言われたことだけしかやらないこと。②論文投稿中の研究者が、リバイスの際に、差読者に言われたことだけしかやらないこと。「原稿の修正や追加実験は、言われたことだけにしといたほうがいいよ。」 インパクトファクター【impact factor】雑誌のランキングを決める数値指標で毎年算出される。「PLOS ONEのインパクトファクターって今いくつくらいだっけ?」 う うえから【上から】少しでもインパクトファクターの高いジャーナルに論文を出すことを目的として、駄目もとでトップジャーナルからから順番に投稿を試みること。最初にネイチャーやセル、サイエンスのどれかに投稿し、リジェクトされた場合には、同じ出版社の姉妹紙でもう少し通りやすいところや、あるいはインパクトファクターなどを考慮して他の出版社の学術誌に、ランキングを下げながら順にトライしていくこと。 「(この仕事、)どこに出すの?」「上からトライしてみようかな、と。」 うつくしい【美しい】研究者が用いる場合には、美しい女性でも、美しい絵画でもなく、美しい「ストーリー」を持った研究成果を指すことが多い。「今週のネイチャーのあの論文、美しいストーリーだね。」”Beautiful work! Congratulations!” うぷす【Oops!】オッと。アメリカ帰りの研究者が、何かちょっとした失敗をしたときに思わず発してしまう言葉。英語がさほどしゃべれるようになっていなくても、感情を表す言葉だけは、なぜか口をついて出てくる。ただし、発音は日本語化している。「うっぷす。(試薬を)入れる量、間違えた!」 え えいぶんこうせい【英文校正】論文原稿の中に、ネイティブに意味が取れない箇所がないかチェックすること。「違う意味に直されちゃったよ。」「誤解される表現だったんじゃない?」 エディターキック【editor kick】査読にまわされずに、編集者や編集部の判断で蹴られること。「だめもとでネイチャーに出したら、あっさりエディターキックを食らった。」 エネルギー【energy】研究を行なうために必要な情熱やエネルギーのこと。「ボスと話をすると、エネルギーを吸い取られちゃうなあ。」 エラーバー【error bar】平均値を表す棒グラフなどにおいて、標準誤差や標準偏差などを示した線分のこと。通常は、統計処理ソフトで自動的に計算・描画が行なわれる。例外的に、東京大学医学部においてはエラーバーの作成は手作業で行なわれるのが通常である(出典)。「エラーバー、もっと短くならないの?」 えぬ【n】実験サンプルの例数。「nを増やせば、有意差出るかも。」 エタチン【エタ沈】エタノール沈殿の略。DNAの精製過程で、塩とエタノールの混合液中でDNAを沈殿させるステップ。「行こうよ。エタ沈で止めておけばいいじゃん。」 エッペン【Eppendorf tube】エッペンドルフチューブの略。生物系のラボで最も多用される1.5mlチューブのこと。本来はエッペンドルフ社の製品を指すが、高価なため安価な他社製品を使うラボが多い。しかし、どの会社の製品であっても1.5mlチューブのことをエッペンと呼ぶことが通常になっている。「エッペンちょっと分けてもらっていい?」「エッペンなくなりかけているから、次、注文しておいて。」「このラボ、エッペン、エッペンドルフのを使ってるんだ?金持ちだね。」 お おかね【お金】研究費のこと。「あのラボはお金がないから、(そこに進学するのは)やめといたほうがいいよ。」 「今年はお金があまりない。」 「金持ちのラボ」 …

NHKスペシャル『追跡 東大研究不正』

2017年12月10日(日)午後9時00分~9時49分に、NHKスペシャル 追跡 東大研究不正 ~ゆらぐ科学立国ニッポン~ が放送されました。NHKの番組説明を読むと、研究不正問題の背景となる日本の科学政策の問題点に関して批判的なメッセージを伝えることが一番の狙いのようです。 激化する国際競争の中で変容してきた科学研究費の配分を巡って、翻弄される科学者の姿。そして、科学技術立国を掲げ、研究成果を国の発展につなげようという施策が、皮肉にも、科学を停滞させかねないという現実。(NHKスペシャル 追跡 東大研究不正 ~ゆらぐ科学立国ニッポン~)   視聴者は、この番組をどのように見て、メッセージをどのように受け取ったのでしょうか?番組に関するツイートをいくつか紹介します。 激化する研究費獲得競争が研究不正の要因なのか? 流し見での感想だけど、 1.民間では競争は余りにも普通で、大きな受注を逃して待遇が悪化したり、無能力等を理由とした解雇もあり得るのに、何故、研究者は競争をしない方が良い結果が得られると確信しているのか? nhk 追跡 東大研究不正~ゆらぐ科学立国ニッポン~ https://t.co/oH9DG0Lrpd — a.o.kitty 🐾 (@anger_of_kitty) 2017年12月10日 研究費獲得が競争的になったから研究不正が起こったというNHKスペシャルの内容だけど、それまで競争が少なくて国からお金もらえたというのがおかしくて、競争があって当然でしょう。世間では知られてないだけで、教授は資金集めが最も重要な仕事。 — 肥和野 佳子 (@lalahearttwit) 2017年12月11日 研究費がなくても不正をしない研究者は大勢いる。というか、それが大多数。ここで不正を報じられたり、これまでに不正をしたと世間で知られた研究者は殆どが数億単位の研究費を持っていた極めて特殊な研究者です。研究費獲得競争の激化にだけ不正の原因を求めるのはどうにも得心しない。#東大研究不正 — Koichi Kawakami (@koichi_kawakami) 2017年12月10日 研究費獲得のために不正するなら、他の多くのラボでも不正が見つかるだろ?でもそうじゃないってことは、仮定が間違ってるんだよ。不正するやつはするし、しないやつはしない — takanzai (@takanzai) 2017年12月10日 昨夜のNHKスペシャルを見て、指導教員が常々言っていた「不正をするやつは辞めろ」を思い出した(実際はもっと過激なワードですが)。私は綺麗事をそのまま受け入れていられる修士の段階で止めておいて幸せだったのかもしれない。(悠)#東大研究不正 — …

東京大学医学部不正疑惑論文調査の懐疑点 一私見 ~医学部の不正調査をやり直すべき~

報道によれば、東大医学部の論文の図のほとんどに関して、残されていたオリジナルデータと論文の図で示されたデータとは一致しなかったという事実を、調査委員会も認めている。また、エラーバーが手作業で作成されたことも、調査委員会は認めている。ここまで聞けば、論文データは捏造されていたと理解するのが、常識的な感覚であろう。それにもかかわらず、東大の調査委員会は何の根拠も示さずに、捏造ではなかった、だからこれ以上の説明はしないと言ってお終いにした。「へ?」ってなもんである。 “生物学および医学では、さらに手作業を加えることが通常に行われている。 ” わけないじゃん!捏造ラボ特有の習慣を、一般化するな! 論文不正の告発を受けた東京大学(3) 告発通りに図版の誤りはあったが……(詫摩雅子) – Y!ニュース https://t.co/DFFSrPAivF — 日本の科学と技術 (@scitechjp) 2017年8月13日 東大執行部は気が狂っているのか?この気違いじみた報告書を受け取って良しとした文科省やAMEDもまた、まともに対応したとは到底思えない。(←ていうか、どうせみんなグルだろ?) 捏造ではないということを誰もきちんと説明できないような、デタラメな図表だらけの論文が複数指摘されたにもかかわらず、東大は、「不正行為はない」 の7文字をウェブ上に掲載しただけである。報告書の本文すら一般国民には公開していない。記者会見当日に報道関係者には配布したのかもしれないが、大手メディアは分生研のことばかり詳細に報じたので、医学部の疑惑がどうなったのかについては、一般の人間には知る由もない。年間何百億円も税金を使っている東大が、このような重大な疑惑に関する調査報告書の本文すら国民から隠すのは無責任極まりない。矛盾に満ちた支離滅裂な内容だからきっと見せたくなかったのだろうと想像する。 情報が乏しいとはいえ、断片的にでもネット上で報じられたこれらの事実を前にしたときに、現東大執行部が医学部の研究不正を隠蔽したという以外の受け止め方が、どうしてできようか。もっといえば、東大執行部だけでなく、それを黙認した文科省などの監督省庁、つまりは、日本が国を挙げて研究不正を公認したという見方をする方が現実に即しているのかもしれない。できれば否定したい考えではあるが、これを反証する材料が見当たらない。恐ろしい話である。こんなことが今の日本で起こり得るのかと考えると、本当にゾッとする。 ウソであってほしい、自分の錯覚であってほしいと思うが、ネイチャーのウェブサイトに行けば、全てのグラフのエラーバーが全部デタラメという論文がそこに、まるで何事もなかったかのような顔をして今日も存在しており、この異常な世界の中で自分が生きているという現実を、再確認させられる。Ordinary_researchersはそれぞれの雑誌編集部にも告発内容を伝えているので、ネイチャーなど雑誌の編集長はこの状況を理解しているはずなのだが、なぜここまであからさまな論文に関してすら即刻対処しないのだろうか。 東大医学部の疑惑論文、エラーバーすら使い回しって。。これで不正と認定されない可能性って0.0何パーセントくらいあるんだろうか? https://t.co/bhYH3q0wbr pic.twitter.com/I5vNyFNHD9 — 日本の科学と技術 (@scitechjp) 2017年6月21日 エラーバーを手作業で適当にくっつけたような、真正でないデータの図表からなるネイチャー論文等の業績に基づいて、この先さらに何億円、何十億円もの研究予算がこれらのラボに注ぎ込まれるのかと考えると、怒りが収まらない。(←てか、コレ、犯罪じゃね?) 科研費申請の時期に研究計画調書がなかなか書けなくて、ウンウン唸りながらも頑張っている大勢の研究者達が、滑稽に見えてくる。 事の重大さは、個人が暴走したSTAP細胞事件の比ではない。にもかかわらず、この重大事件を取り上げた新聞や大手メディアは今のところ皆無である。日経サイエンス10月号が、この医学部不正疑惑問題への東大の対応に関してつつましやかに疑問を呈したのが、かろうじて目に留まっただけである。このような深刻な事態に異議を唱えずに、日本の科学研究が失速していると嘆くのだとしたら、実に愚かなことである。捏造ラボが巨額の研究資金を使ってさらに捏造論文を出し続けても、科学の進展に全く寄与しない。税金の無駄遣いだし、捏造ラボ内のまともな大学院生や研究者らの人生を破壊するし、研究者コミュニティに対しては大きな迷惑となるだけである。医学系の論文の場合は、一般の人が大きな不利益を被る可能性もある。 誠実な研究者が何年も努力してやっと一本の論文を仕上げている間に、実験結果に有意差が出ようが出まいがエラーバーを短く見せかけたグラフで論文を出して、研究費も職も取っていくような人たちが、咎められずにいる。普通の人間が地道に研究して論文業績を多少積み上げたところで、任期が切れてもその先に職はなく、それでお終いである。今の日本では、研究不正を働いた人間のほうが高い確率で生き残ることができるんじゃないか?若者たちがこんな世界に来たいと思うわけがない。真面目に働いている大多数の研究者を見たときに職業として成り立っていないうえに、これほど研究不正が蔓延っている状況とあっては、若い人たちに研究職を勧めることができない。 「研究者もひとりの人間ですので、2年後にクビになる身分と、クビにならない身分では、研究の質も変わってきます。」(梶田氏) 日本のアカデミズムは危機にあるのか――ノーベル賞受賞者も警鐘 https://t.co/IxphZ0VIX1 #Yahooニュース — 日本の科学と技術 (@scitechjp) 2017年10月5日 Ordinary_researchersに指摘された東大医学部の論文が捏造であろうことや、東大の現執行部がその研究不正を隠蔽したというのは、自分の仮説に過ぎない。しかし、図表のおかしさを指摘された論文著者らが1年以上もダンマリを決め込み、釈明も論文の訂正も何もせずにこれらの論文を放置してきたという事実を見れば、うっかりミスだったのだろうと善意に解釈することは、自分には到底できない。東大の支離滅裂な説明や、調査書本文をウェブ公開せずに逃げ切ろうとする姿勢などをみるにつけ、自分の仮説が正しいのだろうという思いが強まる。 本当に研究不正がなかったのであれば、捏造不正の疑いを晴らすために、指摘された論文ごとに、さらに、指摘された実験の図ひとつひとつについて、実験ノートの存在の有無(その図のもととなった実験が本当に行なわれたのか)、実験データの数値(論文で示された数値と一致するのか)、有意差のありなし(論文で示された有意差が本当にあり、論文の結論が支持されるのか)、図表の不備が生じた理由などの報告があってしかるべきである。なにしろ、通常の研究者の目から見たらまっクロだよねという図の指摘なのだから、そのくらいのことをしない限り、データ捏造の疑いは晴れない。     分生研の不正疑惑を厳格に調査したのと同じ基準に則って、医学部の不正疑惑は調査をやり直すべきである。東大の医学部不正疑惑に関する報告(2017年8月1日)は、実験ノートはあったりなかったり、確認できたオリジナルデータの数値は論文の図とはほとんど違ってた、でも似たような実験はしていたみたいだから、不正はないと結論するという、およそサイエンティストがまとめた報告とは思えないような支離滅裂な代物である。東大は、生物学および医学の分野では、数値処理ソフトで描いたグラフに手を加えることが通常だと言う。なんのジョークだ、それ?あまりにも恥ずかしすぎて、報告書本文がウェブに掲載できないのも当然かと思う。 東京大学の執行部は、東大医学部不正隠蔽仮説が反証されるような材料がもし存在するのであれば、速やかに開示すべきである。それは、日本一の研究大学を自認する東京大学が研究者コミュニティや納税者に対して負うべき当然の責任であろう。研究不正が存在したのであれば、不正の隠蔽に加担した者も含めて、行為に見合うペナルティを受けるべきである。研究の世界を無法地帯化するのは、本当に勘弁願いたい。   同じカテゴリーの記事一覧