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まだ紙の実験ノート使って研究してるの?【電子実験ノートの浸透】

アカデミアにおける電子実験ノートの普及率 電子実験ノート(Electronic Lab Notebook; ELN)を大学の研究室(生命科学系)で見たことはありませんが、いまどき、製薬企業では通常、電子実験ノートが使われているのだそうです。有機合成を行う化学系のラボだと大学でも導入が進んでいるのかもしれません。 アカデミアにおける電子ノートの浸透の度合いは、「研究データのモニタリング(QC)及び生データの保管に関する調査」(PDF)に、アンケート調査結果として示されています。調査期間は平成 29 年 2 月 23 日から6 月 30 日、調査対象は、AMED の研究資金を多く受けている 70 の国内大学・研究機関の270 の学部・研究科・センター等に所属する、AMED から研究資金の配分を受けている研究室主宰者たち。 結果は、「誰も使用していない」、「ごく一部」との回答を合わせると 7 割を超えており、電子実験ノートはあまり使用されていないという状況だそうです(下図)。 自分は電子実験ノートの使用者に会ったことがないので、むしろこの数字(3割弱が電子実験ノート使用)を「意外に多い」と感じました。有用性が非常に高い化学系のソフトウェアとして電子実験ノートが開発された経緯があるために、化学分野での普及に比べると生物系ラボでの電子実験ノートの利用はまだまだといった状態なのでしょう。 But in the less digitally aligned areas of biology, the shift from paper to electronic laboratory …

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実験ノートの書き方

  2019/06/02    研究のやり方

以前、研究者として成功するための実験ノートの付け方を記事にしました。 ⇒ 大きな差を生む小さな習慣:実験ノートの効果的な書き方 それ以前の話として、もっと基本的な実験ノートの書き方に関して纏めておきます。 実験ノートをつける必要性 以前STAP細胞の事件で実験ノートの重要性が注目を集めました。論文報告した内容に再現性はあるのか?再現するためにはどんな実験条件がCRITICALなのか、そもそも本当に著者は実験したのか?などなどあらゆる疑問や疑惑に答えるのが実験ノートです。再現性がないことを論文報告するわけにはいかないので、自分で実験を再現するためにも、他人に再現してもらうためにも、実験条件や結果の記録を残すことが必要になります。   どんなノートを使うべきか 実験ノートには、実験をちゃんと行って、そのような結果を得たという物的証拠の役割があります。そのため、あとからページを差し込めるようなバインダー式のもの(ルーズリーフ)は不適切です。データを保存するためのクリアファイルを後から差し込めたりする利便性からルーズリーフのノートを使う人がいまだにいるかもしれませんが、やはり時代の要請に合わせて現在の公的なガイドラインに従うのが良いでしょう。研究不正に関してあらぬ疑いをかけられたときに、証拠として実験ノートを即時公開できるくらいにきっちりとしたほうが良いと思います。   コクヨや他のラボノート 研究機関やラボによっては、研究員に同じラボノートを使わせるところもあります。5年、10年(あるいはそれ以上)保存する必要があることを考えると、普通の大学生が使うようなキャンパスノートでなく、定番のコクヨのラボノートがお勧め。       実験ノートはプロジェクトごとに分ける? 違う種類の実験を同時並行して進める場合には、ノートを分けるべきかどうかという疑問が湧きます。自分は昔は分けていましたが、2つの実験が収斂して一つのプロジェクト(論文)になることもありますので、そうなると次の新しい実験はどっちのノートに付けるべきかと迷う状況も起こり得ます。自分の場合、ノートは一冊だけにしてただひたすら時間軸に沿って書くことに落ちつきました。   タイトル 日々の実験をどう管理するかよくよく考えたほうが良い事柄です。何年間にもわたって様々な実験結果が膨大なデータ量になったときに、いつのどの実験データが論文に使えるのかがわかりやすくなっていないと、論文の図をつくるときに手間取ることになります。図を作り直す必要が生じたときにいつでも元データに戻れること、そのときの実験条件が直ちにわかることが大切。   日付 実験ノートの日付は決定的に重要です。実験を始めた時刻や終了時刻なども書くと信頼性が高まって良いと思います。あとから予想外なこととして概日周期の影響が疑われないとも限らないので、実験した時刻を細かく書いておくことも有意義です。温度が影響する実験を室温で行った場合には、当然室温、(場合によっては湿度)なども重要な因子です。   実験目的 研究は紆余曲折を経て進展していくものなので、後から考えたときに、なぜその実験をその当時したのかがしばらくすると忘れたりすることがあります。ノートを見た瞬間に、実験目的がわかるように、きちんと実験ごとに目的を書く必要があります。   材料・方法、実際に行ったこと いつも使っている試薬キットを使う場合、細かいことを書く必要はないかもしれません。しかし、キットも改良版が出たりして何年か経つと条件が曖昧にならないとも限りません。できるだけ使った製品情報もわかるように記録した方が良いでしょう。一番大事なポイントは、論文を書く際に必要となる情報を全て記録することです。論文のMaterials and Methodsセクションに書く必要がないくらいのどうでもよい細かいことであれば、必ずしも書かなくてもよいでしょう。 しかし、実験が上手くいかなかった場合に、試薬のロットのせいではないかとかいろいろ気になることがでてきますので、詳細に記録するにこしたことはありません。 方法や手順に関しては、実験を始める前にノートに書き出しておくのが普通です。実験の手順は事前のノートに記しておいてからは実験を始めないと、最中にあれが足りないこれが足りないということになります。最初から最後まで実験を頭の中でリハーサルしておくことが必要です。実際に実験したときに思い通りに行かないこともあるわけで、うまくいかなかったことは、ことこまかにメモする必要があります。実験操作のちょっとしたことが結果に大きな影響を与えるかもしれないので、後から分析が可能なように、実験中に気付いたことや気になったことは何でも書き留めましょう。   実験結果 実験結果が測定装置から電子データとして吐き出されることも多いので、そのときのファイルの保存場所やファイル名と実験ノートの記録とが紐づけされていることが大切になります。 データの整理は、「年月日時刻」ー「動物などの個体番号」ー「調整サンプルの番号」ー「実験記録測定番号」などをしっかりと実験ノートに記して、PC上に蓄えられた電子データと対応付ける必要があります。有意差のありなしをいうときに、例数(n=いくつ)が問題になりますが、例数が、同じ調整サンプルを用いた実験回数なのか、動物個体数なのかでは全く意味が異なってきます。その辺が曖昧になるような実験ノート記録だと、記録としての意味を成しません。   実験結果に関する考察 実験ノートは実験の記録だけでなく、その実験をやったときの自分の頭の中の思考過程の記録でもあります。何を考えてその実験をしたのか、その実験結果を見てどう考えたのか、次にどんな実験をすべきだと考えてたのか、最終的にどんなストーリーの論文にまとめたいと思っているのかを書き記しておけば、数年後に見返しても、自分の辿ってきた道のりがよくわかります。 実験のやりっぱなしは、時間と労力の無駄です。実験データを解析して、実験結果をまとめて、考察までしっかり行うということを習慣づけることが大事。考察を毎回しっかりと行っていれば論文化までの道のりが最短になるはず。   …