日本の科学と技術

科学技術・イノベーション基本計画を読んだことはありますか?第7期科学技術基本計画の内容をClaudeが解説

科学技術・イノベーション基本計画を読んだことはありますか?

朝、ラボに着いて、昨日仕込んだ実験の続きにとりかかる。学生のデータに目を通し、論文のリバイスに頭を抱え、合間を縫って科研費の申請書を書く。気がつけば日が暮れている。多くの研究者にとって、毎日はだいたいこの繰り返しです。「日本の科学技術政策」などという言葉は、どこか遠い、霞が関の会議室の話に聞こえる。自分の仕事とは関係のないところで、誰かがやっていること。

ところが、今年応募する研究費の様式も、買ったばかりの装置を誰と共有しなければならないかも、書き上げた論文をいつ公開すべきかも、その「遠い話」の延長線上で決まっています。そしてその大元には、一冊の文書があります。

それは何を決めている文書なのか

科学技術・イノベーション基本計画。1995年の科学技術基本法にもとづき、1996年から5年ごとに閣議決定されてきた、国の科学技術政策の設計図です。今年(2026年3月)、その7回目にあたる第7期が決まりました。対象期間は2026年度から2030年度までの5年間です。

この計画が決めるのは、ほとんどすべてと言っていい範囲に及びます。5年間で国がいくら投資するか。競争的研究費をどう設計するか。大学をどう改革するか。博士課程の学生をどう支えるか。研究をどう評価するか。普段「決まりだから」と思って従っているルールの多くは、もとをたどればここに行き着きます。

裏を返せば、この文書を読むと、これから数年で自分の研究環境がどちらへ動こうとしているのかが、先に見えます。制度が変わってから「いつの間にこんなことに」と驚くのと、変わる前から方向を知っているのとでは、身の処し方がまるで違ってきます。

今回は、めずらしく率直に始まる

第7期は、かなりはっきりした危機感から書き起こされています。被引用数で上位10%に入る論文の数を国別に並べると、日本はかつて世界4位でした。それが直近では13位まで落ちています。「このままでは日本からノーベル賞は生まれなくなるのではないか」という巷の声が、計画の冒頭にそのまま引かれている。2025年の日本人受賞についても、いずれも1990年代に着手された研究の果実であり、現在の研究力を映したものではない、と冷静に距離を置いています。

そのうえで掲げられた目標が、10年以内にこのTop10%論文数で世界第3位、英独と肩を並べる位置まで戻す、というものです。13位からの3位。投資の目標も大きく、2026年度からの5年間で政府の研究開発投資を60兆円、官民あわせて180兆円に積み上げるとしています。漂っているのは、明らかに巻き返しの空気です。

問題は、その巻き返しが日々の研究の現場にどう降りてくるか、です。

研究費のかたちが変わる

第7期は、研究者の自由な発想にもとづく研究を支える土台を厚くする、という立場をはっきり打ち出しました。象徴的なのが科研費で、産学から倍増への期待が寄せられていることに触れたうえで、「大幅に拡充する」と書かれています。若手の挑戦的・萌芽的な研究、既存の学問体系を揺さぶる研究、国際性の高い研究に、重点を置くとされています。

実務面で見逃せないのが、科研費の全面的な基金化を進めるという方針です。基金化が進めば、3月末に予算を使い切るために慌てて消耗品を発注する、あの季節行事から解放され、年度をまたいだ自然な執行ができるようになります。煩雑な事務負担を減らし、それを研究時間の確保につなげる、と計画はわざわざ目的まで書き込んでいます。審査の分野硬直性を打破するとも述べられていて、分野の区分のはざまで損をしてきた融合的なテーマには、追い風になりそうです。

研究評価のものさしも見直されます。「国の研究開発評価に関する大綱的指針」を2026年度内をめどに改定するとし、その際、定量的な評価に偏りすぎないようにする、と明記されています。論文数とインパクトファクターだけで値踏みされることへの違和感は、多くの研究者が抱えてきたはずで、評価の軸がもう少し多面的になる可能性があります。あわせて、毎回ピアレビューを通すのではなく過去の実績に応じて配分する仕組みや、申請と審査の負担を軽くしながら不確実なテーマに投資できる仕組みも、試験的に検討されることになっています。

「研究時間が足りない」を、計画が認めた

研究者なら誰もが肌で感じてきたことが、今回ようやく公式の文書に書き込まれました。大学教員の職務に占める研究時間の割合は、2017年度の32.9%から2022年度には32.2%へとむしろ減っており、その裏で学内事務などの割合は18%から19.7%へ増えている。慣例的な会議や運営の負担が研究を圧迫している、と計画自身が認めています。

そのうえで掲げられた目標が、研究力を牽引する大学群で、教員の研究時間割合を50%以上にする(2030年度)というもの。これを実現する研究大学を20校以上にするとしています。手段として並ぶのは、会議の見直し、教員の役割分担の再整理、各機関が独自に設けてきた研究費ルールの改善など、地味だが現場に効く話ばかりです。所属先がこの数字を意識し始めれば、学内の会議体や事務フローに変化が及んでくるかもしれません。

「自分の装置」という発想が薄れていく

競争的研究費で機器を買ってきた人にとって、ここはいちばん身近な変化かもしれません。第7期は、研究設備を「所有」するものから「共有」するものへと、価値観を徹底的に転換すると述べています。機器の管理を個人から組織へ移し、競争的研究費の使い道を「機器の購入」から「利用料金の支払い」へとシフトさせる。購入にあたっては所属機関や配分機関で重複の有無を確認する。そして、取得額が1,000万円以上の汎用的な設備・機器については、その研究に支障がない限り、機関の内外への共用を促す、と数字つきで踏み込んでいます。

自分の研究費で買った装置を自分のラボに囲い込む、というやり方は、制度の側からじわじわと立ち行かなくなる方向です。もっとも、これは見方を変えれば、独立したばかりのPIが高価な機器に手早くアクセスできるようになる、ということでもあります。コアファシリティの整備や、研究大学を高速ネットワークでつないだ機器の遠隔利用も後押しされ、囲い込む側には逆風、借りる側には追い風が吹きます。

論文は、出した瞬間に開かれる

学術論文と、その根拠となるデータの即時オープンアクセスも、第7期の柱のひとつです。グローバルな学術出版社に対して大学や国研がまとまって交渉する体制づくりや、これまで機関ごとにばらばらだったリポジトリを日本全体で一体的に使える基盤へ整える、といった施策が並びます。公的資金で書いた論文は、出版と同時に公開されているのが当たり前、という方向へ寄っていく。投稿先の選び方も、掲載料の扱いも、データ公開の準備も、これまで以上に前もって考えておく必要が出てきます。

「支える人」にも、ようやく光が当たる

研究は、研究者だけで回っているわけではありません。第7期は、URAをはじめとする研究開発マネジメント人材、技術職員、データマネージャー、ファンドレイザーといった専門職の基盤がまだ弱い、という第6期からの宿題を正面から認めています。これらの人材を孤立した「点」として置くのではなく、組織として一括して処遇し、キャリアパスを整え、研究者・事務職員・専門人材が一体となって組織を動かす仕組みをつくる、と。研究者一人あたりのテクニシャンの数を倍にする目標も掲げられました。研究を支える側にとっても、足場が一段固まる計画になっています。博士課程の学生についても、経済的支援の充実と、入学者・学位取得者を2万人規模へという目標が示されています。

国際共同研究をするなら、知っておくべき変化

第7期には、もうひとつ、海外と組んで研究をする人に直接かかわる新しい論点が入っています。研究セキュリティです。経済安全保障の観点から技術流出を防ぐ必要が特に高い研究を「特定研究開発プログラム」と位置づけ、共同研究の相手を事前に確認したうえでリスクを抑える、という諸外国並みの手続きが始まりつつあります。手順書はすでに2025年12月に公表されました。海外機関との連携やデータの国外移転を伴う研究をしているなら、所属機関の窓口やルールを早めに確かめておくと、後で慌てずにすみます。

このほか、AIを科学研究そのものに組み込む「AI for Science」の推進、重点的に投資する技術領域の絞り込み、産学連携やスタートアップの強化など、計画は幅広い柱を立てています。が、それらは少し上流の話。まずは、上で見てきた研究費・時間・機器・論文・人といった、足元の変化を押さえておけば十分です。

読まなくても、研究はできる。けれど

正直に言えば、この計画を一度も読まなくても、実験はできるし論文も書けます。だからこそ、ほとんどの研究者は読まないまま過ごしている。

でも、計画書は見かけほど無味乾燥なものではありません。そこに書かれているのは、数年後にあなたの研究費がどう配られ、研究時間がどう扱われ、装置が誰のものになり、論文がいつ公開されるか、という、きわめて具体的な未来です。全文を読み通す必要はありません。第1の柱「科学の再興」と、巻末の指標の一覧。その二つに一度目を通しておくだけで、これから制度が動いたときに、「ああ、あれのことか」と腑に落ちる瞬間が、きっと何度か訪れます。

研究環境は、向こうから勝手に変わってきます。せめて、どちらへ変わろうとしているのかくらいは、知っておいて損はありません。

執筆:Claude

参考

  1. 第7期科学技術・イノベーション基本計画(令和8年3月27日閣議決定)
  2. 科学技術基本計画及び科学技術・イノベーション基本計画
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