日本の科学と技術

地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ(総合振興パッケージ)とは?

研究費は、科研費の基盤研究(C,B,A,S)のようなボトムアップ型で研究者個人が応募するもの、研究者個人で応募できるが研究分野やテーマが定められたトップダウンのもの、AMEDのようにピンポイントで研究者にくる(?)トップダウン型などいろいろありますが、大学全体を対象とした支援というものもいろいろあります。選択と集中の極みともいえるのが、10兆円ファンド/国際卓越研究大学でしょう。国際卓越研究大学制度の公募はすでに令和4年12月23日(金曜日) から開始されており、公募締切が 令和5年3月31日(金曜日)15時00分 となっています。

  1. 国際卓越研究大学制度について(文部科学省)

国際卓越研究大学に応募するのは日本のトップレベルの大学を自負する大学に限られるでしょう。東京医科歯科大学と東京工業大学が合併してできる東京科学大学も応募予定みたいです。

  1. 新大学の名称は「東京科学大学」 東京工業大学と東京医科歯科大学|TBS NEWS DIG TBS NEWS DIG Powered by JNN 両校は統合のうえ、「国際卓越研究大学」の認定を目指していて、認定されれば政府の10兆円規模の「大学ファンド」から多額の支援を受けられるようになります。

これから研究者を目指す高校生は、国際卓越研究大学に選ばれた大学(選ばれそうな大学)に入ったほうが、研究者への近道になるかもしれません。研究を取り巻く環境の大学間の格差は、今後ますます大きくなっていきそうです。

さて、そんな世界のトップレベルの大学と伍していける大学とまではいかない大学はどうすればいいのでしょうか。そんな大学を対象とした研究支援として、「地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ」なるものが、令和5年度(2023年度)にできるらしいことを知りました。

地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ(総合振興パッケージ)

G型大学とL型大学の思い出

自分はこの国際卓越研究大学と地域中核・特色ある研究大学の二本立ての支援体制を知ったときに、以前、巷で騒がれた、グローバル人材のためのG型大学とローカル大学(L型大学)の論議を思い出してしまいました。

  1. G 型/ L 型大学と新しい階級制度 山本奈生 佛大社会学 第39号(2014)
  2. 第40回「G型大学、L型大学」論の炎上を受け、議論していくべきこと 濱口桂一郎独立行政法人労働政策研究・研修機構主席統括研究員
  3. G型大学・L型大学(日本の人事部)「G型大学・L型大学」とは、それぞれグローバル(Global)型、ローカル(Local)型の大学という意味で、2014年10月に開かれた文部科学省有識者会議において、経営共創基盤CEOで経営コンサルタントの冨山和彦氏が提言した新しい大学教育のあり方を示す言葉です。
  4. G型とL型って? 大学も人材もこれからは二極化が進んでいく!?2015.3.31 スタディサプリ
  5. 東大だって「L型大学」だ!真の「G型大学」が存在しない日本で教えるべき「経済」とは 2014.10.27 現代ビジネス

まあさすがにG型、L型を復活させるものではないのでしょう。GとLにわけるのではなくて、研究大学の層に厚みを持たせる趣旨のようです。

総合振興パッケージの趣旨

  1. 地域中核・特色ある研究大学の強みやその特色を伸ばすための取組について(最終まとめ)—我が国の大学の研究力及び国際競争力強化への7つの提言— 令和4年 10 月
    国立大学協会 教育・研究委員会
  2. 「地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ  の狙いは?」文部科学省 科学技術・学術政策局 産業連携・地域振興課 拠点形成・地域振興室 室長 梅原弘史  Between306

上の Between誌の文科省の説明は、語り口が平易なので非常にわかりやすいと思いました。

総合振興パッケージの支援内容

日本の研究の「厚み」に貢献する大学としては、「地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ(総合振興パッケージ)」で選ばれた場合に、何にをお金を使うことができるのかがきになるところでしょう。下の日刊工業新聞社ニュースイッチの記事は、説明がわかりやすいです。

文部科学省は2023年度から、研究の特色を際立たせるため、戦略的に経営リソースを重点配分する国公私立大学の取り組みを支援する。‥ 文科省は「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業」として研究力強化と経営改革をセットで後押しする。例えば材料系が強い中規模・中堅大学には、同分野の競争力を高めるため全学の経営戦略に基づき、メリハリをつけてリソースを配分してもらう。‥ 文科省は新事業を通して、各大学が強みに基づく共同研究起業を大幅に増加することに加え、企業や自治体など外部からの資金獲得につなげる。新事業の予算は研究者・研究支援者の雇用研究設備・機器の共用体制構築国際ネットワークの確保など幅広く使えるようにする。(地域中核大学を研究×経営改革で支援、文科省が新たな一手 2022年08月24日 ニュースイッチ)

つまりは、自分の大学の強味をさらに伸ばしなさいということのようです。

総合振興パッケージの支援対象

事業内容、支援対象はというと、「地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ~改定に向けた検討状況~ 科学技術・イノベーション推進事務局令和4年12月23日」に説明がありました。

支援対象:強みや特色ある研究、社会実装の拠点(WPI、共創の場等)等を有する国公私立大学が、研究力強化に有効な他大学との連携について協議のうえ、研究力の向上戦略を構築した上で、全学としてリソースを投下する取組(単独大学での申請及び国際卓越研究大学への申請中の大学を含む申請は対象外)※ 5年目を目途に評価を行い、進捗に応じて、必要な支援を展開できるよう、文科省及びJSPSにおいて取組を継続的に支援(最長10年を目途)

総合振興パッケージを読んで:極めて個人的な感想

上の説明を読んで自分はかなり驚いたのですが、結構、応募の制限が厳しいようです。一つの大学が単独で出せるものではないんですね。しかも、WPIや「共創の場」に採択された大学が支援対象(の例?)として挙げられていますので、選ばれし者たちをさらに支援するという意図なのでしょうか。結局のところ、選択と集中の路線なのかとちょっと残念な気持ちになりました。

WPIは「世界トップレベル研究拠点プログラム」なので、WPIに採択されている大学は世界トップレベルであって、トップ下の「厚み」に寄与する大学ではないはずで、なんだか一貫していないようにも感じます。また、WPIに関してはあまり社会実装が強調されていなかったように自分は思っていたので、社会実装の拠点WPIという表現をみて、ん?と思いました。支援対象の項目を読んだら、結局、誰をどう支援したいのかが不明瞭に感じてしまいました。

公募はまだこれからみたいです。公募要領で最終形がどうなるのか楽しみにしたいと思います。

総合振興パッケージに関する文書など

  1. 地域中核・特色ある研究大学に向けて(文部科学省)
  2. 地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ 総合科学技術・イノベーション会議 令和4年2月1日 (内閣府)
  3. 地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ~改定に向けた検討状況~ 令和4年12月23日 科学技術・イノベーション推進事務局
  4. 地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ(素案) 令和3年12月 科学技術・イノベーション推進事務局

総合振興パッケージに関する報道

  1. 特集産学連携に関する2022年度予算 文部科学省 地域中核・特色ある研究大学の振興について~社会実装関係を中心に~ 文部科学省 科学技術・学術政策局 産業連携・地域振興課 2022年3月15日 産学官連携ジャーナル
  2. 文科省「共創の場形成支援プログラム」、今年度の注目大学は? 2022年12月17日 ニュースイッチ 文部科学省事業の「共創の場形成支援プログラム」(COI―NEXT)の2022年度採択が例年以上に注目されている。政府の「地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ」で同事業が土台の一つとなったためだ。

参考

  1. 基金制度の沿革と課題(1) - 社会保障政策として始まった基金制度 - 予算委員会調査室 藤井 亮二
  2. JST産学連携事業における令和4年度の施策ご紹介 令和4年3月 JST
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