日本の科学と技術

科研費申請書の書き方の教科書 厳選5冊

科研費の研究計画調書(申請書)の書き方のコツを教える教科書的な書籍が最近は増えてきました。どれを買えばいいのか、独断と偏見でレビューしてみたいと思います。

狙って獲りにいく! 科研費

『人は話し方が9割』などのベストセラーを出しつづけている、すばる舎が、2022年にはついに科研費業界に乱入!『狙って獲りにいく! 科研費 採択される申請書のまとめ方』という本を、2022年の科研費応募シーズンのギリギリに出してきました。発売は2022年8月20日。著者は、海洋研究開発機構の中嶋 亮太氏。海洋研究開発機構の仲間たちの協力を得て誕生した本のようです。

私も、すぐにアマゾンで注文して買って読みました。さすがヒットメーカーの「すばる舎」が出しただけあって、ツボ(壺ではない)を心得た内容でした。これまで出版されている定番の科研費の教科書とはまた違った切り口で、採択される可能性を高める(=不採択に振り分けられる可能性をできるだけ減らす)方法を教えてくれます。この本の一番の特色は、審査委員がどんな気持ちで審査しているのかをかなり詳細に解説しているところ。どういうプロセスで当落線上の応募書類を「不採択」に振り分けているのか。どう書けば、ボーダーライン当たりに引っ掛かった場合に、不採択ではなく採択のほうに振り分けてもらえるのか。

ネタバレさせるわけにもいかないので、これ以上は詳しく書きません。

ヒントは、審査委員の審査の実際をイメージできて、審査委員にストレスを与えない優しさ、思いやり、リスペクトを示せるかどうかが大事ということ。もうひとつの特色は、実例をふんだんに掲載しているところです。採択された調書や、不採択調書がなぜ不採択になったのかの分析などは、なかなかお目にかかることができないので、非常に役にたつことでしょう。

 

科研費獲得の方法とコツ

研究者でこの本を知らない人はいないというくらいのベストセラー&ロングセラー。科研費獲得の方法とコツ 改訂第8版〜実例とポイントでわかる申請書の書き方と応募戦略 なんと第8版まで、版を重ねています。それというのも、科研費の制度(様式や審査制度)がちょこちょこ変わるからなんですね、しっかりとそれに対応しているのはさすが、生命科学と医学の専門出版社の羊土社。出版社の科研費応募応援サイトも充実しています。出版が追い付かないときでも、ここで速報を出して、新しい変化をいち早く研究者に伝えています。

 

できる研究者の科研費・学振申請書

ネットで科研費ノウハウを検索すると常にトップにくるのが、科研費.comです。ネットの記事を読むだけでも非常にためになりますが、本として手に取って読みたい人もいるわけで、そんな人たちにはありがたい出版です。

『できる研究者の科研費・学振申請書 採択される技術とコツ』刊行は2019年7月10 日。

 

科研費 採択される3要素

書籍のタイトルだけですでに科研費に採択される極意を伝えきっている素晴らしい本。この本の特徴はなんといっても、臨床医学の先生が書いているところ。医学系の研究者にとっては参考になることが多いと思います。惜しいのは、科研費の様式の変化に追従できていないところですが、申請書の書き方という普遍的なことに関しては、古くなることはないので、一読の価値があります。

 

科研費改革と研究計画書の深化

『科研費改革と研究計画書の深化』 (高等教育ハンドブック) 2018/10/15 この本は、研究支援部署の事務系の人が著者で、支援する立場で書かれています。この本の内容も普遍性が高くて、読み応えがあります。たまに読み返しても、読むたびに、なるほどと納得すること多し。惜しむらくは、この本の入手が困難なこと。

 

どれを読めばいいのか?全部読むといいです。一冊だけ読むなら、不採択が続いている人や採択が安定しない人には「狙って獲りにいく! 科研費」ですね。初めて応募する人には、「科研費獲得の方法とコツ」が安心して勧められます。

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