日本の科学と技術

オープンアクセス雑誌への論文掲載の費用(APC)の高騰

いいジャーナルに論文がアクセプトされると嬉しいわけですが、アクセプトされたらされたで、論文掲載料をどうやって支払おうかという悩みが生じます。昔と比べると、近の科学出版のビジネスモデルは、論文を掲載してもらう著者が費用(Article Processing Charge;APC)を負担して、読者はオープンアクセス、つまり無料で読めるというものが主流になっています。

APCが150万円を超える雑誌

Nature Neuroscience 155万9千円(The APC for Nature Neuroscience in 2022 is €9,500/US $11,390/£8,290)

この金額をネットで知り、何かの間違いかと思って、ジャーナルのウェブサイトを何回も読み直してしまいましたが、やはり間違いないようで、ネイチャーニューロサイエンスの論文掲載料(APC)が150万円を超えています。

このようなバカ高い雑誌掲載料を要求する雑誌の査読は引き受けないと宣言した研究者もいます。

APCが100万円を超える雑誌

Cell 135万5千円$9,900

APCが50万円を超える雑誌

Current Biology 91万7千円$6,700

EMBO Journal 83万5千円(Open Access fee of $6,100Impact Factor: 14

Nature Communicatinos 80万6千円$58902 year Impact Factor (2021) – 17.694

Cell Reports 71万2千 円$5,200

ネイチャーコミュニケーションズは、ネイチャーネイチャー、ネイチャー何とか(専門分野名)に次いで高いブランド力を誇るネイチャー姉妹紙ですが、やはりAPCがバカ高いです。セルリポーツも同様。本来ならこのあたりのジャーナルに自分の論文がアクセプトされたら喜ぶべきなのでしょうが、この価格を見るとあまり喜べないような気がします。

APCが30万円以上する雑誌

メジャーなオープンアクセスジャーナルはいずれもAPCが30万円を下らないようです。科研費の申請書を書くときに、論文出版費用として「30万円x論文数」を計上しても、落としたりしないよね、審査委員さん!

Frontiers in Neuroscience  44万2千円US$ 3,225

iScience  41万円$3,000

International Journal of Molecular Science (IJMS) 32万8千円2300 スイスフラン)(*after 31 December 2022)Impact Factor: 6.208 (2021)

Molecules (MDPI) 32万8千円2300 CHF

Scientific Reports 30万円$21902-year impact factor (2021): 4.996

MDPIジャーナルもAPCはそこそこ高いんですね。サイエンティフィックリポーツとほぼ同じ価格帯です。しかし、MDPIのIJMSのインパクトファクターはなんとサイレポよりも上。さて、どっちに自分の論文を投稿すればいいのでしょうか。

フロンティアズもオープンアクセスジャーナルなのでAPCはそれなりにかかります。

なるほど、MDPIからの査読依頼は自分はだんだん鬱陶しいと感じるようになったのですが、 ポイントを貯めて使うという賢明な選択があったのですね。MDPIのこのきめ細やかなサービスは、他の”権威のある”出版社のバカ高いAPCの中にあっては、MDPIの評判を今後押し上げていく可能性があると思いました。

参考

  1. 妥当な APC を求めて 佐藤 翔 連載:オープンサイエンスのいま 情報の科学と技術 70 巻 1 号(2020)
  2. 論文の掲載、時に1本50万円必要 研究者「高すぎる」  2020年4月5日 18時00分 野中良祐 朝日新聞デジタル 有料会員記事
Exit mobile version