いいジャーナルに論文がアクセプトされると嬉しいわけですが、アクセプトされたらされたで、論文掲載料をどうやって支払おうかという悩みが生じます。昔と比べると、近の科学出版のビジネスモデルは、論文を掲載してもらう著者が費用(Article Processing Charge;APC)を負担して、読者はオープンアクセス、つまり無料で読めるというものが主流になっています。
APCが150万円を超える雑誌
Nature Neuroscience 155万9千円(The APC for Nature Neuroscience in 2022 is €9,500/US $11,390/£8,290)
この金額をネットで知り、何かの間違いかと思って、ジャーナルのウェブサイトを何回も読み直してしまいましたが、やはり間違いないようで、ネイチャーニューロサイエンスの論文掲載料(APC)が150万円を超えています。
某学術誌のオープンアクセス掲載費が$11390(約159万円)と知って腰抜かしそうになっている。年3報掲載で、博士研究員の年収分か。。査読は無料奉仕なのにね。。
— Prof. Keiko Torii (@KeikoUTorii) August 9, 2022
このようなバカ高い雑誌掲載料を要求する雑誌の査読は引き受けないと宣言した研究者もいます。
Sharing my response to a recent review request from Nature Neuroscience. If you submit to a Nature journal, your set of reviewers may not be as specialized or matched to topic as at other journals (due to the smaller pool of reviewers that Nature now has access to) pic.twitter.com/Kv8fsEKvXU
— Marc Coutanche in (@MarcCoutanche) January 15, 2021
APCが100万円を超える雑誌
Cell 135万5千円($9,900)
Cell Press has joined the sky high APC club. ‘£7,800 / €8,500 / $9,900 for our flagship title, Cell’ ⬇️https://t.co/v7vmxFp5Cc
— Open Research at Aston (@Astonopenaccess) December 18, 2020
APCが50万円を超える雑誌
Current Biology 91万7千円($6,700)
EMBO Journal 83万5千円(Open Access fee of $6,100)Impact Factor: 14
Nature Communicatinos 80万6千円($5890)2 year Impact Factor (2021) – 17.694
Cell Reports 71万2千 円($5,200)
ネイチャーコミュニケーションズは、ネイチャーネイチャー、ネイチャー何とか(専門分野名)に次いで高いブランド力を誇るネイチャー姉妹紙ですが、やはりAPCがバカ高いです。セルリポーツも同様。本来ならこのあたりのジャーナルに自分の論文がアクセプトされたら喜ぶべきなのでしょうが、この価格を見るとあまり喜べないような気がします。
APCが30万円以上する雑誌
メジャーなオープンアクセスジャーナルはいずれもAPCが30万円を下らないようです。科研費の申請書を書くときに、論文出版費用として「30万円x論文数」を計上しても、落としたりしないよね、審査委員さん!
Frontiers in Neuroscience 44万2千円(US$ 3,225)
iScience 41万円($3,000)
International Journal of Molecular Science (IJMS) 32万8千円(2300 スイスフラン)(*after 31 December 2022)Impact Factor: 6.208 (2021)
Molecules (MDPI) 32万8千円(2300 CHF)
Scientific Reports 30万円($2190)2-year impact factor (2021): 4.996
MDPIジャーナルもAPCはそこそこ高いんですね。サイエンティフィックリポーツとほぼ同じ価格帯です。しかし、MDPIのIJMSのインパクトファクターはなんとサイレポよりも上。さて、どっちに自分の論文を投稿すればいいのでしょうか。
「日本では評判最悪」と断言しちゃってるけど、ほんとかな。
ちょうど今年度MDPIのジャーナルにもSciRepにも受理されたので、多少は語る資格はあると思うけど、MDPIのほうは査読は普通、スピード感もあって、むしろ悪くないと思った。SciRepは査読が糞で、APCも25万円以上で、余程プレデトリアルだよ https://t.co/RaNBOTLHF7
— takash (@takash4) February 3, 2022
フロンティアズもオープンアクセスジャーナルなのでAPCはそれなりにかかります。
M2の学生の論文が公開された.MoleculesはOA誌でAPCが1800 CHF(約20万円)と安くないのだが,概ね来るものは拒まずにせっせとMDPI(他にはInt. J. Mol. Sci.)からの査読を引き受けて一回250 CHFのバウチャーを溜めて実質無料になった. https://t.co/rMhEmLmgrJ
— Morifumi Hasegawa (@seibutsu_seigyo) January 29, 2018
なるほど、MDPIからの査読依頼は自分はだんだん鬱陶しいと感じるようになったのですが、 ポイントを貯めて使うという賢明な選択があったのですね。MDPIのこのきめ細やかなサービスは、他の”権威のある”出版社のバカ高いAPCの中にあっては、MDPIの評判を今後押し上げていく可能性があると思いました。
参考
- 妥当な APC を求めて 佐藤 翔 連載:オープンサイエンスのいま 情報の科学と技術 70 巻 1 号(2020)
- 論文の掲載、時に1本50万円必要 研究者「高すぎる」 2020年4月5日 18時00分 野中良祐 朝日新聞デジタル 有料会員記事