日本の科学と技術

まだ自分のPCに実験データを保存してるの?

実験して得られるデータは、共用の測定機器や画像解析装置につながったPCのハードディスクドライブに一度保存され、ラボや大学の人たちに迷惑が掛からないようにそれらのデータを自分のPCにUSBメモリなどで移すというのが、一般的な流れではないかと思います。つまり、多くの場合、実験データはデジタルデータであり、それらは実験した研究者が所有するPCの中のハードディスクドライブやその研究者が所有する外部記憶装置(外付けハードディスクドライブ、USBメモリーなど)に保管されていると思います。このような研究データ管理をしている限り、その研究データは実験した本人にしか利用できません。また、研究不正が発覚した場合にも、オリジナルデータがそもそも存在していたかどうかが不明瞭なままになる恐れもあります。

さらに、実験した本人は気づかないだけで、そのデータにはまだまだ解析すれば面白いことが見つかるかもしれません。つまり、従来のように研究者個人が実験データを管理しているのは、非常にもったいない話であって、もしもこれらの研究データを第三者が二次利用できれば、新たな知見が生まれる可能性があり、研究に対する投資効果が今までよりももっと大きくなることが期待されます。研究データを他者が利用可能な状態で管理するほうが望ましいのです。そのような考えが世に広がっていることから、最近は、研究データ管理(Research Data Management; DRM)、データシェアリング、オープンサイエンスといった言葉をよく見かけるようになりました。

 

実験生データ、加工した中間ファイル、論文図表を研究所が保存・管理

大きな研究不正事件を2度も経験した東京大学の分生研(分子細胞生物学研究所)は定量生命科学研究所に衣替えしましたが、研究不正防止を目指した研究データ管理はかなり徹底しているようです。

研究不正の反省から 独自の対策システムを開発 論文に関わる全ての研究データをアップロードして保管 NII TODAY No.85 Sep 2019

うえのウェブ記事を読むと、研究不正防止に賭ける定量生命科学研究所の本気度が伝わってきます。それに対して、臭いものにフタをしたままの東大医学部では、今でも相変わらず、実験値とは一致しない論文のグラフを”手作業”で作成しているのでしょうか?

  1. 東大医学部の疑惑論文等を画像ソフトで確認
  2. 医学系論文に関する報告がまだ済んでいない東大

 

データマネジメントプランの義務化

研究不正防止の観点も加味されているのだと思いますが、AMEDによる研究助成への応募書類の中には研究データ管理計画書(データマネジメントプラン、Data Management Plan; DMP)の提出も義務付けられています。

  1. データマネジメントプランの提出について 国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED) 平成30年3月14日 第4回研究経営評議会 資料 平成30年度より『データマネジメントプラン』提出を義務化 適用対象等 平成30年5月1日(調整中)以降にAMEDが新規公募する事業 記載事項 事業年度  事業名  研究開発課題名  研究から産出されるデータ及びデータ群の総称  研究開発データの説明  データサイエンティストの所属・氏名等   リポジトリ(保存場所)  その他必要事項(各事業の特性等に応じ設定)Q. データサイエンティストとは、どのような人ですか? A. ここでいうデータサイエンティストとは、「データ解析の高い能力を有し、かつ、 AMEDの研究目的を達成するためにデータの収集、質の確保、意味づけ、保存と活 用等を行う研究者」 のことを言います。
  2. 日本医療研究開発機構(AMED)データマネジメントプラン様式 Ver4.0 記載要領 令和3年 11 月策定 AMED は全ての委託研究開発事業の契約締結時及び AMED が指定する一部の補助事業(医 療分野の研究開発の助成を行うもの)の交付申請時において、データマネジメントプラン (以下、「DMP」という。)の提出を義務づけています。

 

研究データ管理とオープンサイエンス

オープンサイエンスとは、論文だけでなく研究データを含む研究成果の積極的な公開を通じて、研究成果の再現性・透明性を確保し、その再利用や分野横断型研究への発展を促進しようとする国際的なトレンドです。2013年G8科学技術大臣会合において「公的資金を得た研究データのオープン化」について共同宣言がなされたのち、統合イノベーション戦略において「オープンサイエンスのためのデータ基盤」が日本におけるイノベーションを生む重要な基盤になると言及されるなど、我が国でも重要な政策と位置づけられています。公的研究資金を受けた研究について、研究データの公開計画を含めた研究データ管理計画を提出することは今や世界の常識となりつつあり、日本でもJSTやAMED、NEDOで同様の取り組みが始まっています。(1. 設立の趣旨 設立の趣旨 情報処理学会 オープンサイエンスと研究データマネジメント研究グループ 設立日 2019年4月1日 )*太字強調は当サイト

  1. オープンサイエンス時代の研究データ管理 国立情報学研究所

研究データ管理と研究倫理

  1. 研究不正の反省から 独自の対策システムを開発 論文に関わる全ての研究データをアップロードして保管 NII TODAY No.85 Sep 2019
  2. Requirements Analysis of System for Research Data Management to Prevent Scientific Misconduct 船守美穂, 林正治, 込山悠介(無料抄録)

 

研究データポリシー

  1. 大学における研究データポリシー策定のためのガイドライン 大学ICT推進協議会 2021 年 7 月 1 日

研究データ管理とオープンサイエンスにおける利活用の潮流

  1. AMED 研究データ利活用に係るガイドライン 1.1 版 令和 3 年 3 月 国立研究開発法人 日本医療研究開発機構 令和 2 年 3 月初版
  2. 大学での研究データマネジメントの今 (Research Data Management)  研究データマネージメント部会 主査:青木学聡 (名古屋大学) 大学ICT推進協議会

研究データ管理ツール

  1. 研究データ管理基盤「GakuNin RDMの本運用を開始しました(2021.2.15)国立情報学研究所(NII)オープンサイエンス基盤研究センター(RCOS)

研究データ管理計画ツール

  1. https://dmptool.org/

 

参考

  1. 研究データ管理に求められる支援スキル・支援体制 古川 雅子 国立情報学研究所情報社会相関研究系/オープンサイエンス基盤研究センター 「はじめての研究データ管理とそのサポート」 2021年2月1日(月)13:00-15:00 国立情報学研究所
  2. オープンサイエンス推進のための研究データ管理講座の開発 国立情報学研究所オープンサイエンス基盤 NII RCOS /2020/06/08/
  3. オープンサイエンス時代の研究データ管理:第3週:メタデータ・法倫理的問題4 – 研究不正研究倫理 2018/02/15 国立情報学研究所(YOUTUBE)

 

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