日本の科学と技術

海外の大学へ進学:徳島の高校からスタンフォード大学に合格した松本杏奈さん

どんなことでも前例がないことをやるのは非常に難しいものです。日本人初のF1ドライバー中嶋悟 、セリエA初の日本人プレーヤー三浦知良など、パイオニアが道を切り開くことで、そうか可能なのかと多くの人が気付きます。東大合格者を一人も出したことがない高校からたった一人東大を志望して、実際に合格するのも、周囲の人には想像できないくらいの想像力を要することでしょう。ましてやそれが海を越えて海外の大学への進学となるとなおさらです。

最近は、世界的にみたら東大や京大は一流とは言えないので東大京大よりも海外の一流大学に学部から入るという選択がいい、みたいな若干煽りが入ったような物言いをみることがあります。そこで紹介されている合格者は、たいていの場合、東大京大にごっそり合格するような超進学校出身の生徒であって、多くの高校生にとってはやはり例外と映るのではないでしょうか。

さて、日本の高校から海外の大学へ進学することに現実味がなかなか感じられないこのご時世に、徳島県の(田舎の?)高校からスタンフォード大学に合格した松本杏奈さんがニュースになりました。その後、合格体験をまとめた書籍も出版されて、メディアからは社会現象のような扱われ方をしたと思います。

世界的名門スタンフォード大へ 「夢実現のため」選んだアメリカ 2021/06/14   FNNプライムオンライン

 

【全編無料】親の教育意識をどうアップデートすべきか?つるの剛士氏、松本杏奈氏らが徹底討論! 2021/08/18 NewsPicks /ニューズピックス

  1. 正解も前例も、自分で作ればいい。”可能性”のオルタナティブを見つけ出す力─松本杏奈さんインタビュー2021.7.19 あしたメディア 最初は、「徳島から出るな」とか、「無理だ」とかって言われて、誰も味方になってくれなかったんです。
  2. 徳島からスタンフォード合格の18歳が実践した「可能性をつぶす大人に負けない“自己肯定感”の育て方」 2021.07.16  現代ビジネス すべての人から反対されましたね。そもそも、私の周囲の大人たちは、「システム上、日本人がアメリカの大学を受験することができる」ということさえ知らなかったんです。いくら私が「できる」と説明しても、‥
  3. ほぼ日の学校 徳島の『問題児』がスタンフォード大学に入ったわけ。松本杏奈さん 徳島県の徳島文理高等学校を卒業して、今年の秋からスタンフォード大学に入学します。
  4. 徳島から「超名門スタンフォード合格」女子の正体「日本の高校生」に希望、松本杏奈という未来 2021/08/06 制作:東洋経済education × ICT編集チーム 米国の大学を目指すと宣言したときには、周囲からは「現実を見ろ」「諦めることを学べ」と言われた。‥ 19校に出願して、6校に合格、実は13校は不合格だったのです。

合格した大学は、上の記事によれば、

  1. カリフォルニア大学サンタバーバラ校
  2. カリフォルニア大学バークレー校
  3. ケースウェスタンリザーブ大学
  4. ローズハルマン工科大学
  5. ボストン大学
  6. スタンフォード大学

の6大学だそうです。

スタンフォード大学の生活紹介

松本さんは、機械工学をやるつもりで入学そうですが、学生生活が始まっていろいろな授業を受講したりいろいろな人々に知り合って、下の動画のインタビューの時点ではもっと人間よりの方向に志望する専攻が変わったそうです。スタンフォード大学の生活、なんか、とても楽しそう。このインタビュー聞いていると、自分も大学生からやり直したくなりました。

【Z世代対談】徳島から米スタンフォードへ。松本杏奈「日本社会には希望が必要」 2021/12/27 NewsPicks /ニューズピックス

 

書籍と批判的アマゾンレビューとSNSアカウント削除

本の中のコネもお金も英語力もない「3ない」状態からのスタンフォード大学合格という売り文句が実際とは違うのではないかという批判があったようで、誹謗中傷という言葉がトレンド入りしていたことから本人がSNSのアカウントを削除したというニュースを知りました。

出版された書籍、松本 杏奈 (著)『田舎からスタンフォード大学に合格した私が身につけた 夢をつかむ力 』(2022/4/22 KADOKAWA)

  1. 徳島県から「3つの逆境」を乗り越えスタンフォード大合格の松本杏奈氏、初の著書が4月22日(金)に発売! 株式会社KADOKAWA 2022年4月25日 11時00分 prtimes.jp

について書かれたアマゾンレビューのうちの一つがSNS削除の要因の一つになったようです。その長大は批判的レビューを自分も読みましたが、レビューに書かれたことは確かに批判的な語調でしたが、スタンフォード合格を勝ち取るに至った様々な戦略が詳細に説明されていて、それはそれで、海外の大学を受験する人にとって貴重な情報源になると思える内容でした。しかし、この長大なレビューに書かれた内容は事実に反するとして松本 杏奈さんが情報開示請求の意思を示したところ、レビューを書き込んだ人はそのレビューを削除したようです。そして、その後、松本 杏奈さんもSNS(ツイッター)のアカウントを削除してしまったという経緯があるようです。こうなると、一体何が真実なのかわからなくなりますね。松本さんに関する事実関係がどうだったのかは別として、この長大なレビューには日本の高校生が海外の大学に合格するための具体的な戦略がかなり細かく書かれていて、(批判的な語調を除外すれば)それ自体が一つの海外の大学への留学ガイド(事例紹介)みたいに感じられました。

今回の騒動をみたときに、自分はビリギャルを思い出しました。あれも、低偏差値から慶應義塾大学に合格できたということでセンセーショナルでしたが、低偏差値といいつつ実は進学校の出身ではないかといった批判があったように思います。

  1. ビリギャル小林さやかさんの話、世の本質を掴んでて泣いた 午後4:14 · 2022年5月1日   濱井正吾(9浪はまい)@『浪人回避大全』4/26発売 @hamaishogo1111

高校が進学校であっても、勉強を全然してこなかった生徒がいきなり難関大学を目指して合格するためには大変な努力を要するという内容で、自分はあの本を読んだときには、ある意味、当たり前のこと(それなりの大学に合格するためにはそれなりの勉強が必要)が書いてあるだけだと感じました。ただ、当たり前と言ってしまうと売れないので、ギャップを感じさせるような売り方になったのだろうと理解しています。

  1. 底辺から這い上がった…的な物語を自称するビリギャルは私立中高1貫校出身で、暴走族から大学生になった吉野敬介は逗子開成出身で、自称苦労人上野千鶴子は親にマンション買って貰ってるし、徳島スタンフォードの松本杏奈は進学校出身&親が大学教授。良い悪いは別にして、世の中そういうものだよな 午前8:14 · 2022年5月3日 rei@サブアカウント @Shanice79540635

ネットで飛び交っている情報が本当ならば、今回の松本さんの件は、実はお父さんが大学教授なのだそうです。それを知ってなるほど、と合点がいきました。やはり徳島の田舎と言っていても実は世界を見せてやれる人が身近にいたのねということです。世間一般の感覚からすれば、大学教授を父親に持つというのは普通とは言えないと思いますし、それを伏せて、普通の田舎の家庭で育ったとアピールするのであれば、それはマーケティングの戦略だと思います。

今回の松本杏奈さんの件も、削除されずに残っている他のアマゾンレビューを読むと、セルフプロデュース力が高すぎるという趣旨のものがありました。研究の世界にいて、セルフプロデュース力の高い人が研究者として生き残っている現実を見ている身としては、それはことさら批判すべき対象たりえないのではと思います。

本を読むときに、ページの隅々までその読者にとっての最適解が書いてあると期待して読むのは間違っているのではないでしょうか。所詮、他人の成功事例なのですから、自分がそのままマネできるわけもないですし、自分の生き方のヒントになることが一つでも得られれば、その本は有益だったと言えます。

 

 

松本杏奈さんの略歴

https://monsterex.info/2020/anna-matsumoto/ に紹介されている略歴を見ると、非常に活動的なことがわかります。なるほど、アメリカの大学のようにアドミッション入試の場合にはアピールすべきことがたくさん必要なわけですが、こういった活動はかなりアピールするんじゃないかと思います。当たり前といえば当たり前ですが、なんの準備もなく突然ポンとアメリカの大学を受けて入ったわけでは全然ないのですね。こういったことも、後に続く人のために役立つ情報なのではないかと思います。

JAPAN MENSA会員
フジテレビ「99人の壁」出演
・Oxford International Program 2018
Asian Science Camp 2019 日本代表
東京大学グローバルサイエンスキャンパス第1期生
国立情報学研究所グローバルサイエンスキャンパス「情報科学の達人」プログラム第1期生
東京2020オリンピック聖火リレー サポートランナー

 

参考

  1. atelier basi 海外大学への進学が注目を浴びる中でも、地域によっては未だ海外進学が現実的な選択肢として捉えられず、周囲の応援を得にくいのが現状です。情報を得る上で対策塾や先輩の存在は不可欠ですが、それを得られるかどうかは経済的・地理的状況に依拠しており、全ての受験生に保障されているわけではありません。 そんな高校生の悩みを解消したい。一人一人の独創性を受け入れ育み合う空間で、自ら納得のゆくまで考え抜いた目標の実現を、経済的・地理的条件に関わらず伴走したい。似た環境から進学した先輩に相談できる場を。それぞれの個性を「生かす」受験サポートを。同じ試練を乗り越えようとしている仲間がいるコミュニティーを。受験生だった私たちが欲しかった場所を無償かつオンラインで。それが atelier basi です。(atelier basi:about)
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