日本の科学と技術

科研費の研究種目選び 基盤研究(C)か基盤研究(B)かを選ぶ5つのポイント

今年の科研費の締切日は大型予算は2か月、基盤研究(C)や(B)は1か月前倒しになります。今まで科研費のシーズンと言えば10月と体に沁み込んでいる人は、体内時計(季節時計)を修正する必要があります。

令和4(2022)年度の科学研究費助成事業の公募、内定時期の前倒し等について(JSPS)

さて、これまでコンスタントに基盤研究(C)をとれている研究者の中には、そろそろ基盤研究(B)にチャレンジしてみたいという人がいるかと思います。しかし、今の科研費の制度のもとでは基盤研究に採択されれば満額の場合2000万円、ところが、どんなに素晴らしい研究をしていても、どんなに素晴らしい研究提案を書いたとしても、激しい競争の末、不採択ということになると得られる研究費はゼロ円です。

2000万円かゼロ円か、という恐ろしい賭けに身を投じないといけないわけで、研究の継続性という観点からはこの制度は非常に宜しくないと思います。手堅く基盤研究(C)かチャレンジして基盤研究(B)に出すかは、非常に悩ましい選択でしょう。どのような考えでCかBかを選べばよいのでしょうか。

一人又は複数の研究者が共同して行う独創的・先駆的な研究
基盤研究(A)3~5年間 2,000万円以上 5,000万円以下
基盤研究(B)3~5年間  500万円以上 2,000万円以下
基盤研究(C)3~5年間  500万円以下

基盤研究(A・B・C) 日本学術振興会

非常にナイーブに考えれば、自分の研究計画を実施するのにかかる経費が500万円を超えるのであれば、基盤研究(C)の次に金額が大きい基盤研究(B)に出そうということになります。しかしながら、このような選び方は全く現実的ではありません。なぜなら、基盤研究(C)の「500万円以下」と基盤研究(B)の「500万円以上」は、数直線のように連続的につながってはいないからです。

自分の業績で決める

基盤研究(C)に採択されることと基盤研究(B)に採択されることとの差は、計上する経費の総額の差ではなく、申請者の業績の差を反映します。ひとつの審査種目の中で業績がある程度ある研究者同士の競争になるわけですから、科研費の申請書が良く書けているのは当たり前で、実現可能性を見る際には研究者の過去の業績がかなり重視されるはずです。

実際に審査した経験からいうと,基盤研究(B)と基盤研究(C)の間には,かなりのレベルの違いがある.両者の採択率はほとんど変わらないが,基盤研究(B)になると優れた業績(ということはインパクトファクターの高い雑誌に掲載された論文)をもっていて,これまでにも基盤研究(B)以上の研究費を獲得している研究者が多く,かなりハイレベルの競争になる.

(引用元:第1回 応募種目の選び方 児島将康 先生 羊土社)

 

ライバルを見て選ぶ

科研費は、自分が選んだ土俵でのライバルとの競争で採否が決まりますので、自分が出そうとしている審査区分(小区分)でどんな研究者が採択されているか、ライバルチェックしてみる必要があります。KAKENデータベース上で小区分の名称で検索をかけると、採択課題の情報が一覧されます。研究者名をクリックして、さらにその人のリサーチマップ情報に飛べば、極めて簡単にその人の論文業績を調べることが可能です。例えば、

基盤研究(B) 免疫学関連 2021年

で検索してみると、この審査種目(小区分)では基盤研究(B)はたかだか10件しか採択されていません。どの種目もそうですが、この10人程度の中に自分が食い込めるかどうかを考えてみるのが良いと思います。

審査委員を見て選ぶ

採択を決めるのは審査委員です。基盤研究(B)だと6人の審査委員がいますが、審査委員の任期を終えた人の氏名や所属は公開されますので、だいたいどんな研究分野の人がその審査種目を審査しているのかの「幅」がわかります。自分の仕事はそのような顔ぶれの人たちに知られているのか、高い評価をしてもらえそうかを見極めるのも大事です。

審査委員名簿 | 科学研究費助成事業|日本学術振興会

第1段審査(書面審査)委員 平成29年度 基盤研究(B)

基礎医学(免疫学関連 など)

必要性に応じて選ぶ

そもそも自分はなぜ基盤研究(B)を獲りに行きたいのかを考えてみることも大事でしょう。基盤研究(C)でも研究を進められそうならなぜBが欲しいのでしょうか。ラボを回すためにBは必要?技術員(ラボテクニシャン)を雇用したいから基盤Bが必要?次に独立ポジションを狙いたいから、ラボの立ち上げには基盤Cでは足りない?

今、絶対に基盤研究(B)が必要というわけでもないのなら、リスクを冒す必要はあるのでしょうか。

 

リスクを考えて選ぶ

不採択のリスクを最小にできるのであれば、思い切って一つ大きい予算の研究種目に応募してみるのも良いでしょう。例えば、4年間の研究期間の基盤研究(C)を持っていて、前年度申請を利用するとか、研究がもうすこしかかりそうなので研究期間を延長する予定だから最悪、基盤Bがとれなくてもなんとかなるとか。AMEDやその他、民間財団からの研究助成があるので、仮に基盤Bを今回落としたとしても研究が滞る恐れがないというのであれば、チャレンジするのもありかもしれません。

 

どの研究種目に応募するかは、人に言われて決めるようなことではありませんので、全くもって余計なお世話の記事となりましたが、個人的な考えとしては、基盤Bを考えるのであれば、やはり自分の研究分野のトップジャーナルに論文を出すのが先決なのではないかと思います。

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