日本の科学と技術

DARPA Robotics Challenge 2015 優勝した韓国チームに賞金2億5千万円

米国防高等研究計画局(DARPA)が主催する災害救助ロボットの競技会「DARPA Robotics Challenge(DRC)」の決勝戦(Final)が、2015年6月5日、6日に開かれました。予選は2013年に行われており、この予選の上位および新たに出場資格を得たチームによって決勝が行われました。

このコンテストは2013年の福島第一原発事故の教訓から着想を得たものです。もし高放射能による被爆をものともしないロボットが現場で作業できていたら、爆発などの事故の拡大を食い止められていたのではないかという考えから、参加ロボットは車の運転、車から降りること、ドアを開けて通ること、バルブを締めること、壁に穴を開けること、瓦礫の部分を越えて行くこと、階段を登ることなどのさまざまなチャレンジが課されています。

競技の模様。
DARPA 2015 Finals: Rescue bots compete in disaster simulation challenge

災害の場面を想定しているだけに、ロボットにとってはかなりタフな状況で、転倒するロボットが多かったようです。
A Compilation of Robots Falling Down at the DARPA Robotics Challenge

優勝したのは韓国のチームKAISTでした。
Korea’s Team KAIST robot completes tasks at the 2015 DARPA Robotics Challenge (fast motion)

ファイナリストは25チーム。日本からは、Aero(東大), AIST-NEDO(産総研), HRP-2Tokyo(東大), NEDO-Hydra(東大、千葉工大、阪大、神戸大), NEDO-JSK(東大)の5チームが参加していました。

 日本から参加の5チームのうち、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「災害対応ロボット研究開発」事業の支援を受けた3チームが出場する。

 東京大学の稲葉雅幸教授らのチーム「NEDO―JSK」は、13年のプレ大会で優勝した「シャフト」を輩出した研究室。高出力モーター駆動の人型ロボットで挑む。シャフトの技術を応用し、前回を超える活躍ができるか注目される。

 東大の中村仁彦教授らのチーム「NEDO―Hydra」は、電気油圧で全身を動かす世界初のロボットで参戦。「構成部品や制御回路、すべてゼロから作った」(中村教授)。手や足にかかる力を計測でき、工具をつかむ力やバルブを回す力を測りながら、繊細な動きができる。

 産業技術総合研究所から出場するチーム「AIST―NEDO」は10年以上の運用実績のある「HRP―2」を改良。産総研の金広文男ヒューマノイド研究グループ長によると「不整地の走破、階段は成功率が高い。工具の扱いや車の運転などは成功に向け調整している」という。(日刊工業新聞 ニュースイッチ 2015年06月03日)

中国のIntelligent Pioneerと日本のNEDO-Hydraは棄権し、23チームでの優勝争いとなりました。日本勢は10位、11位、14位、最下位という成績で、他国に大きく水をあけられてしまいました。

DRC FINALS TEAM STANDINGS
TEAM SCORE TIME
TEAM KAIST 8 44:28
TEAM IHMC ROBOTICS 8 50:26
TARTAN RESCUE 8 55:15
TEAM NIMBRO RESCUE 7 34:00
TEAM ROBOSIMIAN 7 47:59
TEAM MIT 7 50:25
TEAM WPI-CMU 7 56:06
TEAM DRC-HUBO AT UNLV 6 57:41
TEAM TRAC LABS 5 49:00
TEAM AIST-NEDO 5 52:30
TEAM NEDO-JSK 4 58:39
TEAM SNU 4 59:33
TEAM THOR 3 27:47
TEAM HRP2-TOKYO 3 30:06
TEAM ROBOTIS 3 30:23
TEAM VIGIR 3 48:49
TEAM WALK-MAN 2 36:35
TEAM TROOPER 2 42:32
TEAM HECTOR 1 02:44
TEAM VALOR 0 00:00
TEAM AERO 0 00:00
TEAM GRIT 0 00:00
TEAM HKU 0 00:00

(引用:http://www.theroboticschallenge.org/)

参考

  1. DARPA ROBOTICS CHALLENGE FINALS 2015
  2. 災害ロボコンテスト、韓国チームが優勝 日本勢は最高10位 (日本経済新聞 2015/6/7):”韓国科学技術院のチームは44分台で8つすべての課題をクリアし、賞金200万ドル(約2億5000万円)を獲得した。2位は米フロリダの大学などで作る研究機関IHMC、3位は米カーネギーメロン大のチームが受賞した。”
  3. 【DRC Finals 現地レポート】日本チーム棄権、転倒…どうなる!?(日刊工業新聞 ニュースイッチ 2015年06月06日):”日本からは5チーム出場していたが、競技開始を前にNEDO-Hydraチームが棄権。「もともと出場予定だったロボットのハードが不調で、バックアップ機でテストに出たが不調。最終的に棄権に至った」(NEDO-Hydraチーム関係者)。”
  4. 東大チーム転倒し苦戦…災害救援ロボット競技会 (読売新聞YOMIURI ONLINE 2015年06月06日):”日本勢は、東京大の3チーム、東京大・千葉工大・大阪大・神戸大の合同チーム、産業技術総合研究所の計5チームで、いずれも決勝からの参加。13年に予選が開かれ、東大卒業生らが起業したSCHAFT(シャフト)社が1位になったが、米グーグル社に買収され、「商業用ロボットの開発を優先する」として決勝戦を辞退した。”
  5. DARPAロボティクスチャレンジ、これが全24体の選手達だ! (GIZMODO 2015.06.06):”ガイドには25体ありますが、中国のIntelligent Pioneerは残念ながら出場しないようです。”
  6. ロボットが運転する、壊す、上る、「DARPA Robotics Challenge」がスタート(IT PRO by 日経コンピュータ 2015/06/06):”米国防高等研究計画局(DARPA)が主催する災害救助ロボットの競技会「DARPA Robotics Challenge(DRC)」の決勝戦(Final)が、2015年6月5日(米国時間)に米国カリフォルニア州ポモナ市の「Fairplex」で開幕した。”
  7. 危険な事故現場などで活躍する次世代ロボットの競技会、「DARPA Robotics Challenge」の本戦開催が今週末に迫る(現代ビジネス 2015年6月4日):”DARPA(米国防高等研究計画局)が主催する次世代ロボットの競技会、「DARPA Robotics Challenge(DRC)」が(米国時間の)今月5日(金)~6日にかけて米カリフォルニア州のイベント会場「フェアプレックス」で開催される。”
  8. 今年のDRCは日本から5チームが参戦!“第二のシャフト”は生まれるか? 米国防総省主催の原発・災害対応ロボット競技会が現地5日に開幕  (日刊工業新聞 ニュースイッチ 2015年06月03日):”
  9. グーグル、ロボット開発で国防総省にそっぽ (日刊工業新聞 ニュースイッチ2015年03月07日):”
    傘下のシャフトがコンテスト不参加へ 2013年12月にフロリダ州で開かれた前回のDRCでは、NASAやカーネギーメロン大学、軍事用ロボットを開発するボストン・ダイナミクス(グーグルが買収済)を差し置いて、シャフトがダントツの1位となり、その技術力が大いに注目されました。”
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