日本の科学と技術

電王戦FINAL参加5ソフト Apery Selene やねうら王 ponanza AWAKE

電王戦FINALを戦う5つのソフトウェアとその開発者を紹介します。これらの5個のソフトは、2014年11月1日~3日に行われた「第2回将棋電王トーナメント」で5位以上となり今回の電王戦FINALの出場権を獲得したツワモノたちです。

Aperyは昨年2014年に行われた第24回世界コンピュータ将棋選手権の優勝ソフトウェア。開発者の平岡拓也氏(@HiraokaTakuya)はAperyの実行ファイルやソースコードをブログで公開しています。

電王戦出場が決まる5位決定戦で、AperyはN4Sと対戦した。N4Sが振り飛車から強攻を仕掛けてきたのに対して、Aperyも強く応戦する。結果はAperyの勝ち。悲願の電王戦出場を決めた。cakes ドキュメント コンピュータ将棋 2015年3月13日 【 第6回】最強のドリームマッチ

Seleneは西海枝昌彦氏が開発。

やねうら王は磯崎元洋氏が開発。2013年の将棋電王トーナメント初出場でいきなり4位に入賞し2014年の電王戦に出場しています。当時の開発のいきさつを語ったインタビュー記事。

ベースとなる部分は3年前に作ったものなんですけど,そこにやね裏定跡とやね裏学習メソッドを追加するだけだから2~3日あれば出来るかと思ってたんで す。ところが,いざ電王トーナメントのエントリーが完了して3年前に書いたソースコードを引っ張りだしてきたら,当時,大改造しようと決意してソースコー ドを一から書きなおしている最中の状態でした。 エントリーした時点では,すでに建ってる家をリフォームするだけくらいの感覚で考えていたんですけど,実 際に取り組んでみたら,家は完全に解体された状態で「瓦礫だけしかないやん。いまから家を建てるところからやるのか!」と。このせいで,開発ではエライ目 に遭いましたけども。ドワンゴ・川上量生氏 x プログラマーのやねうらお氏 対談 「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」  4gamers.net 2013/12/24 

やねうら王の将棋ソフト作成の指針は非常に興味深いものがあります。

特徴1. やねうら未来定跡
やねうら王は人間が考えだしたいかなる定跡も搭載しない。
コンピューター自らが序盤で長時間考えることにより、生み出した独自の定跡(やねうら未来定跡)を使用。

特徴2. やねうら未来学習メソッド
やねうら王は人間が生み出したいかなる棋譜も参考にしない。
棋譜からの学習(評価関数のパラメーターの学習)のために人間の対局棋譜を用いていない。自己対局棋譜からのみ評価関数のパラメーターを学習する。

特徴3. やねうら未来探索メソッド
やねうら王は従来のいかなる将棋ソフトの流れも汲まない。
具体的にはBonanzaの評価関数における3駒関係、1手詰めルーチン・3手詰めルーチン、劣等局面の検出や、GPS将棋の詰将棋ルーチン、ボナンザメソッドなど、従来の将棋ソフトに見られるコンピューター将棋特有のあらゆるテクニックを一切用いない。
(2014年開催の電王トーナメントでのPR文より)

ponanzaを開発したのは山本 一成氏と下山 晃 氏。Ponanzaは「第2回 将棋電王戦」で「初めて現役のプロ棋士に勝利した将棋ソフト」となり注目を浴びました。さらに、「第1回 将棋電王トーナメント」で優勝して、初代「電王」の称号を獲得した強豪ソフトです。

AWAKEを開発したのは巨瀬亮氏。AWAKEは、今回の電王戦FINALの出場権をかけた「第2回将棋電王トーナメント」(2014年11月1~3日開催)で優勝しており、現在「電王」のタイトルを保持しています。

これまでのコンピュータ将棋の戦いの年表(一部)

1990年12月 第1回 世界コンピュータ将棋選手権

2012年1月14日 第1回将棋電王戦 米永邦雄永世棋聖 VS ボンクラーズ(結果:ボンクラーズが勝利)

2013年3月23日~4月20日 第2回将棋電王戦(結果:プロ棋士1勝、コンピュータ3勝、引き分け1)
2013年5月 第23回 世界コンピュータ将棋選手権(優勝:Bonanza)
2013年11月2日~4日 第1回将棋電王トーナメント(1位 ponanza, 2位 ツツカナ, 3位 YSS, 4位 やねうら王, 5位 習甦 第3回将棋電王戦の出場権獲得)

2014年3月15日~4月12日 第3回将棋電王戦 (結果:プロ棋士1勝、コンピュータ4勝)
2014年5月 第24回 世界コンピュータ将棋選手権(優勝:Apery)
2014年11月 第2回将棋電王トーナメント(1位 AWAKE, 2位 ponanza, 3位 やねうら王, 4位 Selene, 5位Apery 第4回将棋電王戦の出場権獲得)

2015年3月14日~4月11日 第4回将棋電王戦(FINAL)

参考

  1. 「第2回将棋電王トーナメント」の結果“電王”の称号は「AWAKE」に決定(LIVEDOOR NEWS 2014年11月5日):”株式会社ドワンゴおよび公益社団法人日本将棋連盟は、11月1日(土)から3日(月・祝)までの3日間、TOIRO(埼玉県さいたま市)にて、最強のコンピュータ将棋ソフトを決める「第2回将棋電王トーナメント」を開催した。”
  2. 第24回世界コンピュータ将棋選手権
  3. ドキュメント コンピュータ将棋【 第4回】Apery開発者、平岡拓也 :”平岡もいつかは将棋のプログラムを書いてみたいと思っていた。そして2009年、Bonanzaのソースコードが公開された。多くの開発者と同様、平岡にとってもこれが大きなきっかけとなった。 ”
  4. コンピューター将棋選手権で市大チームが世界一!(Hijicho 2014-6-5):”Aperyチームの平岡拓也さん (工・2008年3月卒) 、杉田歩准教授 (数理工学研究室) 、 山本修平さん (修士1年・数理工学研究室在籍) にお話を伺った。”
  5. 【 第5回】コンピュータ将棋界のニューヒーロー(cakes ドキュメント コンピュータ将棋 2015年3月13日) :”2014年のコンピュータ将棋選手権では、平岡だけではなく、大阪市立大・数理工学研究室の先生である杉田歩(准教授)と、学生の山本修平の3人のチームで選手権に参加した。 … すべての対局が終わった。5勝2敗でAperyとponanzaが並んだ。そして星取りの関係で、順位が上回ったのはAperyだった。Aperyが大逆転で、初優勝を決めた。
  6. 電王戦,なんで勝てたんですか?――「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」第15回は,「BM98」を開発した伝説的なプログラマー・やねうらお氏がゲスト(4gamer.net):”5歳からプログラミングを始め,学生時代はゲームの解析を趣味としていたというやねうらお氏ですが,そんな氏が「BM98」の開発に至った経緯,あるいは電王トーナメントへの参加を決めたいきさつなど,さまざまなことについて語ってもらいました。”
  7. やね裏評価関数とは何か?(Bonanzaソース完全解析ブログ 2014-10-20) :”そうすると、Bonanzaのfv.binをごちゃごちゃやると全く等価な後者の形式の評価関数パラメーターが導けて、KKに応じた定数項がただ一つだけ余分に出てくることが(数学的に)証明できました。これが「やね裏評価関数」の正体です。”
  8. コンピューター将棋の定跡をデザインする (やねうらお – ノーゲーム・ノーライフ 2014-11-14 )”本電王戦はソフトを事前貸出をしてソフトの穴を探すためにプロ棋士側が研究するという、非生産的な行為にプロ棋士の多くの時間が消費される。.. このようなプロ棋士側の非生産的な行為をなんとか生産的な行為に変換できないものかと考えて誕生したのが、やねうらおもてなし定跡である。”
  9. 初代電王、電王戦で活躍した将棋プログラム「Ponanza」が商品化(CNET JAPAN 2014/05/12)(https://book.mynavi.jp/info_news/ponax/
  10. プロ棋士も「強くなりすぎ」と絶句 将棋電王戦FINAL出場ソフトが決定(日刊SPA!2014.11.06):”今回「電王」の称号を獲得したAWAKEは、ディフェンディング・チャンピオンである初代電王Ponanzaを逆転で下しての初優勝。開発者である巨瀬 (こせ)亮一氏は、プロの養成機関である奨励会に在籍していた経験があり、プロ棋士を目指していた人間が、将棋ソフト開発でプロ棋士の前に立ちはだかると いう構図になる。”
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