小保方STAP論文理研調査委員会の他の委員らの論文にもデータ切り貼り疑惑
小保方晴子氏がSTAP細胞作製を報告したNATURE論文の中でデータの捏造、改竄があったことを認定した理化学研究所の調査委員会の委員長を務めた石井俊輔委員長の研究室から出た過去の論文にデータの写真の切り貼りが指摘されたのに続いて、さらに、他の委員らの論文にも研究不正の疑惑が持ち上がるという異常な事態が生じています。これらの指摘を受けて理研は理研所属の2名の審査委員に関しては不正があったかを確認するための予備調査を開始しました。
調査委員委員の一人である田賀哲也教授が所属する東京医科歯科大学でも同様の指摘を受けて予備調査を行い、「不正があったと立証できるものはない」という結果を発表しました。
しかし、どの論文のどの図に関してどのような不正の疑いがあったのか全く報道されておらず、東京医科歯科大学の「不正なし」という判断の根拠も示されていないため、第三者には何がどうなっているのか全くわからない状態です。
論文捏造&研究不正 @JuuichiJigen
細胞画像の縮小版と拡大版を一つのFigure内に掲載しただけなのに、「画像捏造(流用)」ではないか?との言いがかり(見当違い)の告発をされたSTAP論文調査委員の田賀哲也氏が所属する東京医科歯科大学は、既に予備調査を終えて、不正の証拠はなしとして本調査には進まないと発表した模様。4:48 – 2014年5月2日(https://twitter.com/JuuichiJigen/status/462196825127387136)
小保方氏代理人が苦言「STAP論文許されず、委員の論文は許される」(産経新聞 5月3日(土)14時49分配信)
三木氏はコメントの中で「STAP論文は許されず、田賀論文は許されるとすれば、画像の切り張りや引き伸ばしについて許される場合と許されない場合があることになる」と指摘。(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140503-00000540-san-soci)
インターネット上では真っ向から対立した議論があり、情報が錯綜しています。
東京医科歯科大学も、山中伸弥教授や石井俊輔氏のように実験ノートや生データの有無を明らかにし、論文の図の作製においてどのような操作が行なわれたのかをもっと詳細に説明したほうが良いのではないでしょうか?STAP論文捏造疑惑の小保方晴子氏の弁護団の一人、三木弁護士からは何が研究不正にあたるのかを説明してもらいたいという要望が出ており、論文作製における図の取り扱いは現在の日本の科学研究にとって非常に重要な争点になっています。
疑惑が指摘されたが問題はなかったという説明だけでは、論文不正の指摘が「言いがかり」だったのか、それとも不正行為を「もみ消し」たのか、第三者には全くわかりません。不正疑惑を払拭するのに十分な実験ノートや生データとはどのようなものなのか、研究者の常識を知らしめる良い機会です。是非、研究者でない一般の人にも理解できるような、わかりやすい説明をして欲しいものです。
理研調査委3人に論文不正疑惑 予備調査を開始(14/05/02)
【追記】
インターネット上の情報によれば問題視された田賀氏の2004年の論文は、
Takao Setoguchi, Kinichi Nakashima, Takumi Takizawa, Makoto Yanagisawa, Wataru Ochiai, Masaru Okabe,Kazunori Yone, Setsuro Komiya, Tetsuya Taga. Treatment of spinal cord injury by transplantation of fetal neural precursor cells engineered to express BMP inhibitor. Experimental Neurology Volume 189, Issue 1, September 2004, Pages 33–44
であり、疑問を持たれた点の一つは、図2Cが図2Fの一部を拡大したものになっているという指摘でした(http://4.bp.blogspot.com/-R5habHlRKsA/U2OtIn9ypjI/AAAAAAAABVY/f0mNUCtjeZQ/s1600/1.png)。図2の説明文を読むと(http://1.bp.blogspot.com/-fBBP97q90KI/U2O0AD5GCWI/AAAAAAAABVo/xcV1rONjK5s/s1600/2.jpg)、図2Fはこの実験においてMAP2抗体染色(赤色)とGFAP抗体染色(緑色)を行なったことを説明するためのものであり、この実験の中でGFAP陽性アストロサイトが観察されたことが図2Cで示されています。つまり同一の実験結果なので、図2Fの一部(緑色に染色された細胞集団)を図2Cとして用いたことにはなんら問題はありません。疑義を呈した人はおそらくこの論文の図の説明を読まずに勘違いしてしまったのではないかと思われます。
参考
- 3委員の論文にも疑い 理研調査委「画像切り貼り」など (東京新聞 2014年5月2日 朝刊):新たに指摘があった調査委員は、理研の古関明彦グループディレクターと真貝洋一主任研究員、東京医科歯科大の田賀哲也教授。
- 小保方さん論文調査委、新たに3人加工疑惑 研究者5人中4人が調べられる側に (スポーツ報知 2014年5月2日6時0分):同様の論文加工で委員長を辞任した石井俊輔上席研究員(62)を含めると、当初の調査委員の研究者5人のうち4人の論文に疑いが浮上する異常事態となった。
- 止まらない論文狩り STAP調査委メンバーにまた新疑惑 (日刊ゲンダイ 2014年5月1日 掲載):STAP問題以降、日本では「1億総論文狩り」状態だ。
- 委員の論文不正「立証できるものはない」 (日刊スポーツ 2014年5月2日20時8分):医科歯科大は5月1日に予備調査を実施。05年の論文への指摘は、実験ノートに残ったデータから問題ないことを確認した。04年の論文についてはノートは残っていなかったが、同じチームの研究者に聞き取った結果、説明は合理的で問題ないと結論づけた。
- 東京医科歯科大・田賀教授の論文に不正なし(スポーツ報知 2014年5月2日20時14分):田賀教授に関しては、熊本大に在籍中の2004~05年に責任著者として発表した2本の論文に、画像の切り貼りや使い回しをした疑いがあるのではないかと、4月30日に医科歯科大に通報があった。
- 東京医科歯科大学難治疾患研究所幹細胞制御分野 (田賀 哲也 教授)ウェブサイト
- 小保方氏 理研に質問書「ねつ造の解釈説明を」 (NHK NEWSWEB 4月30日 12時47分):三木弁護士は「調査委員会の前の委員長は、小保方リーダーと同じようなことをしながら『不正ではない』としている。どのような行為が不正に当たるのか、規程の解釈を明らかにしてほしい」と話しています。