STAP細胞論文の筆頭著者である小保方晴子氏の雇用契約を理研が更新したというニュースを聞いて絶句した研究関係者も多いのではないでしょうか?
世間一般の人には理解されにくいことですが、年収300万円程度、1年契約という経済的にも精神的にも非常に不安定な状況に置かれながらも真面目に研究に勤しんで結果を出し続けている誠実な研究者が多いのが、日本の研究者社会の現状です。
そして博士号取得後にそのような努力を数年間続けても結局研究職では定職が得られずに科学者としてのキャリアをあきらめざるを得なくなり、この4月から別の職種に就いた人も多いの実情なのです。
職を得ることに関してはそんな過酷な競争を強いられる研究の世界で、研究者の想像を絶するような「不適切なデータの取り扱い」により論文を出した人が、4月からも引き続き理研でPI(PRINCIPAL INVESTIGATOR, 研究室の主宰者)のポジションに残れてしまうというのは衝撃的です。
研究者を雇う立場の研究者や研究所には、健全で公正な研究者間の競争を保証する責務があります。研究不正に対する厳正な対処がなされなければ、それは著しい不公平感を生み出し、真面目な研究者のやる気を失わせ、日本の科学研究を停滞させるでしょう。
参考
- 理研、小保方氏の契約更新…調査結果確定せず (読売新聞YOMIURI ONLINE 2014年04月10日 08時49分):小保方氏が所属する理研発生・再生科学総合研究センターによると、理研の調査委員会がSTAP細胞の論文に不正があったと認定したものの、調査結果は確定しておらず、処分も決まっていないことから、契約を更新した。
- 論文騒動の裏に“理研の利権争い”? (東スポWeb 2014年03月16日 16時00分):小保方さんクラスなら年収約800万円ほどで、75%の家賃補助も出る。
- 理研が落ちた「わな」:再生医療の覇権争い iPS先行で (毎 日新聞 2014年03月19日 16時16分 最終更新 03月19日 16時19分):研究不正の疑いがもたれている小保方(おぼかた)晴子・研究ユニットリーダーは5年契約で、給与と は別に総額1億円の研究予算が与えられている。
- あまりにも異常な日本の論文数のカーブ(ある医療系大学長のつぼやき 2012年06月27日):この図をみると、少し太めの赤線で示されている日本の論文数が、多くの国々の中で唯一異常とも感じられるカーブを描いて減少していますね。
- 研究力シンポの報告(1)”あまりにも異常な日本の論文数のカーブ”revisited(ある医療系大学長のつぼやき 2013年11月17日 ):今回の分析では、このトムソン・ロイター社の論文数のデータにおいても、先進国の中で日本だけが減少していることは明白です。