一生懸命実験しているのに、研究が先に進まないことがあります。その理由として、実験のデザインがそもそも賢くない、”ぬけている”という可能性があります。そんな非効率な実験をしてしまわないための、非常に教育的なツイートやウェブの記事を紹介します。ラボできちんとした教育を受けられない学生でも、いまどきSNSから情報を拾うことができれば救われるかも。
目次
研究するにあたって無駄な実験をしてしまわないための基本的な考え方
「急がば回れ」ということわざが研究においても真理ですね。次のラボミーティングは自分が発表する番なので、それまでに結果を出したいと思って焦って、当たればラッキー的な実験デザインを組んでしまうと、一歩進むつもりが二歩下がるだけです。
複数ステップを踏む実験の場合、各ステップごとに結果を確かめる、各ステップごとにポジコン・ネガコンを置くということが重要です。複数のステップを途中のチェックなしに一気にやってしまうと、うまくいかなかった場合には、結局、一番手前まで戻ってやり直すハメになります。
コントロール実験がうまくいく実験系を立ち上げることができれば、とりあえずそれだけでもラボ内では十分な成果でしょう。
測定系のポジコンとネガコンは取れた。今日は、それだけでも満足に近かった。
— plume (@irplume) 2010年5月18日
僕なんて「実験は基本的にうまくはいかないものだ」とまず考えます、そして上手くいかないことを前提にたくさんのトレースできるコントロールを置いて、実験が上手くいかないにしても必ず情報が得られるように仕組んでおくのです。そして、数回で見たい現象をみる条件を見つけられたりしますね。
— pkm (@tkmpkm1_mkkr) 2019年6月1日
ポジティブ・コントロールがない場合、実験自体がうまく行ってなかった場合でもうまく行かなかったことが分かりません。例えば、温度制御が設定と異なっていた、停電があって、きちんと温度が保持できなかった、試薬を添加したつもりが添加していなかった、試薬自体が不良品だった、というような場合には、実験自体が成り立ってなくて正しい結果が得られません。うまく行かなかったとしても、それは実験系自体の問題であって、アイデアが間違っていたとは限りません。
また、何もしてないネガティブ・コントロールでも、実験の条件によっては一見効果が出る場合もあり得ます。だとすれば、ネガティブ・コントロール無しでできた、と思っても、実際にはできていませんから、実験のアーティファクトで、再現性の無い実験になってしまいます。(コントロール(対照試験)の無い実験に基づく発明の特許性 2013/04/14 2017/02/01 大平国際特許事務所)
研究が成功しないのは
①ポジコンやネガコンがなく、出た結果が実験として成立していない場合
②考えた仮説が検証により、解決できないモノである場合
つまり、しっかりポジコンやネガコンをとって、仮説を細分化し Yes or No で言えるモノにし、積み上げていけばいい!!
— masayuki nakano (@cannakanoM) 2011年10月14日
どうして、実験のポジコン、ネガコンが取れてない実験をやるんだろう・・・?
— hashishu (@Sh_hs) 2008年10月1日
条件はそれでよいのか、ネガコン、ポジコンは正しく置かれているか (はじめての実験ノート: 書くべき必要事項 九州大学付属図書館)
つまりは、適切なポジコンやネガコンを置いた実験をしなさいということです。
PCRにおける対照実験は何か
- ネガティブコントロールのチューブに滅菌蒸留水を 5μL 加えふたをする。
- 必ずポジティブコントロール、ネガティブコントロールを用意し、反応を行う。これにより、毎回の PCR の評価を行うことができ、コンタミネーションやその他の異常に気が付き、時間や費用のロスを少なくすることができる。(PCR 実験の手引き TaKaRa)
ELISAにおける対照実験は何か
抗体を用いた実験においては、コントロールを置くことが必要です。ELISA においても、得られたシグナルを偽陽性から区別するために、また得られなかったシグナルを偽陰性と区別するために、ポジティブ・コントロールとネガティブ・コントロールを置くべきです。またそのアッセイがうまく行かなかった時にコントロールがあれば、トラブルシューティングが容易になります。ここでは ELISA で使用するさまざまなタイプのコントールについて説明します。 参照 ⇒ ELISA において必要なコントロール Abcam
免疫染色における対照実験は何か
免疫染色(IHC)実験では、陽性(ポジティブ)コントロールと陰性(ネガティブ)コントロールを同時に使用することが非常に重要です。人為的なミスがなかったかどうか、あるいは、得られた染色結果が正確かつ妥当であるかどうかを検証することができる、とても有益な情報源です。現在、免疫染色の特異性決定に役立つ免疫染色(IHC)コントロールが6種確立されています。 参照 ⇒ コスモバイオ
PCRやELISA、免疫組織化学のよう定番の実験の場合には何がポジコンで何がネガコンになるのかはわかりやすいと思います。しかし、一般的にポジコン、ネガコンと言った場合、何か一つ決まったものがあるわけではありません。特に、自分で考えた新しい実験であれば、何がポジコンになるのか、何がネガコンになるのかまで自分で考えて、実験を組む必要があります。その辺りの突き詰め方が甘いまま実験をしてしまうと、労多くして得るものが無いという残念なことになります。
実験系を真似することにやっ気になると、何がポジコンかわからなくなりますが、実験系を作るつもりで考えると、おのづと必要なポジコンが出てくるのではないでしょうか?(ポジティブコントロールとは? No.675-TOPIC – 2008/02/13 (水) 22:10:13 Bio Technicalフォーラム)
もっと恐ろしいシナリオとして、面白い結果が得られたと喜んだあとで、ネガコンの実験をやってみたら同じ結果が出てしまったということもあり得ます。
【ついに決定!最優秀人気作品賞】
ついに2016年の「川柳 in the ラボ」最優秀人気作品賞が決定いたしました。惜しくも最優秀人気賞を逃した優秀人気賞の作品もあわせて発表します!https://t.co/EkfHAohm4l pic.twitter.com/cM8pSpEKRj— サーモフィッシャーサイエンティフィック (@ThermoFisherJP) 2016年8月26日
GFP陽性が出たと喜んだら、実は自家蛍光に過ぎなかったというのもこのパターン。
対照実験の重要性
そういえば、大学院に入ったら先輩たちがやたら、「ネガコン」、「ポジコン」という言葉を発していて、何ソレ?と思った記憶があります(卒研のときの記憶がない)。
修士課程・5、6年生の目標
3. ポジティブコントロール、ネガティブコントロールの意味を理解し、各実験のステップにおいてポジティブ・ネガティブコントロールをおくことができる。(分子細胞生化学分野 pharm.tohoku.ac.jp)
分子生物学的研究の基礎を学ぶ際にまずたたき込まれたのは、結果が「正しい」と言えるための厳密さ、すなわちネガティブコントロール(ネガコン)とポジティブコントロール(ポジコン)の重要性です。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で想定されるバンドが出た場合、ポジコンでバンドあり、ネガコンがバンドなしがそろって初めて正しい実験だと言えるということです。バンドがない=結果が陰性、と言えないわけで、特にポジコンの概念は新鮮でした。(自治医科大学医学部同窓会報「研究・論文こぼれ話」その30 同窓会報第84号(2018年7月1日発行))
しかし複雑な組み合わせでサンプル数も多いとつい面倒になりエイとやってしまう。実験そのものがうまくいかなかったり、得られた結果が予想と反した場合、コントロールがないとその結果の解釈が難しく一からやり直しというはめになる。またコントロールはデータの信頼性を増し、人を納得させるためにも必ず必要だ。(実験の3原則(2012-4-7) Yoshimura Lab)
このあたり皆さんどう教育しているか知りたいなあ。
弊社だと一週間好き勝手やってポジコン(ネガコン)がないデータを持ってきたらそのまま人件費その他のロスだからなあ。
このようなレベルの人に自由に実験させたところで時間・経費の無駄になるので、やる前にしっかりと打ち合わせするなあ。— THE-O (@Paptimus_PMX003) 2018年12月2日
一回ならケアレスミスを疑うなあ。二回同じ結果になったら、経験者に見てもらう。誰も頼れないなら、何故失敗したのか理由を考える⇨その考えを検証するポジコン、ネガコンをとった実験をする。この繰り返しすれば、そのうち結論は出る。同じことを何度もやるのはホントに意味ない。
— cdc2kinase (@cdc2kinase) 2016年6月9日
#研究室あるある
実験のたびに現れるポジコンとネガコンの神(先輩)#もしかして自分のやつも流してほしいのか pic.twitter.com/s8mFNGDC8m— ゆるねこイラスト好き主婦ブロガー (@bio_koropochi) 2018年11月24日