日本の科学と技術

理化学研究所中間報告の懐疑点

2014年3月14日の理化学研究所中間報告で最終報告のときには小保方さんも出席するのかという質問に答えて、石井調査委員長は「被告と原告」の関係なので調査委員会と小保方さんが同席しての会見はあり得ないと答えました。中間報告会の冒頭で理研幹部が国民に対して謝罪したことから明らかなように、同じ例えで言うなら納税者である国民が原告で、被告が理研というのが本来あるべき構図です。現在の調査委員会は被告が裁判官になっているようなもので、公正さが期待できません。

今回の調査委員会のあり方に関しては不可解なことがいくつもあります。

まず外部の有識者を交えた調査委員会を立ち上げたと報道されていましたが、理研所属の研究者である石井調査委員長以外にどのような人が調査委員として参加しているのかが明らかにされませんでした。メンバーを伏せられていたのでは調査がどれだけ公正なものなのかが全くわかりません。

6項目に絞って不正の有無を調べるだけ、と調査対象を最初から非常に限定しているのも変な話で、本気で調べるつもりがないのかという疑念が湧きます。

研究不正の有無の判定に関して悪意の有無にこだわっているのも、論点をずらそうとしているように見えます。

今回のSTAP細胞NATURE論文の問題はデータ捏造だけでなく、そもそも論文業績ゼロの人間がなぜ理研でPI(研究室の主宰者)として雇われたのかという理研人事の公正さに対する疑念もあります。

政府から巨額の予算が得られる「特定国立研究開発法人」に指定されるかどうかの瀬戸際にある理研ですから、理研に雇用されている研究者が調査委員長を務める調査委員会が理研に不利な裁定を下すとは思えません。中間報告の会見は理研によって完全にコントロールされているように見えました。

参考

  1. 「STAP」写真流用把握も問題と説明せず(NHK  NEWSWEB 3月13日 19時20分):NHKが関係者に取材したところ、およそ1か月前には、小保方さんと、研究チームの中心メンバーで研究所の副センター長がこの問題を把握 していたことが分かりました。さらに外部の有識者も入った調査委員会のメンバーには、この問題が単なる画像の取り違いと伝えられ、流用の疑いもある重要な 問題だとは説明されていなかったということです。
  2. 組織的隠蔽か? 「STAP細胞疑惑」にフタする理研の論理(日刊ゲンダイ2014年3月14日):この論文で研究の核心部分のひとつとなる写真は、小保方さんの博士論文から流用された疑いが指摘されている。当然、研究の信憑性に関わる重要な問題のはずだが、論文の共著者で理研の笹井芳樹・副センター長は事態を把握しながら、調査委の外部メンバーに「単なる画像の取り違え」などと伝え、流用疑惑を十分に説明しなかったという。
  3. 理研中間報告「肝心な部分が謎」…大隅教授不満(読売新聞2014年3月16日09時13分):(日本分子生物学会理事長の大隅典子・東北大教授は)「理研の中間報告は画像流用など肝心な部分の謎が解明されておらず、非常に残念。調査委員会の委員長が理研内部の人なのも不思議」などと、読売新聞の取材に述べた。
  4. 日々の研究(京都大学理学研究科教授佐々真一氏のブログ 2014-03-14 金曜日):今日の日記で、小保方氏を実名表記に変えたのは、「2/20に笹井氏と小保方氏より「画像の取り違え」として調査委員会に申し出があった」という事実を 知ったからである。これには意図があると考えざるを得ない。調査に対して事実でない説明を述べるのは、科学の作法以前の問題だし、証拠隠滅にもつながる行 為だと思う。
  5. 【辛坊治郎】STAP細胞論文での理化学研究所の中間報告は隠蔽会見! (YOUTUBE)
  6. 「STAP細胞」小保方さんと並ぶキーパーソン 「笹井芳樹」副センター長とは?(弁護士ドットコム2014年03月16日 15:15)

 

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