日本の科学と技術

心理学実験用刺激作成・呈示ソフトウェアの選択肢:PsychoPy, Psychtoolbox, OpenSesame他

刺激作成・呈示用のソフトウェアが開発されたおかげで、必ずしもプログラミングができない人・学生であっても心理学実験、心理物理学実験を実践できる状況が整ってきたと思います。選択肢がいくつかあって迷うため、無料有料問わず研究者に使われているツールを取り上げて、それぞれの特徴をまとめておきます。多くの人が使っているソフトのほうが、資料やサンプルコードが豊富にあって勉強しやすいという事情があるため、プログラミングに自信がなければ、テクニカルサポートが受けられる有料ソフトか、時流に乗った無料ソフトを選択するのが無難でしょう。

 

PsychoPy

ネット上のドキュメントの豊富さで一番、その隆盛ぶりを感じるのが、PsychoPy(さいこぱい)です。

公式サイト:psychopy.org

価格:無料。これはPythonで開発されており、プログラミングが全くできない人でも(グラフィカルユーザーインターフェースBuilderを使用して)とりあえず心理物理学実験の刺激を作ったり動作さることができて、もしプログラミングができる人なら(コードエディタCoderを使って)さらに高度なことができるという特徴があります。

開発者&開発の歴史:Jon Peirce氏が自分の研究室で使うために2002年から開発。他の研究者からの要望が増大したためそれに応える仕様に拡充。2007年にソフトウェアPsychoPy開発に関する論文を発表。2010年から2011年にかけて、学生がプログラミングなしでPsychoPyを使えるようにとBuilderを開発。これによりPsychoPyの利用者が劇的に増加し、利用者数16000人、開発者数総勢70人の規模にまでPsychoPyコミュニティが育ってきている(参照:Building Experiments in PsychoPy)。

Build your first PsychoPy experiment (Stroop task)

PsychoPyのダウンロードとインストール

PsychoPy Builder で作る心理学実験(十河 宏行 著)が参考になります。自分の場合ウインドウズ10のPCを使っているので、https://github.com/psychopy/psychopy/releasesで、StandAlonePsychoPy3と書いてあるウインドウズ用インストーラをクリックしてインストールを行ってみました。すると普通のアプリケーションのように、PsychoPy3がスタートメニュー等に並び、アイコンをダブルクリックすることにより、PsychoPy3のBuilderとCoderが表示されました。

 

PsychoPyを勉強するためのリソース・参考ウェブ記事:

  1. Building Experiments in PsychoPy』PsychoPyの開発者らが書いた入門・実践書
  2. PsychoPyディスカッションフォーラム
  3. 開発者Jon Peirce氏のYOUTUBEチャンネル

  4. PsychoPy Builderで作る心理学実験
  5. PsychoPy講座(ogwlab 関西学院大学)
  6. PsychoPyを使った初学者向けの心理実験環境の構築(スライドシェア)小川洋和 関西学院大学文学部総合心理科学科
  7. 初学者向けの心理実験環境としての PsychoPy 関西学院大学文学部 教授 小川洋和(小特集プログラミングThe心理学実験 日本心理学会)
  8. PsychoPyを使って認知課題を作ってみよう!専修大学人間科学部 国里ゼミ
  9. PsychoPyの実験プログラムのサンプル 井関龍太のページ
  10. PsychoPy Builder で作る心理学実験 リリース 2.1 十河宏行 12 月 18, 2018(PDF)
  11. 『心理学実験プログラミング: Python/PsychoPyによる実験作成・データ処理』十河 宏行 著 朝倉書店 2017年
  12. 【書評】十河宏行著,心理学実験プログラミング:Python/PsychoPyによる実験作成・データ処理(小川洋和)
  13. PsychoPy + Jupyter Notebookで快適な心理学実験・分析環境を構築する Qiita @mytk0u0 2018年03月16日
  14. PsychoPyでじゃんけんプログラム(Python)

 

Matlab with Psychophysics toolbox

PsychtoolboxはMatlabのツールボックスとして開発されていますが、Matlabの無料コピー版みたいな存在であるGNU Octaveでも動くと述べられています。また、マック、ウインドウズ、リナックスに対応しています。ただし、全てのプラットフォームで全部のことができるとは保証されていなくて、基本的にマックとMatlabの組み合わせで使う環境が優先的に開発されている印象があります。Matlabのプログラミングができる人向けです。

公式サイト:psychtoolbox.org

価格:Psychophysics toolbox自体は無料ですが、高価なソフトウェアMATLABの中で使います。ただし、Psychophysics toolboxはMATLABだけでなくMATLABのそっくりさんで無料ソフトのGNU Octaveにも対応しているので、全て無料でできる可能性はあります。ただし、Psychtoolboxの開発にあたって、OCTAVEへの対応がMATLABと同じくらい行き届いているとは思えないので、自分がやりたいことがOctaveでも実行可能かの注意が必要でしょう。

 

Psychtoolboxを勉強するためのリソース

  1. 書籍『はじめよう実験心理学: MATLABとPsychtoolboxを使って』実吉 綾子, 前原 吾朗 著 勁草書房 2015
  2. 個人ブログ Psychtoolboxsをがんばる:心理学、実験、プログラミング
  3. MATLAB & Psychtoolbox Tutorial Part2: Example – Choice RT jianglab UM Psychology Jiang Lab
    YOUTUBE動画シリーズ

 

OpenSesame

公式サイト:osdoc.cogsci.nl

 

PsyScope

無料ソフトで、アップル社のマッキントッシュコンピュータで動作。

公式サイト psy.ck.sissa.it

PsyScope is a program to design and run psychological experiments, used by many experimental labs. It runs on Apple Macintosh computers. http://psy.ck.sissa.it/

 

Presentation

公式サイト:neurobs.com

価格:学生一人99ドルから(参照:ライセンスの価格

 

E-Prime

E-Prime®

 

心理物理学実験を設計する際の注意点

  1. 高い時間精度での視聴覚刺激の呈示と反応データの取得のために必要なハードウェアトソフトウェア 菅野禎盛 経営学論集25(4)63-71 2015年3月 九州産業大学

 

参考(心理学実験・心理物理学実験)

  1. PEPE プログラミング THE 心理実験 心理学ワールドの67号の小特集に関連したページ 心理学ワールドの記事と日本心理学会第78回大会のシンポジウムでは、無償で導入でき、実用性の高い環境として、PsychoPy, Psychlops, Psychtoolbox, Processingの4つについて紹介しています。PsychoPyは関西学院大学の小川洋和先生に、Psychlopsを電気通信大学の中嶋豊先生に、Psychtoolboxを九州大学の黒木大一朗先生と東京海洋大学の草野勉先生に、Processingを京都大学の津田裕之先生に解説していただきました。
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