さて今年も科研費申請の季節がやってきました。まずは、平成31年度公募要領・計画調書要領・研究計画調書等のダウンロードページに行って、平成31年度科学研究費助成事業「科研費」公募要領(PDF)を読みます。今年は去年までと違って何がどう変更されたのか、PDF4ページめからの<平成31年度公募における主な変更点等>は要チェックです。話題に上っていましたが、研究業績のリストを書く欄がなくなったというのはかなり大きな変更ですね。
(1)科研費の研究計画調書について、「研究代表者及び研究分担者の研究業績」欄を「応募者の研究遂行能力及び研究環境」欄に変更する等、様式の見直しを行いました。(31頁参照)研究計画調書の作成に当たっては、公募要領別冊「応募書類の様式・記入要領」を十分確認してください。
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(4)審査の際に審査委員が、researchmap 及び科学研究費助成事業データベース(KAKEN)の掲載情報を必要に応じて参照することとしまし
た(93頁参照)(PDF 4ページ)
業績リストを書く欄がなくなったことに対応してか、リサーチマップを参考にしますよという注意書きが添えられています。リサーチマップの業績欄をしっかりと作っておく必要がありそうです。
さて、どの種目の出すかを決める必要がありますが、種目ごとに研究期間と金額が異なりますので身の丈にあった(=研究計画に見合った)種目を選ぶ必要があります。
種目の選択
新学術領域研究 (研究領域提案型)多様な研究者グループにより提案された、我が国の学術水準の向上・強化につながる新たな研究領域について、共同研究や研究人材の育成、設備の共用化等の取組を通じて発展させる(期間5年、1領域単年度当たり 1,000万円~3億円程度を原則とする)
基盤研究 (S)1人又は比較的少人数の研究者が行う独創的・先駆的な研究(期間 原則5年、1課題 5,000万円以上 2億円以下)
(A)(B)(C)1人又は複数の研究者が共同して行う独創的・先駆的な研究
(A) 3~5年間 2,000万円以上 5,000万円以下
(B) 3~5年間 500万円以上 2,000万円以下
(C) 3~5年間 500万円以下 ※応募総額によりA・B・Cに区分挑戦的萌芽研究【平成28年度公募分まで】1人又は複数の研究者で組織する研究計画であって、独創的な発想に基づく、挑戦的で高い目標設定を掲げた芽生え期の研究(期間1~3年、1課題 500万円以下)
挑戦的研究 (開拓)(萌芽)1人又は複数の研究者で組織する研究計画であって、これまでの学術の体系や方向を大きく変革・転換させることを志向し、飛躍的に発展する潜在性を有する研究 なお、(萌芽)については、探索的性質の強い、あるいは芽生え期の研究も対象とする
(開拓) 3~6年間 500万円以上 2,000万円以下
(萌芽) 2~3年間 500万円以下若手研究 【平成29年度公募分まで】
(A)(B)39歳以下の研究者が1人で行う研究
(A) 2~4年間 500万円以上 3,000万円以下
(B) 2~4年間 500万円以下 ※応募総額によりA・Bに区分
【平成30年度公募以降】博士の学位取得後8年未満の研究者(※)が一人で行う研究 なお、経過措置として39歳以下の博士の学位を未取得の研究者が1人で行う研究も対象(※)博士の学位を取得見込みの者及び博士の学位を取得後に取得した産前・産後の休暇、育児休業の期間を除くと博士の学位取得後8年未満となる者を含む (期間2~4年、1課題 500万円以下)(PDF 9ページ)
そういえば研究計画調書って「枠」がなくなってたんですね、これは以前ネットでも話題になっていましたが、なんだか枠がないのは落ち着きません。
重複制限
府省共通研究開発管理システム(以下、「e-Rad」という。)を活用し、「不合理な重複又は過度の
集中」(5頁注参照)の排除を行うために必要な範囲で、応募内容の一部に関する情報を、他府省を含む他の競争的資金担当課(独立行政法人等である配分機関を含む。)間で共有することとしています。そのため、複数の競争的資金に応募する場合(科研費における複数の研究種目に応募する場合を含む。)等には、研究課題名についても不合理な重複に該当しないことがわかるように記入するなど、研究計画調書の作成に当たっては十分留意してください。(PDF 12ページ)
国が不合理な重複又は過度の集中の排除を謳うわりには、富める研究者がますます富み、貧富の差が拡大しているように思います。地方大学の教授でも基盤研究費が雀の涙ほどの額(10万円台)でしかなく、しかも競争的外部資金が取れなくて苦労しているという新聞記事がある一方で、中央のメジャーな研究機関や大学では莫大な研究費に恵まれて湯水のごとき使い方をしている印象があったりもします。理研のPIが科研費ももらっているのを見ると、この不公平感は何だろうとモヤモヤします。
この指針において「過度の集中」とは、同一の研究者又は研究グループ(以下「研究者等」という。)に当該年度に配分される研究費全体が、効果的、効率的に使用できる限度を超え、その研究期間内で使い切れないほどの状態であって、次のいずれかに該当する場合をいう。
○研究者等の能力や研究方法等に照らして、過大な研究費が配分されている場合
○当該研究課題に配分されるエフォート(研究者の全仕事時間に対する当該研究の実施に必要とする時間の配分割合(%))に比べ、過大な研究費が配分されている場合
○不必要に高額な研究設備の購入等を行う場合
○その他これらに準ずる場合
募集要項には研究費の不正使用に関する注意事項も述べられています。研究不正疑惑がもみ消されて、訂正もされずに宙ぶらりんになっている論文でも、グラントの審査において業績として認めらてしまってよいのでしょうか?審査委員は常識的な判断に基づいて厳正に審査してもらいたいものです。愚痴はそれくらいにして、申請時の重複制限に関する早見表はPDF30ページから掲載されています。受給制限の理解も大事です。
科研費申請の締切日
締め切りを知らないと計画書を書くペースがつかめません。締めきりは、PDF10ページに11月7日(水)
午後4時30分提出期限(厳守)とあります。もちろん各大学で「所内締め切り」それよりずっと早い日時に設定されているので、所内提出日は研究者の所属機関にによりまちまちです。
審査区分
PDF47ページから、審査区分の説明があります。どの区分に出すかによって誰に審査されるかが決まるわけですから、この審査区分の選定は非常に重要だと思います。自分や自分の研究を高く評価してくれる人たちがたくさんいる分野に出すほうが、科研費採択の可能性が高まるはずです。
最終年度前年度応募
下手に少額の研究費を数年間にわたってもらってしまって、重複制限によって新たな申請が出せなくなるのは困るわけですが、最終年度前年度応募という制度が用意されている種目もあります。
継続中の研究課題で、当初の研究期間が4年以上の特別推進研究、基盤研究(基盤研究(B・C)応募区分「特設分野研究」を除く。)又は若手研究の研究課題のうち研究期間が3年以上のものである場合には、研究計画最終年度前年度に新たな研究課題の応募ができます。(応募全般についての質問【Q2108】 現在、来年度も継続する研究課題がありますが、この研究をより発展させるために、別の研究課題を新たに応募したいと考えていますが可能でしょうか。【A】文科省) 太字強調は当サイト
学術振興会と文科省との関係
科研費の申請の準備をしていると、検索結果で学術振興会のウェブサイトに行ったり、文科省のウェブサイトに飛ばされたり、一体どっちが何なのかわけがわかりませんが、募集要領に説明がありました。これで気持ちすっきり。
新学術領域公募
ところで今年は、新学術領域はどのプロジェクトが公募を行っているのでしょうか?文科省のサイト、
平成31年度科学研究費助成事業‐科研費‐(新学術領域研究・特別研究促進費)の公募 公募要領・計画調書のダウンロード
のPDF(全158ページ)、
平成31年度科学研究費助成事業-科研費-公募要領(新学術領域研究・特別研究促進費) (PDF:4439KB)
の24ページ~に公募を行う学術領域の一覧があります。以下、領域名、領域設定期間、公募期間を抜粋しました。
別表1 新学術領域研究(研究領域提案型)のうち「公募研究」を募集する研究領域一覧(39研究
領域)注)各研究領域の概要については、「別表5 新学術領域研究(研究領域提案型)の研究概要」(54頁~73頁)を確認してください。
- グローバル秩序の溶解と新しい危機を超えて:関係性中心の融合型人文社会科学の確立
グローバル関係学 平成28年度~平成32年度2年間- パレオアジア文化史学ーアジア新人文化形成プロセスの総合的研究 パレオアジア 平成28年度~平成32年度2年間
- 都市文明の本質:古代西アジアにおける都市の発生と変容の学際研究 西アジア都市 平成30年度~平成34年度2年間
- 特異構造の結晶科学:完全性と不完全性の協奏で拓く新機能エレクトロニクス 特異構造の科学 平成28年度~平成32年度2年間
- 配位アシンメトリー:非対称配位圏設計と異方集積化が拓く新物質科学 配位アシンメトリ 平成28年度~平成32年度2年間
- ヒッグス粒子発見後の素粒子物理学の新展開~LHCによる真空と時空構造の解明~ 真空と時空 平成28年度~平成32年度2年間
- スロー地震学 スロー地震学 平成28年度~平成32年度2年間
- 生物合成系の再設計による複雑骨格機能分子の革新的創成科学 生合成リデザイン 平成28年度~平成32年度2年間30 300万円以内
- 光圧によるナノ物質操作と秩序の創生 光圧ナノ物質操作 平成28年度~平成32年度2年間
- 複合アニオン化合物の創製と新機能 複合アニオン 平成28年度~平成32年度2年間
- ハイドロジェノミクス:高次水素機能による革新的材料・デバイス・反応プロセスの創成 ハイドロジェノム 平成30年度~平成34年度2年間
- 新しい星形成論によるパラダイムシフト:銀河系におけるハビタブル惑星系の開拓史解明 星惑星形成 平成30年度~平成34年度2年間
- ニュートリノで拓く素粒子と宇宙 ニュートリノ 平成30年度~平成34年度2年間
- ミルフィーユ構造の材料科学-新強化原理に基づく次世代構造材料の創製- MFS材料科学 平成30年度~平成34年度2年間
- 量子クラスターで読み解く物質の階層構造 クラスター階層 平成30年度~平成34年度2年間
- ハイエントロピー合金:元素の多様性と不均一性に基づく新しい材料の学理 ハイエントロピー 平成30年度~平成34年度2年間
- 宇宙観測検出器と量子ビームの出会い。新たな応用への架け橋。 量子ビーム応用 平成30年度~平成34年度2年間
- 新光合成:光エネルギー変換システムの再最適化 新光合成 平成28年度~平成32年度2年間
- スクラップ&ビルドによる脳機能の動的制御 スクラップビルド 平成28年度~平成32年度2年間
- 脳構築における発生時計と場の連携 脳構築の時計と場 平成28年度~平成32年度2年間
- ネオ・セルフの生成・機能・構造 ネオ・セルフ 平成28年度~平成32年度2年間
- ネオウイルス学:生命源流から超個体、そしてエコ・スフィアーへ ネオウイルス学 平成28年度~平成32年度2年間
- 植物新種誕生の原理―生殖過程の鍵と鍵穴の分子実態解明を通じて― 植物新種誕生原理 平成28年度~平成32年度2年間
- マルチスケール精神病態の構成的理解 マルチスケール脳 平成30年度~平成34年度2年間
- 配偶子インテグリティの構築 配偶子構築 平成30年度~平成34年度2年間
- 遺伝子制御の基盤となるクロマチンポテンシャル クロマチン潜在能 平成30年度~平成34年度2年間
- 脳・生活・人生の統合的理解にもとづく思春期からの主体価値発展学 思春期主体価値平成 28年度~平成32年度2年間
- 多様な「個性」を創発する脳システムの統合的理解「個性」 創発脳 平成28年度~平成32年度2年間
- 生物ナビゲーションのシステム科学 生物移動情報学 平成28年度~平成32年度2年間
- 解析に基づく生体シグナル伝達システムの統合的理解 数理シグナル 平成28年度~平成32年度2年間
- 人工知能と脳科学の対照と融合 人工知能と脳科学 平成28年度~平成32年度2年間
- 意志動力学(ウィルダイナミクス)の創成と推進 意志動力学 平成28年度~平成32年度2年間
- ケモテクノロジーが拓くユビキチンニューフロンティア ケモユビキチン 平成30年度~平成34年度2年間
- 時間生成学―時を生み出すこころの仕組み 時間生成学 平成30年度~平成34年度2年間
- ソフトロボット学の創成:機電・物質・生体情報の有機的融合 ロボット学 平成30年度~平成34年度2年間
- ゲノム配列を核としたヤポネシア人の起源と成立の解明 ヤポネシアゲノム 平成30年度~平成34年度2年間
- 植物の力学的最適化戦略に基づくサステナブル構造システムの基盤創成 植物構造オプト 平成30年度~平成34年度2年間
- 発動分子科学:エネルギー変換が拓く自律的機能の設計 発動分子科学 平成30年度~平成34年度2年間
- シンギュラリティ生物学 シンギュラリティ 平成30年度~平成34年度2年間
参照:PDF24~25ページ
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科研費 採択される3要素 第2版
いかにして研究費を獲得するか