日本の科学と技術

厚生労働省が研究不正もみ消しを手助け!?

多額の国家予算が投じられるプロジェクトで不当なデータ改ざんが見つかったので厚生労働省にそれを告発するメールを送ったのに、厚生労働省は調査を始めるどころか、告発された側にそのメールを転送し、不正を隠蔽工作する機会を与えるという大失態を演じていました。

田村憲久厚労相による釈明は「告発として受け止めると厚労省も調査に入らなければいけなくなる」ので内部告発として受理せず、不正が疑われている代表研究者の所属研究機関である東京大学に調査を依頼しました。「第三者的な公平な調査を強く依頼している。中立的な調査でなければ、研究機関として信頼性を失う話。強い思いで調査していただけると思う」と苦しい言い訳をしていますが、研究チーム責任者が所属する機関に公正な調査を期待するのは無理というものです。実際のところ、東京大学は2月3日現在の時点で調査委員会を設立してすらいないようです。

告発者である杉下守弘・元東大教授は「J―ADNI関係者から完全に独立した第三者」による調査と結果の全面公開を要請しており、「多額の国家予算が投じられるプロジェクトということで不当なデータ改ざんの問題に目をつぶれば、J―ADNIの科学的価値は失われ、アルツ ハイマー病患者をはじめ国民に多大な損失をもたらす」と指摘しています。

参考記事

  1. 発表が嘘だらけ「J-ADNI」臨床データ改竄問題が泥沼化 (huffingtonpost.jp 2014年01月17日 10時26分):「改ざんではない。この分野の大規模共同研究は日本では初めてのため、データ処理技術など、研究班に未熟な点があった」と、朝田隆・筑波大教授は説明したのだという。…「この分野の大規模共同研究は日本では初めて」なので未熟というが、これまでに同一分野の多施設臨床研究としてJ-COSMIC、SEAD-Jという国内多施設臨床研究があり、それぞれに成果を挙げている。
  2. 告発の元教授、国に調査要請 アルツハイマー研究改ざん(アピタル 2014年2月 4日):アルツハイマー病研究の国家プロジェクト「J―ADNI(アドニ)」の主要メンバーで研究データの改ざんを内部告発していた杉下守弘・元東大教授が3日、 実名で記者会見した。データを扱ってきた事務局員が疑惑報道後に証拠資料を持ち出したと指摘。全資料を第三者の管理下にただちに移し、国が主体的に調査す るよう求める要請書を研究に予算を出す厚生労働、経済産業、文部科学の3省に送った。
    要請書などによると、杉下氏はデータチェックの責任者の一人。作業中に「データ改ざんというべき極めて不適切な問題」を発見し、昨年11月18日に厚労省に告発メールを送った。ところが厚労省は無断で告発対象の研究チームの責任者に転送し、調査しなかった。
    さらに朝日新聞が1月10日に改ざん疑惑を報道した後、製薬会社から出向している事務局員が研究責任者の指示で杉下氏が保管していた証拠資料を持ち出した と指摘。この職員は不適切なデータ処理に関与した疑いがあり、疑惑がもみ消される恐れがあると判断して実名での告発に踏み切ったという。
  3. 内部告発メール転送、厚労相が謝罪 データ改ざん問題(朝日新聞デジタル 2014年1月21日22時50分):田村憲久厚労相は21日の記者会見で、「許可を得ずにご本人の名前をだして確認行動を行った。大変申し訳ない対応だった。おわび申し上げる」と述べた。告発した本人には20日に職員が謝罪したという。…告発メールは昨年11月18日に厚労省に届いた。同省の担当専門官は翌日、実名入りの告発メールを無断で転送。告発者の名が業界内で知られてしまい、告発 者は「私が悪者で研究の信頼性を損なわせたという評価が研究者の間に広まった。名誉毀損(きそん)だ。厚労省は疑惑をもみ消そうとしているのでは」と反発 していた。
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