サイエンス誌が弘前大学の故 佐藤能啓氏の論文不正に関する詳細な解説記事を掲載

      2018/08/26




サイエンス誌が、弘前大学の故 佐藤能啓氏の論文不正を取り上げています。不正調査に関わった研究者はの1人はこれを史上最大級の研究不正の一つと位置づけています。

Researcher at the center of an epic fraud remains an enigma to those who exposed him
(By Kai KupferschmidtAug. 17, 2018 , 9:15 AM sciencemag.org)

Sato’s fraud was one of the biggest in scientific history. The impact of his fabricated reports—many of them on how to reduce the risk of bone fractures—rippled far and wide. Meta-analyses that included his trials came to the wrong conclusion; professional societies based medical guidelines on his papers. To follow up on studies they did not know were faked, researchers carried out new trials that enrolled thousands of real patients. Exposing Sato’s lies and correcting the literature had been a bruising struggle for Avenell and her colleagues. 

佐藤氏は多作でした。生涯で200以上の論文を発表したそうです。

A team of four researchers has worked since 2012 to expose scientific misconduct by Japanese boneresearcher Yoshihiro Sato, who published more than 200 papers before he died in 2016. The team hasfocused on Sato’s 33 clinical trials, together involving 5894 patients. 
… 
Today, 21 of Sato’s 33 trials have been retracted by the journals or Sato himself;

このサイエンスの記事によれば、佐藤氏は研究不正が明らかになったことで自殺したと見られているそうです。

“What happened with Sato?” I ask. “People say he committed suicide over this,” Saya says. But he doesn’t know whether that’s true.

なぜ論文を捏造したのかという疑問に対する納得のいく説明は得られていません。

But none of that explains why Sato decided to embark on his fraud—and nobody seems to be able to shed much light on that question. “Given the number of papers he published, he must have spent a very large amount of time on them,” Bolland says. “I don’t understand what his gain was. … There must have been some reason to do it.” The Keio University panel is just as puzzled. “We discussed this a lot in the committee,” Saya says. It might have been like a hobby, he suggests. A thrill. Saya uses the word “otaku,” a Japanese term often applied to people who read manga obsessively.

オタクがアニメに興じるように、論文捏造に興じたのではないかという考えが紹介されていますが、どうなんでしょう?データ捏造を面白がってやっているかどうかなど第三者には知りえません。個人的に最もしっくりくるのは、「 捏造研究者の研究能力 < 期待される研究成果 」という説明です。捏造論文に基づいて研究費を得て、さらに論文捏造を繰り返すしかないという悪循環がよく説明できます。

 

このサイエンス誌の記事では佐藤氏の多数の論文において共著者となった慶應大学の研究者の関わりについても紙面を割いており、この事件に関するかなり詳細なレポートになっています。

 

参考

  1. サイエンス誌があぶり出す「医学研究不正大国」ニッポン (榎木英介 | 病理専門医かつ科学・技術政策ウォッチャー YAHOO!JAPANニュース 2018/8/22(水) 15:19) 「嘘の大波(TIDE OF LIES)」と第されたその記事は、サイエンスの2018年8月17日号に掲載された。紙面では見開き2ページに渡り、上述の北斎風の絵が掲載されている。 記事は骨の研究者で医師の佐藤能啓氏を取り上げている。 佐藤能啓氏は、骨折とビタミンなどに関する大規模な臨床試験を行ったとして論文を発表してきた。佐藤氏の論文はほかの論文にも引用され、骨折予防の治療指針の根拠となっていた。その論文にデータの捏造、改ざんという研究不正(研究ネカト)があったのだ。
  2. 「今年の研究不正」をグローバルに振り返る 論文撤回監視サイトの「日本コーナー」18本の記事を中心に(高橋真理子 朝日新聞 科学コーディネーター 2017年12月28日 WEBRONZA) 朝日新聞11月16日付朝刊青森県版で弘前大の調査結果が伝えられているので、まずはこの記事の概略を紹介しよう。 佐藤元教授は2000年11月から03年3月まで弘前大に在籍し、その後に福岡県内の病院に移り、17年1月に64歳で死去した。米国の専門誌が16年6月に元教授の論文3本を取り下げたことなどから問題が発覚、大学が調査委員会を設置して調べ、14本の研究論文にデータ捏造などの不正があったと認定した。
  3. 弘前大学医学部所属教員による研究活動上の不正行為(捏造・盗用)の認定について文科省 報告受理日 平成29年11月16日)弘前大学医学部元教授(在職期間:平成12年11月~平成15年3月)の7本の論文取下げが平成28年6月~9月にマスコミで等で報道されたことを受け、弘前大学で予備調査(平成28年10月12日~平成29月2月1日)を行った。さらに、平成28年11月11日に匿名のメールにより弘前大学及び文部科学省に対して研究不正に関する告発があった。被告発者は、弘前大学医学部元教授及び共著者であり、その告発は平成28年11月9日にNeurology 2016; 87: 1-12に掲載されたレポートに基づくもので、上記の研究者による33本の論文には捏造、改ざんの疑いがあることを指摘したものである。この告発についての予備調査(平成28年11月28日~平成29年2月1日)と前述の予備調査を合わせた本調査委員会を平成29年3月1日に設置し、関係者へのヒアリング及び書面調査によって調査を行った。 調査の結果、研究活動における特定不正行為である「捏造」が13本、「盗用」が1本の論文において行われたものと認定した。
  4. 弘前大医学部の元教授が論文不正 症例数などデータ捏造(佐藤孝之 朝日新聞DIGITAL 2017年11月16日15時00分)弘前大学(佐藤敬学長)は14日、佐藤能啓(よしひろ)・元医学部教授(故人)が筆頭著者として2002~06年に発表した14本の研究論文にデータ捏造(ねつぞう)などの不正があったと発表した。
  5. <弘前大>元教授の論文14本に不正 大学、捏造や盗用認定河北新報 2017年11月15日) データの妥当性に疑いがあるなどとして、弘前大に在籍していた教授の論文が取り下げられた問題で、同大は14日、計14本の論文に捏造(ねつぞう)や盗用があったと発表した。共著者の1人だった佐藤敬学長の不正への関与はなかったとしている。
  6. 弘大元教授の14論文に研究不正陸奥新報 2017/11/15)弘前大学は14日、弘大医学部元教授の佐藤能啓氏が筆頭著者を務め、米国や日本の医学雑誌に掲載(1997~2006年)された論文38本のうち、14本にデータのねつ造や、論文著作者が適正に公表されない不適切なオーサーシップが認められ、研究不正があったと公表した。
  7. 研究活動の不正行為に関する調査結果について弘前大学 2017.11.15 更新)元弘前大学医学部教授(平成12年11月~平成15年3月に在職)の7本の論文取り下げが平成28年6月~9月にマスコミ等で報道されたことを受け、本学で予備調査(平成28年10月12日~平成29月2月1日)を行いました。さらに、平成28年11月11日に匿名のメールにより弘前大学及び文部科学省に対して研究不正に関する告発がありました。被告発者は、元医学部教授及び共著者であり、その告発は平成28年11月9日にNeurology 2016; 87: 1-12に掲載されたレポートに基づくもので、上記の研究者による33本の論文には捏造、改ざんの疑いがあることを指摘したものです。この告発についての予備調査(平成28年11月28日~平成29年2月1日)と前述の予備調査を合わせた本調査委員会を平成29年3月1日に設置し、関係者へのヒアリング及び書面調査によって調査を行いました。
  8. 弘大元教授の論文14本不正認定/弘大、学長責任なしWeb東奥2017年11月14日)弘前大学元医学部教授の男性(故人)が筆頭著者の論文を海外の掲載雑誌が相次いで取り下げた問題で、弘大は14日、論文14本に捏造(ねつぞう)などの研究不正があったと発表した。いずれも佐藤敬学長が共著者となっていたが、不正への関与はなく、研究内容に責任を負う立場にないと結論づけた。
  9. 元教授の論文14本に不正 弘前大が調査結果公表共同通信 2017/11/14 21:15) 弘前大(青森県弘前市)は14日、元医学部教授の男性(今年1月死去)が2002~06年、米国の医師会雑誌に発表した論文14本に捏造や盗用があったと発表した。佐藤敬学長が共著者となっていたが、英文の校正を担当したにすぎず、専門分野が異なるとして「不正には該当しない」と結論付けた。 調査対象は1997~11年に発表された骨折の予防などに関する論文38本。調査の結果、元教授の生前の証言などから、13本に症例数の水増しなどの「捏造」、1本に「盗用」があったと認定した。 元教授は00~03年、弘前大に在籍。その後、福岡県内の病院に勤務し、今年1月に64歳で死去した。
  10. 佐藤能啓、佐藤敬 弘前大学長らの33論文に対する不正や不適切さを調査した論文発表!世界変動展望 2016-11-10 21:30:00)
  11. Systematic review and statistical analysis of the integrity of 33 randomized controlled trials. Neurology December 06, 2016; 87 (23) Mark J. Bolland, Alison Avenell, Greg D. Gamble, Andrew Grey. First published 
  12. 弘前大 論文撤回で学長、第三者委設置へ /青森毎日新聞2016年9月28日 地方版)弘前大の佐藤敬学長が共著者として参加した英文の論文が主著者のデータ疑義などから今年6月に撤回され、佐藤学長のオーサーシップ(論文著者資格)が不適切とされた問題で、佐藤学長は27日の定例会見で「近く学内に第三者委員会を設け、この問題への対応を検討してもらう」と明らかにした。
  13. 佐藤能啓らの不正論文が撤回、計10報!世界変動展望 2016-07-23 00:00:01)
  14. 弘前大 元教授、論文撤回 データ疑義 佐藤学長が共著者 /青森(会員限定有料記事 毎日新聞2016年6月25日 地方版)弘前大の佐藤敬学長(66)が米医師会雑誌などに共著者として発表した英文論文3編がデータの妥当性への疑義などから撤回されたことが24日までに分かった。
  15. 見立病院、弘前大の研究不正の究明はマスコミにかかっている!世界変動展望 2016-06-18 17:35:00)
  16. JAMA取り消し、「不適切な執筆者名」 「今考えると問題」、“名誉著者”の形(2016年6月17日 成相通子 m3.com 編集部)弘前大学学長の佐藤敬氏が最終著者となっていた論文3本が6月3日に、米医師会誌JAMAとInternal Medicineから取り消された問題で、取り消しの理由がデータの整合性と執筆著者の不適切な割り当てなど、科学における不正行為に関するものだったことが分かった。
  17. 弘前大学、佐藤敬学長の論文不正を調査せず!ガイドライン無視!世界変動展望 2016-06-16 21:10:00)
  18. 佐藤能啓、佐藤敬らの論文3報が研究不正で撤回! (世界変動展望 2016-06-03 23:00:00)佐藤能啓(Yoshihiro Sato、医療法人 昌和会 見立病院 元副院長、元弘前大学教授)、佐藤敬(Kei Satoh、経歴)弘前大学学長らの論文3報が研究不正で撤回された。
  19. 佐藤能啓(Yoshihiro Sato)が筆頭、責任著者で慶応大、弘前大との共同研究論文に不正疑義! JAMAが懸念表明(世界変動展望 2015-05-21 21:10:56)

 


当初この位置に書いた記事は、独立した記事にしました。

⇒ 東大医論文(5)医学系論文に関する報告がまだ済んでいない東大



 - 科学者の不正行為, 論文データ捏造