東大医論文(1)東大総長に聞いてみた

      2018/06/10




東大医学部のフェイク論文がなぜ不正にならないの? (1)東大総長に聞いてみた

2016年8月にOrdinary_Researchersと名乗る研究者たちが、東大の大規模な論文不正を告発しました(記事)。告発文書は第三者の手でインターネット上にアップロードされており、誰でも閲覧できます(記事)。東京大学は2017年8月1日に記者会見を行い、不正調査委員会の調査結果の結論を公表しました。調査は理学系と医学系とで別々に調査グループが組織され、理学系(分子細胞生物学研究所(分生研)の渡邊研究室)の論文は不正と認定され、ラボメンバーが全員離れ研究室は事実上お取り潰しとなりました。一方、医学系の5人の教授には不正なしの裁定が下されました。新聞やテレビの報道では分生研の不正認定が大々的に取り上げられ、医学系論文に関する不可解な裁定を批判的に伝えたメディアは皆無でした(記事)。

こうして、大きな謎が残りました。告発文書を読む限り、悪質性において分生研の論文に勝るとも劣らないようにみえた医学系の論文の数々が、なぜ全て不正なしとされたのか?なぜ、理学系と医学系で天と地ほどの扱いの差があるのか?不思議でならないのは、報道資料や報告書本文で開示されている部分を読むだけでも、「これって不正だよね」としか考えられないようなデータの取り扱いの事実が列挙されているにもかかわらず、結論だけは不正なしとされていることです。

 

東大の説明「オリジナルデータと再現データが一致しない論文」では、研究者以外の人には一体何のことかわかりにくいので、ここではわかりやすく「フェイク論文」と呼ぶことにしましょう。実際の実験で得られた数値とは異なる数値を報告した論文だからフェイク論文、要するに「発表内容≠真実」ってことです。

このフェイク論文がなぜ研究不正とは見なされないのかが、自分には謎で仕方がありません。このニュースを最初に知ったとき、データを捏造して論文の図を作った人間は当然、直ちに研究の世界から叩き出されるだろうと思いました。それが、どうしたことでしょう。東大の記者会見によれば、「医学部のほうには、不正行為などどこにもなかったよ」、というではありませんか。「そんなアホな?」という話です。実験で得られた数値とは異なる数値からなるグラフを描いてネイチャーなどの論文を出しておいて、不正じゃない?研究費を何億円も使って、いったい何やってんの?冗談じゃないよ。そんなことを認めたら、まじめに実験してるほかの研究者は一体なんなんだ?という激しい憤りを感じたわけです。

わかりやすく例えて言うなら、マラソンの42.195kmのレースで、一部の選手が途中を車で移動してたようなものです。でも不正じゃないから、記録を認めるとか言い出したら、競技が成立しません。別のたとえをするなら、勤勉な労働者に混じって、ニセ金を刷って使っている奴がいる、みたいな感じです。それくらいの悪質度です。いや、研究者の感覚でいえば、もっとかもしれません。データ捏造というのは、個人的には「強盗殺人」とかの凶悪犯罪のニュースを見たときと同じおぞましさを感じます。ところが、東大の現執行部は一切、これらを研究不正とはみなさないと言うのです。あなたは、人にお金を支払ってもらうときに、日本銀行が発行した1万円札のかわりに、白い紙に手描きで1万円て書いたものを「ハイ、一万円」って手渡されて、受け取れますか?しかも、日銀が「ソレ、全然、問題ナイヨ。」とか言い出したらどう感じます?普通、ぶったまげますよね?それと同じことが今の日本の科学研究の世界で起きているということです。それも、東京大学医学部です。信じられないというなら、ご自分の目で確かめてください(⇒記事)。

東大医学部からフェイク論文がぞろぞろ出てきたのに「不正なし」とされたら、まあ、誰だって、「なんでだよ?」と思いますよね?自分も「そんなん、ありえんだろ?!」という思いがどうしても消えないので、思い切って、「なんで?」って東大に聞いてみました。東大医学部の先生や東大総長に面識はありませんから、「不正調査したときの調査結果見たいんだけど?」、と書面でお願いしたわけです。すると、さんざん待たされた挙句、何ヶ月もたってからようやく送られてきました。で、送られてきた文書を見たら、どのページもどのページも墨塗りで真っ黒なのです。「なんだよこれ、全部真っ黒で読む場所がほとんど無いじゃん!」と落胆させられました。

隅塗りでない部分をみてみると、Ordinary_Researchersが指摘した疑惑論文のうち、一部に関しては、論文投稿後に、雑誌社のほうで編集のミスがあって図がずれていたそうです。もちろん、それは研究不正ではありません。しかし、東大の報告書は「ほら!単純なミスでした」という部分を得意げに全面に出して、あたかも不正が全くなかったかのように見せようとしているように見えます。

東大医学部のフェイク論文はなぜ不正じゃないの?という疑問に答えるためには、調査報告書を隅々まで読む必要があるわけですが、東大総長さんの回答は、「見せられません」だったというわけです。「法人文書開示決定通知書」という書面上の話ですが。調査報告書は、本来、東大が納税者に報告するためのものです。民主国家なら当たり前のことです。研究費の出所は税金です。毎年毎年、東大にどれだけの税金が投入されてると思いますか?運営費交付金800億円とか、科研費が200億円とか、途方もない金額です。ほかの大学とかと比べたら、ダントツに恵まれた研究環境を享受しているのです。ところが、報告書の公開部分だけ見ても、わかりやすい言葉で言い換えれば、「ほとんどの場合、測定値と論文のグラフの数値は合ってなんかいませんよ」とか、「グラフはテキトーに手描きですよ」とか、「エラーバーは手でずらしましたよ」とか、あげくの果てに、「医科学研究ではそんなの通常ですけど?」などと、まともな研究者なら想像を絶するような内容が書かれています。ここまで出鱈目なことをやりたいほうだいやって論文出していて、研究不正じゃありませんって?いや、それはいくらなんでもありえんでしょ?というのが一研究者としての自分の感想です。まあ、100万歩譲って、これらが不正じゃないと言い張るのであれば、東大は調査報告の全容をきちんと公開すべきです。そうしないと、税金が無駄使いされていないかどうかを納税者がチェックしようがありません。市民によるチェックを不可能にしてたら、日本は民主主義の国とはとても言えません。

⇒ 東大医論文(2)行動なき言葉は無益である

記事更新・変更メモ 20180610 一部削除、口調をですます調に改め

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