東大医 異常な論文図表作成でも不正なし

      2018/10/09




基礎医学 捏造科学に 乗っ取られ (詠み人知らず ラボ川柳)

年間何百億円もの研究費(=税金)を使っている東京大学なのですから、論文不正疑惑に関する調査報告書を納税者に対して全て公開すべきです。しかし、東京大学のウェブサイト上では22報論文に関する調査報告の骨子のみしか公開されておらず、医学研究科関係の記述は、「申立のあった5名について不正行為はない」の1行のみでした。Ordinary_Researchersによるデータ捏造疑惑の指摘は詳細かつ膨大で、説得力のあるものであり、それに対する東京大学の回答が「不正行為はない」の7文字だけというのは、あまりにも人を馬鹿にしすぎで、納税者に対しても、研究コミュニティに対しても説明責任をまったく果たしていません。

22報論文に関する調査報告書の本文はほとんどが墨消しされており、


22報論文に関する調査報告書

研究不正が本当にないのであれば一体何を隠す必要があるのか首を傾げたくなります。真っ黒に塗られた報告書なんて怪しさ満載ですが、墨消しされていない部分だけに限ってみても、見逃すことのできない異常な説明が目に付きます。たとえば、指摘事項が生じた原因として、

④ Microsoft Excelその他のソフトでグラフ化したものをもとに、図をMicrosoft Power PointやAdobe Illustrator等の作画ソフトで描く過程で生じたもの(作画ソフトにコピーしたものを貼り付けずに、最初から手作業で描画したもの)(引用元:22報論文に関する調査報告書 太字強調は当サイト)

ソフト間のコピーの際にグラフがずれたというだけでなく、コピーすらしていなくて手作業でグラフを描いていたものもあるというのですから驚愕させられます。小学生じゃあるまいし、研究者としてトレーニングを受けてきた人間が、いや、普通の高校生や大学生であっても、こんな馬鹿げたことはやらないでしょう。これは「研究者としてわきまえるべき注意義務を著しく怠った」ものであり、これが研究不正に認定されないというのは、信じがたいことです。PCを用いて実験データをグラフ化することが研究者の常識である以上、「手作業でグラフ作成=データでっちあげ」以外の解釈が自分には思い浮かびません。夏休みの宿題は全部やったけど、登校途中に全部ドブに落としてなくしたと言い出した小学生の言い訳をやさしく認めてあげた先生みたいで、大人が思いつかない言い訳を繰り出す小さな子供相手なら良いのかもしれませんが、プロの研究者相手に何やってんの?という話です。

ちなみに、ソフト間のコピーの際にグラフがずれたという言い訳にしても、グラフがずれるとわかっているのならそのような操作自体が不適切だというだけで、まったく正当化されません。グラフ作成と論文用の最終の図作成までを一つの統計ソフトを用いて行なえば済むだけの話です。エクセルとパワーポイント以外のソフトが買えない貧乏ラボならまだしも、何億円もの研究費を得ている東大医学部のラボで、こんな言い訳は通用しないでしょう。

オリジナルデータの数値に基づきエラーバーをひくと、エラーバーがグラフのY軸の上限値を超えてしまうという場面で、エラーバーの上端をY軸の上限値にとどめてしまった (引用元:22報論文に関する調査報告書 太字強調は当サイト)

また、エラーバーがグラフのY軸の上限より大きくなったら、単純にY軸の上限を上げればいいだけの話で、勝手にエラーバーを短くする(=実験データの改竄)など有り得ません。これも、「研究者としてわきまえるべき注意義務を著しく怠った」とみなすべきでしょう。

数値の入力ミスという説明に関しても、

(6)⑥ グラフ作成の前提作業として、オリジナルデータの数値をグラフ作成ソフトに入力する過程において、誤った数値が入力されたもの

正しいデータに基づき作成された図と誤ったデータが入力されて作成された図とを比較したところ、論文の結論に影響を与えるような大きな「ずれ」ではないことが確認された。したがって、著者らの行為に、不正行為としての改ざんはない。(引用元:22報論文に関する調査報告書 太字強調は当サイト)

”大きな「ずれ」はない”という曖昧な表現をしており、正しいデータで再計算したときに、有意差があったのかなかったのかという疑問にきちんと答えていません。逃げ道を探したような日本語になっています。「論文の結論に影響を与える」かどうかと、「研究不正の有無」とはまったく別の次元の話であり、「著者らの行為に、不正行為としての改ざんはない」という結論を導く根拠には全くなりません。この説明はゴマカシもいいところです。誤った数値を入力することと、数値をでっち上げることとの区別は第三者にはつきませんから、万人が納得できるような具体的で詳細な説明があってしかるべきです。

そもそも、これらの説明がどの論文のどの図に該当するのかすら公表されておらず、「不正行為」と「不正とまではいえない行為」とをごちゃまぜにして誤魔化している可能性があります。東大の発表のやり方に関しては、なんといってもこれが一番深刻な問題です。なぜなら、記者会見での説明や配布する報道資料には程度の軽い事例の詳細だけ代表例として示しておけば、いくらでも不正の程度を印象操作できてしまい、もはや第三者には判断のしようがないからです。全ての指摘箇所に関する個別の説明がない限り、報告の責任を果たしたとはいえません。もっと強く言うなら、「個別の説明がない=隠蔽している」ということです。

部局調査においては、実験ノート、オリジナルデータが全部又は一部失われた場合であっても、関連する実験の実験ノートその他のデータ・記録の存在から論文の内容に近い実験が行なわれていることが確認された。部局調査の結果をふまえ、調査委員会は、全ての論文について、実験は実施されたものと認められ、本件においては捏造はないと判断した。(引用元:22報論文に関する調査報告書 太字強調は当サイト)

実験ノートやオリジナルデータが確認できていないものがあるにもかかわらず、「全ての」論文について実験は実施されたものと認められるというのは、論理的に破綻していて呆れてものも言えません。「実験ノートが存在しない」=「捏造の可能性が生じている」と考えるべきです。「論文の内容に近い実験が行なわれていること」など、捏造でない根拠にはまったくなりません。「論文の図と同一の条件で行なわれて同一の結果が得られた実験だが論文の図には使われていないもの」なら、捏造の疑いを晴らすことになりますが、近い実験という言葉も曖昧で意味不明ですし、その実験結果と疑惑のある論文の図の示す内容との関連性が説明されていない以上、この報告書の文面はまったく意味をなしません。論文では有意差が出たという結論だが、実験ノートに残っていた「関連する」実験結果では有意差は出ていないという場合も、この報告書のこの説明に該当してしまうわけですから、大きなゴマカシがあります。捏造の疑いを晴らす根拠がまったく示されていないにもかかわらず、捏造はないと判断しましたとムチャなことを言っています。

 

論文の図に示された数値が真正なものかどうかに関して言えば、著者らは、

指摘事項のうち論文のグラフに関する指摘については、著者らに対し、まずは申立者の指摘する、「グラフやそこから再現される数値が不自然である」という点についての意見を求めた。また、オリジナルデータの有無と、これが存在する場合には再現データとオリジナルデータとが一致しているか否かの確認を求めた。その結果、著者らの回答のほとんどが、「雑誌に掲載された論文の図及び再現データ値を確認したところ、申立者の指摘する事象がみられた」というもので、また「再現データとオリジナルデータは一致していない」というものであった。 (引用元:22報論文に関する調査報告書 太字強調は当サイト)

真正ではないと認めています。論文の図の示すものが、実験で得られた数値ではない(=つまりデタラメ)と論文著者ら自らが認めているのなら、論文の修正や撤回が直ちに行われるべきであり、1年以上も放置というのは誠実さに欠けます。これらの論文がいまだに「生きている」ということは、彼らはこれらの出鱈目な図表の論文業績に基づいて今後さらに何億円もの巨額の研究費を獲得していくことができるわけで、放置などもってのほかです。

報告書の大部分を墨消しして隠すなど、とんでもない話ですが、読める部分をざっと見ただけでもこれまで述べたように矛盾に満ちた報告書になっています。科学者である調査委員が作成した報告書にもかかわらず、非科学的で、論理もへったくれもない、国語的にも意味不明な、読んでいて痛々しくなる言葉の羅列にしかなっていないのは、一体どういうことでしょうか?私の個人的な仮説ですが、外部調査委員らは東大執行部からの要請により、不正があるにもかかわらず不正なしという結論ありきで無理やり報告書を作成させられたから、こんな恥ずかしい報告書になったのではないかと想像します。

調査報告書は、本来、指摘された論文の図ひとつひとつに関して、オリジナルデータの有無や論文データとの一致・不一致、有意差の有無の計算などを報告すべきであり、その情報がないと研究不正の有無の判断が研究者コミュニティにはできません。調査報告書の本文をウェブ上で公開しなかったり、調査報告書の本文のほとんどを黒塗りにしてしまう行為は、「隠蔽工作」にしか見えませんが、東京大学執行部の人たちはいったい何を隠蔽したいのでしょうか?

22報論文に関する調査では、東京大学分子細胞生物学研究所(分生研)の不正疑惑と、東京大学医学部の不正疑惑に関して、別々の調査委員会が立ち上げられて、それぞれ理学系の先生と医学系の先生が調査委員長を務めました。分生研の調査が極めて厳格、公正に行なわれたことは報道などからわかります。それに比べると、医学系の調査は「不正ではないから報告書は公開しない」という屁理屈で逃げ切ろうとしているようにしか見えません。黒塗りになっていないわずかな部分を見るだけでも、医学系論文の杜撰さ、でたらめぶりがわかります。理学系研究者も医学系研究者も同じサイエンスという土俵で生きており同じ学術誌に投稿する以上、同じモラルスタンダードが適用されるべきです。医学部に所属する研究者だけは、実験データと無関係なグラフを手作業で作っても研究不正とみなされないなど、絶対にあってはなりません。分生研の調査委員会が行なった調査と同じ厳格さをもって、医学系疑惑論文の全ての調査をやり直すことが望まれますが、まずは、東京大学は報告書の全文を包み隠さず直ちに公開し、研究者コミュニティによる判断を仰ぐべきです。

 

以下、「22報論文に関する調査報告書」(スキャンされた画像)一部を手入力で写したもの。ただし、■■■■は墨消しの部分があること示す

第3.調査結果(医学系研究科関係)
1.はじめに(調査の概要)
医学系研究科関係の調査について、調査委員会は、部局調査で認められた事実を前提に、不正行為の有無の判断を行なった。その調査結果は次のとおりである。

2.指摘事項の概要
まず、申立者のしてきする事項については、大きく次のように整理できる。
A)グラフのエラーバーの長さや位置、点の配置等の不自然さ
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B)「再現データ」(数値)の不自然さ
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C)画像の加工
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D)データ数の不一致
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3.指摘事項の特徴と本調査の手順
(1)2.A)、B)について
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そこで、部局調査においては、指摘事項のうち論文のグラフに関する指摘については、著者らに対し、まずは申立者の指摘する、「グラフやそこから再現される数値が不自然である」という点についての意見を求めた。また、オリジナルデータの有無と、これが存在する場合には再現データとオリジナルデータとが一致しているか否かの確認を求めた。
その結果、著者らの回答のほとんどが、「雑誌に掲載された論文の図及び再現データ値を確認したところ、申立者の指摘する事象がみられた」というもので、また「再現データとオリジナルデータは一致していない」というものであった。
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(2)2.C)について
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(3)2.D)について
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4.捏造の有無
(1)部局調査においては、グラフやそこから再現される数値の不自然さ、画像の不自然さ等の原因の調査にあたっては、まずは捏造か否かを判断するため、著者らに対し、実験ノート、オリジナルデータの提出を求め、これらが提出できない場合にはその理由と、実験を実施していることを確認できる資料の提出を求めた。その結果、多くの実験に関しては、その実施が実験ノート、オリジナルデータから確認できた。他方で、論文発表後、実験ノート、オリジナルデータが全部又は一部失われてしまい、その確認ができなかったものも存在した (実験ノート、オリジナルデータの確認はできなかったものは、論文発表後、長いものでは13年以上、短いものでも5年以上経過していた)。

(2)研究資料の保存に関する規則、ガイドライン等と本調査について
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(3)その結果、部局調査においては、実験ノート、オリジナルデータが全部又は一部失われた場合であっても、関連する実験の実験ノートその他のデータ・記録の存在から論文の内容に近い実験が行なわれていることが確認された。
部局調査の結果をふまえ、調査委員会は、全ての論文について、実験は実施されたものと認められ、本件においては捏造はないと判断した。
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しかし後述するように、論文の図を作成するにあたって、医学系・生物学系研究者間では「トレース」等手作業による作図は許容され、通常に行なわれている。
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5.指摘事項が生じた原因 (改ざんについて)
次に、申立者の指摘する事項について、改ざんによるものか否かを検討するにあたり、指摘事項が生じた原因を調査したところ、大きく整理すると次のような原因が確認された。

A)グラフのエラーバーの長さや位置、点の配置等の不自然さ
① オリジナルデータをMicrosoft Excelやその他のソフトでグラフ化したあと、コピーして、Microsoft PowerPointやAdobe Illustrator等の作画ソフトの画面上にペースト(貼り付け)した過程で生じたもの(他には意図的な操作を加えていない)

② Microsoft Excelその他のソフトでグラフ化したものを元にした図を、Microsoft PowerPointやAdobe Illustrator等の作画ソフトで描く過程で生じたもの(一旦作画ソフトにコピーを貼り付け、それを手作業でトレースし、その後、コピーし貼りつけたグラフ線等を削除するという作業が行なわれる)

③ ②と同様にMicrosoft Excelその他のソフトでグラフ化したものをもとに、図をMicrosfot PowerPointやAdobe Illustrator等の作画ソフトで描く過程で生じたが、黒塗り等されて可視化されない部分については、正確にトレースを行なっていないもの

④ Microsoft Excelその他のソフトでグラフ化したものをもとに、図をMicrosoft Power PointやAdobe Illustrator等の作画ソフトで描く過程で生じたもの(作画ソフトにコピーしたものを貼り付けずに、最初から手作業で描画したもの)

B)再現データ(数値)の不自然さ
⑥ グラフ作成の前提作業として、オリジナルデータの数値をグラフ作成ソフトに入力する過程において、誤った数値が入力されたもの

C)画像の加工
⑦ 出版社による図の編集過程で生じたもの
⑧ 作図者自身が行なったもの

D)データ数の不一致
⑨ グラフ作成の際に、目視できないデータのグラフ化を省略したもの

6.「改ざん」の有無
上記①~⑨の整理に従って、改ざんの有無について、当調査の結論を記すと以下のとおりとなる。なお、具体的な図についての結論は、別表1のとおりである。

(1)① オリジナルデータをMicrosoft Excelやその他のソフトでグラフ化した後、コピーして、Microsoft PowerPointやAdobe Illustrator等の作画ソフトの画面上にペースト(貼り付け)した過程で生じたもの(他には意図的な操作を加えていない)
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Excel等のソフトでグラフを作成し、これをMicrosoft PowerPointやAdobe Illustratorに貼りつけるというのは、論文作成の通常の作業であるが、本調査の結果、その作業の過程で、不可避的に、論文の図から再現される再現データとオリジナルデータに差が生じることがわかった。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
したがって、この場合に、著者らには「真正でないものに加工」したという行為はなく、改ざんはない。

(2)② Microsoft Excelその他のソフトでグラフ化したものをもとに、図をMicrosoftPower PointやAdobe Illustrator等の作画ソフトで描く過程で生じたもの(一旦作画ソフトにコピーを貼り付け、それを手作業でトレースし、その後、コピーし貼りつけたグラフ線等を削除するという作業が行なわれる)

「トレース」自体はExcel等のソフトで作成したグラフのままでは見づらい場合など、より見やすいグラフを作成するために、医学・生物学研究者の間では通常に行われている作業である。手作業であるため、Excel等のソフトで作成したグラフを完全に正確にトレースすることは不可能であり、
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その結果、②の方法で作図された図については、通常のトレース作業が行なわれたのみで、改変を加える行為や、重大な不注意により不正確な作図がなされた事実はないこと、生じたずれは通常の手作業によって生じる程度のずれであり、上記の①で示す調査と同様、指摘されなければその差に気がつかない程度のものであって、明らかに不正確な作図がなされたものとはいえないことが確認された。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
したがって、このトレースで作成された図についても、改ざんはない。

(3)③ ②と同様にMicrosoft Excelその他のソフトでグラフ化したものをもとに、図をMicrosfot PowerPointやAdobe Illustrator等の作画ソフトで描く過程で生じたが、黒塗り等されて可視化されない部分については、正確にトレースを行なっていないもの
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本件申立者のように、論文の図からベクトルデータを抽出して隠れているデータを読み起こすような形で論文を読むことは、研究者間においては想定されていない。実際に、部局内調査班の調査によっても、作図者らは、グラフのエラーバーの「見えない」ことを前提に、そこにエラーバーの一部を埋め込む等の作業を行なっていたことが確認された。
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したがって、可視化されていない部分に隠されたデータについては、「研究成果の作成及び報告」にはあたらないから、「不正行為」としての改ざんはない。
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(4)④ Microsoft Excelその他のソフトでグラフ化したものをもとに、図をMicrosoftPowerPOinstやAdobe Illustrator等の作 画ソフトで描く過程で生じたもの(作画ソフトにコピーしたものを貼り付けずに、最初から手作業で描画したもの)
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オリジナルデータの数値に基づきエラーバーをひくと、エラーバーがグラフのY軸の上限値を超えてしまうという場面で、エラーバーの上端をY軸の上限値にとどめてしまったというものであった。
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棒グラフの棒(平均値を示す)の大きさは、正確なオリジナルデータに基づくものとなっている。そして、論文の結論としては、2つのグラフが示す2群間の統計的有意差が重要であり、オリジナルデータに基づく統計計算の結果も、論文での記載どおりであった。また、部局内調査班は、本件論文と同様作図者が筆頭著者となっており、グラフを用いて作成されている論文のうち最近の10報について、エラーバーをY軸の上限値でとどめ短くするというような不正確な作図が行われていないかどうかを確認したが、本件と同様の不正確な作図は他の論文では認められなかった。したがて、調査委員会としては、本件作図者は、常習性があるものでなく、ケアレス・ミスであると考え、不正行為としての改ざんにはあたらないとの結論を出した。
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(5)⑤ グラフのエラーバーの長さや位置、点の配置等の不自然さが、出版社による図の編集過程で生じたもの
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出版社の編集過程において生じた「ずれ」であり、作図者が「真正でないものに加工」したものではないから、改ざんはない。■■■■■

(6)⑥ グラフ作成の前提作業として、オリジナルデータの数値をグラフ作成ソフトに入力する過程において、誤った数値が入力されたもの
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その結果、誤った数値の入力は、全体のうちの一部の実験値の入力漏れ等のケアレス・ミスによって生じたもので、不注意ではあるものの意図的なものではなく、そこに著しい注意義務の懈怠もないことが確認された。また、正しいデータに基づき作成された図と誤ったデータが入力されて作成された図とを比較したところ、論文の結論に影響を与えるような大きな「ずれ」ではないことが確認された。
したがって、著者らの行為に、不正行為としての改ざんはない。

 

参考

  1. 記者会見「22報論文の研究不正の申立てに関する調査報告」の実施について 平成29年8月1日 東京大学
  2. 22報論文に関する調査報告書

参考(分析的な報道記事)

  1. 有力者に忖度する東大論文不正調査 公正な研究の壁に ( College Cafe by NIKKEI 2017.10.06) これに対し医学研究科の5教授の論文については厳しい意見が出なかった。各教授は学協会の要職を歴任するなど日本を代表する研究者で、その研究室の名声に傷をつけたくない――そんな配慮が働いたかのようだ。西日本の国立大学の生命科学系の教授は「有力研究者を忖度(そんたく)した調査結果みたいだ」と感想を漏らす。
  2. メールマガジン Vol.174 東大研究不正調査発表~医学部教授をおとがめなしにした東大が失ったもの (医療ガバナンス学会 榎木英介 2017年8月18日 06:00) Ordinary_researchersの告発文と資料とを突き合わせて、研究不正ではないシロだったことが分かるのは、高柳広教授らの論文のFACSプロットの不自然な図が論文誌の編集過程で生じたことだけ。あとは多少生データと称される数値が書かれた図があるのみで、検証が不能だ。
  3. 東大研究不正調査、医学部教授おとがめなしのカラクリ(8月4日東大公開資料追加)(榎木英介 病理専門医かつ科学・技術政策ウォッチャー YAHOO!JAPANニュース 2017/8/2

参考(Ordinary_Researchersの告発文書)

  1. 告発文1 5cvq.pdf (12ページPDF はじめに~ 2016年8月14日)
  2. 告発文2 5cvr.pdf (5ページPDF 研究資金リスト 2016年8月14日)
  3. 告発文3.pdf (52ページPDF  不自然なデータの指摘 2016年8月14日)
  4. 追加の告発文書  (2016年8月29日)
  5. 東大医学部の研究不正の告発 (世界変動展望 2016-08-31) 東大医学部の研究者の研究不正を告発する文章が出回っているという。

参考(疑義を呈された医学系論文)

Ordinary_Researchersも東京大学も、告発対象となった論文リストを公表していません。しかし、トップジャーナルに論文が掲載されるなどの業績があると、数億円という規模の研究費獲得につながるわけですから、このような重大が疑義のある論文が何かを一切知らされないのは、研究者間のコミュニケーションが著しく阻害されて、他の研究者が多大な不利益を被っている状態だと思います。このような考えから、当ウェブサイトでは告発文書に掲載された論文リストを転載しています。ただし、東京大学が個別の調査報告をしないため、疑義を呈された以下の医学系論文のうち、どの論文に関しては疑いが晴れたのかがわかりません。読者自身でご判断ください。

東大医学系4研究室11報に疑義 予備調査へ」、「2016年8月29日にOrdinary_researchers が告発した論文のリスト(東京大学2研究室11報)」より再掲。

門脇 孝 教授の研究室から発表された論文

(東京大学医学部付属病院 糖尿病・代謝内科 門脇研究室ウェブサイト)

  1. Nature 2003 Jun 12;423(6941):762-9. Yamauchi T, Kamon J, Ito Y, Tsuchida A, Yokomizo T, Kita S, Sugiyama T, Miyagishi M, Hara K, Tsunoda M, Murakami K, Ohteki T, Uchida S, Takekawa S, Waki H, Tsuno NH, Shibata Y, Terauchi Y, Froguel P, Tobe K, Koyasu S, Taira K, Kitamura T, Shimizu T, Nagai R, Kadowaki T. Cloning of adiponectin receptors that mediate antidiabetic metabolic effects. 
  2. Nature Medicine 2007 Mar;13(3):332-9. Epub 2007 Feb 1. Yamauchi T, Nio Y, Maki T, Kobayashi M, Takazawa T, Iwabu M, Okada-Iwabu M, Kawamoto S, Kubota N, Kubota T, Ito Y, Kamon J, Tsuchida A, Kumagai K, Kozono H, Hada Y, Ogata H, Tokuyama K, Tsunoda M, Ide T, Murakami K, Awazawa M, Takamoto I, Froguel P, Hara K, Tobe K, Nagai R, Ueki K, Kadowaki T. Targeted disruption of AdipoR1 and AdipoR2 causes abrogation of adiponectin binding and metabolic actions.
  3. Diabetologia 2008 May;51(5):827-35. doi: 10.1007/s00125-008-0944-9. Epub 2008 Mar 28. Okamoto M, Ohara-Imaizumi M, Kubota N, Hashimoto S, Eto K, Kanno T, Kubota T, Wakui M, Nagai R, Noda M, Nagamatsu S, Kadowaki T. Adiponectin induces insulin secretion in vitro and in vivo at a low glucose concentration. 
  4. Nature 2010 Apr 29;464(7293):1313-9. doi: 10.1038/nature08991. Epub 2010 Mar 31. Iwabu M, Yamauchi T, Okada-Iwabu M, Sato K, Nakagawa T, Funata M, Yamaguchi M, Namiki S, Nakayama R, Tabata M, Ogata H, Kubota N, Takamoto I, Hayashi YK, Yamauchi N, Waki H, Fukayama M, Nishino I, Tokuyama K, Ueki K, Oike Y, Ishii S, Hirose K, Shimizu T, Touhara K, Kadowaki T. Adiponectin and AdipoR1 regulate PGC-1alpha and mitochondria by Ca(2+) and AMPK/SIRT1. (関連記事:不正疑惑渦中の東大医学部論文 および東大分生研論文の告発内容を 画像編集フリーソフトで確認する方法
  5. Cell Metabolism 2011 Apr 6;13(4):401-12. doi: 10.1016/j.cmet.2011.02.010. Awazawa M, Ueki K, Inabe K, Yamauchi T, Kubota N, Kaneko K, Kobayashi M, Iwane A, Sasako T, Okazaki Y, Ohsugi M, Takamoto I, Yamashita S, Asahara H, Akira S, Kasuga M, Kadowaki T. Adiponectin enhances insulin sensitivity by increasing hepatic IRS-2 expression via a macrophage-derived IL-6-dependent pathway.
    • (著者の説明) “指摘された論文の一つは私が筆頭著者です(Cell Metab 2011)。元データも存在しますし、いつでも提出できます。 Fig2bでコントロールのグレーのバーがX軸から離れている、との指摘ですが、手作業でエクセルを図表に直した時に生じたズレです。”(東大医学部の研究不正 医療ガバナンス研究所理事長のブログ2016年9月2日 コメント4:32 PM2016年9月2日
  6. Diabetologia 2012 Dec;55(12):3318-30. doi: 10.1007/s00125-012-2711-1. Epub 2012 Sep 16. Shojima N, Hara K, Fujita H, Horikoshi M, Takahashi N, Takamoto I, Ohsugi M, Aburatani H, Noda M, Kubota N, Yamauchi T, Ueki K, Kadowaki T. Depletion of homeodomain-interacting protein kinase 3 impairs insulin secretion and glucose tolerance in mice.
  7. Nature 2013 Nov 28;503(7477):493-9. doi: 10.1038/nature12656. Epub 2013 Oct 30. Okada-Iwabu M, Yamauchi T, Iwabu M, Honma T, Hamagami K, Matsuda K, Yamaguchi M, Tanabe H, Kimura-Someya T, Shirouzu M, Ogata H, Tokuyama K, Ueki K, Nagano T, Tanaka A, Yokoyama S, Kadowaki T. A small-molecule AdipoR agonist for type 2 diabetes and short life in obesity.  (著者らによる日本語での解説 ライフサイエンス 新着論文レビュー)

小室一成氏の研究室より出された論文

  1. Nature Communications 7, Article number: 11635 (2016) doi:10.1038/ncomms11635 Published online:18 May 2016. HIF-1α-PDK1 axis-induced active glycolysis plays an essential role in macrophage migratory capacity. Hiroaki Semba, Norihiko Takeda, Takayuki Isagawa, Yuki Sugiura, Kurara Honda, Masaki Wake, Hidenobu Miyazawa, Yoshifumi Yamaguchi, Masayuki Miura, Dana M. R. Jenkins, Hyunsung Choi, Jung-whan Kim, Masataka Asagiri, Andrew S. Cowburn, Hajime Abe, Katsura Soma, Katsuhiro Koyama, Manami Katoh, Keimon Sayama, Nobuhito Goda, Randall S. Johnson, Ichiro Manabe, Ryozo Nagai & Issei Komuro 問題点:エラーバーの長さが2種類のみの図 (関連記事:不正疑惑渦中の東大医学部論文 および東大分生研論文の告発内容を 画像編集フリーソフトで確認する方法
  2. International Heart Journal Vol. 57 (2016) No. 2 p. 198-203. http://doi.org/10.1536/ihj.15-332. Shorter Heart Failure Duration Is a Predictor of Left Ventricular Reverse Remodeling During Adaptive Servo-Ventilator Treatment in Patients With Advanced Heart Failure.Teruhiko Imamura1), Koichiro Kinugawa1), Daisuke Nitta1), Issei Komuro2) 1) Department of Therapeutic Strategy for Heart Failure, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo 2) Department of Cardiovascular Medicine, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo. Released on J-STAGE 20160322   [Advance Publication] Released 20160311. 問題点:奇妙なまでに一致する平均値とSD PubPeer.comでの議論:https://pubpeer.com/publications/26973264
  3. Scientific Reports 5, Article number: 14453 (2015) doi:10.1038/srep14453. Published online: 25 September 2015. Angiotensin II receptor blockade promotes repair of skeletal muscle through down-regulation of aging-promoting C1q expression. Chizuru Yabumoto, Hiroshi Akazawa, Rie Yamamoto, Masamichi Yano, Yoko Kudo-Sakamoto, Tomokazu Sumida, Takehiro Kamo, Hiroki Yagi, Yu Shimizu, Akiko Saga-Kamo, Atsuhiko T. Naito, Toru Oka, Jong-Kook Lee, Jun-ichi Suzuki, Yasushi Sakata, Etsuko Uejima & Issei Komuro 問題点:Fig.7 完全に一致するエラーバーの長さ PubPeer.comでの議論:https://pubpeer.com/publications/26571361
  4. Scientific Reports 6, Article number: 25009 (2016) doi:10.1038/srep25009. Published online:05 May 2016. Activation of endothelial β-catenin signaling induces heart failure. Akito Nakagawa, Atsuhiko T. Naito, Tomokazu Sumida, Seitaro Nomura, Masato Shibamoto, Tomoaki Higo, Katsuki Okada, Taku Sakai, Akihito Hashimoto, Yuki Kuramoto, Toru Oka, Jong-Kook Lee, Mutsuo Harada, Kazutaka Ueda, Ichiro Shiojima, Florian P. Limbourg, Ralf H. Adams, Tetsuo Noda, Yasushi Sakata, Hiroshi Akazawa & Issei Komuro 問題点:繰り返される数字;均一化された背景

高柳 広 教授の研究室から発表された論文

(東京大学大学院医学系研究科 免疫学 高柳研究室ウェブサイト)

  1. Nature Medicine 2014 Jan;20(1):62-8. doi: 10.1038/nm.3432. Epub 2013 Dec 22. Komatsu N, Okamoto K, Sawa S, Nakashima T, Oh-hora M, Kodama T, Tanaka S, Bluestone JA, Takayanagi H. Pathogenic conversion of Foxp3+ T cells into TH17 cells in autoimmune arthritis.  (著者らによる日本語での解説 ライフサイエンス 新着論文レビュー)
  2. Cell 2015 Nov 5;163(4):975-87. doi: 10.1016/j.cell.2015.10.013. Takaba H, Morishita Y, Tomofuji Y, Danks L, Nitta T, Komatsu N, Kodama T, Takayanagi H. Fezf2 Orchestrates a Thymic Program of Self-Antigen Expression for Immune Tolerance.

藤田 敏郎 教授の研究室から発表された論文

(東京大学・先端科学技術研究センター 臨床エピジェネティクス講座 藤田研究室ウェブサイト)

  1. Nature Medicine 17, 573–580 (2011) doi:10.1038/nm.2337 ShengYu Mu,    Tatsuo Shimosawa,    Sayoko Ogura,    Hong Wang,    Yuzaburo Uetake,    Fumiko Kawakami-Mori,    Takeshi Marumo,    Yutaka Yatomi,    David S Geller,    Hirotoshi Tanaka    & Toshiro Fujita. Epigenetic modulation of the renal β-adrenergic–WNK4 pathway in salt-sensitive hypertension.

辻 省次 教授の研究室から発表された論文

東京大学医学部附属病院 神経内科 辻研究室ウェブサイト

  1. New England Journal of Medicine 2013 Jul 18;369(3):233-44. doi: 10.1056/NEJMoa1212115. Epub 2013 Jun 12. Mitsui J, Matsukawa T, Ishiura H, Fukuda Y, Ichikawa Y, Date H, Ahsan B, Nakahara Y, Momose Y, Takahashi Y, Iwata A, Goto J, Yamamoto Y, Komata M, Shirahige K, Hara K, Kakita A, Yamada M, Takahashi H, Onodera O, Nishizawa M, Takashima H, Kuwano R, Watanabe H, Ito M, Sobue G, Soma H, Yabe I, Sasaki H, Aoki M, Ishikawa K, Mizusawa H, Kanai K, Hattori T, Kuwabara S, Arai K, Koyano S, Kuroiwa Y, Hasegawa K, Yuasa T, Yasui K, Nakashima K, Ito H, Izumi Y, Kaji R, Kato T, Kusunoki S, Osaki Y, Horiuchi M, Kondo T, Murayama S, Hattori N, Yamamoto M, Murata M, Satake W, Toda T, Dürr A, Brice A, Filla A, Klockgether T, Wüllner U, Nicholson G, Gilman S, Shults CW, Tanner CM, Kukull WA, Lee VM, Masliah E, Low PA, Sandroni P, Trojanowski JQ, Ozelius L, Foroud T, Tsuji S. Mutations in COQ2 in familial and sporadic multiple-system atrophy.

 

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その他の参考サイト

  1. Ordinary researchers(ウィキペディア)
  2. 誠実な生命科学研究のために 資料集 研究不正事件の報告書
  3. 捏造、不正論文、総合スレネオ45(5ch)

 

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