研究者ならだれでもインパクトファクターが高いトップジャーナルに論文を掲載させたいものです。しかし、論文の構成に関してIMRaDといった表面的なことを教えてもらえることはあっても、実際にいいジャーナルにアクセプトされる論文の書き方とリジェクトされる論文の書き方の違いを明確に示してもらえる大学院生はほとんどいないと思います。なぜなら、トップジャーナルにコンスタントに論文を出せるラボ(PI)が少ないからです。そういうラボに在籍してボスから指導を受ける、もしくはボスのやり方を盗み取るといった経験をしない限り、優れた論文を執筆するためのノウハウは得られません。
そんな、普通なら開示されることがなかったトップジャーナルに通すために秘訣が、情報がネットで流通する今の時代は、誰でも手に入るようになりました。そこで、なるほどと思える教えをまとめておこうと思います。
利根川先生から、もっとも影響を受けたことは何でしょう。
論文執筆の巧みさにも多くを学びました。内容や書き方だけでなく、全体を見事な球形に仕上げるんです。角のある尖った論旨は、必ず査読者に突っ込まれる。先にどのような質問が来るかまで見越して角を削り、論文の一語一語をていねいに洗練させていき、球を磨き上げていくような論文の書き方をします。
研究の組み立ても見事です。研究で一番悩むのは、結論を導く最適な道筋をどう選ぶかということです。先生の答えは「論文タイトルの文字数が少ない方が正解だ」。つまり、内容を的確かつ簡潔に表すタイトルで、どれだけ強いメッセージを出せるかが重要だということ。‥ このメッセージを出すために、実験の構成、手法や順番まで考えるんです。(https://www.terumozaidan.or.jp/labo/interview/83/05.html)(強調は当サイト)
トップジャーナルにとっての新規性とは、その分野の本質的な問題、すなわち一般人が疑問に思うようなクエスチョンに答える明確なメッセージがあるものであり、学術的意義のみならず社会的意義もあるものなのである。トップジャーナルに限らず、論文を書くときに大事なのは、前面にだすメッセージ性はなにかといつも問いかけることである。次に論文作成に必要なのは、ロジックの強いストーリーを構築することである。論文構築は、絵を描いたり彫刻を造ったりするようなものである。まず、図を作って大まかな流れをデッサンすることからはじまって、結果の細部を描く過程で、おさえておかなくてはいけない実験や、結論をサポートする多角的アプローチからの実験を塗り重ねていく。そして、間違った解釈をせずに良いディスカッションをするためには、次にやるべき実験の結果がでているとよい。そして、最後に、英文校閲にだし、英語独特のロジックと文体を補強し色づけを鮮やかにする。作品のメッセージ、ストーリー性、そこから湧き上がるロジックをだすために、いつも美意識を忘れないようにすることである。美しい自然の摂理を描くのだから。(「化学」2009年5月号コラム 美しい論文は必ず通る 東原和成)
Drawing on his experience, Yokoyama focused on the perspective of journal editors and how their decision-making on high impact science affects ongoing research. Editors evaluate the potential impact of individual papers by judging their conceptual advance, that is, whether a study advances a field in a large leap, rather than an incremental step. Yokoyama emphasized that the challenge for researchers who aim to publish in high impact journals is to collect strong data that is both grounded in existing knowledge but linked to a new idea or model. “Data alone provide the foundation for an advance but without communicating how the results fit or refute an existing model they fail to provide a conceptual advance. Communication is essential for scientific impact,” said Yokoyama. (PDFA event explores the path towards creating high impact science RIKEN BSI) (強調は当サイト)
Chalesは「良い論文を書くための準備は、研究構想を練るところからすでに始まっている」と言います。方向性が悪ければ、どうやってもいわゆるhigh-impact journalに論文を出すことは難しい。そこで何が最も大事かといえば、「Conceptual Advance」に尽きるとのこと。ただこれまでの研究を発展させた、では駄目で、根本的に重要で、今までに解かれていない問題は何か、その問題を解くのに最善の(多くの場合には、もっとも最先端の)手法を用いているか……、そういう、実験を開始する前のコンセプトが大事であり、なんとなく実験を初めて、集まったデータからストーリーを考えるのではなく、きちんと最初にストーリーを考えるべし、ということなのだと思います。(何が為に科学するか Conceptual Advance 東北大発生発達神経科学分野 2015年10月16日)(太字強調は当サイト)
参考
- 自己と他者の認識と記憶のメカニズムを解き明かす 東京大学 定量生命科学研究所 行動神経科学研究分野 准教授 奥山輝大「生命に関わる仕事っておもしろいですか?」 第83回 中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室 公益財団法人テルモ生命科学振興財団財団
- How to get published in high-impact journals: Big research and better writing (Naturejobs Blog 03 Nov 2014 Posted by Julie Gould)
- PDFA event explores the path towards creating high impact science RIKEN BSI
- 「化学」2009年5月号コラム 美しい論文は必ず通る 東原和成
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