日本の科学と技術

ノーベル物理学賞 小柴博士の科学財団が解散へ

2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊 東京大特別栄誉教授(90)がノーベル賞賞金を含む4,000万円、それに加えて、浜松ホトニクス社長の晝馬輝夫氏個人からの6,000万円、合わせて1億円を基本財産として2003年に財団法人平成基礎科学財団(2011年4月より公益財団法人)が設立されました。

小柴 昌俊博士が理事長となり、日本の基礎科学の振興を目的として設立された財団ですが、来年3月末に財団が解散することになりました。財政難と理事の高齢化が解散の理由として挙げられています。

賛助会員になってもらった地方公共団体に人口一人当たり1円に相当する金額を寄付してもらう「一人一円運動というアイデア」などにより財政を賄ってきましたが、地方自治体の財政が逼迫している状況で賛助会員収入が減り、将来の運営の見通しがつかなくなったそうです。

これは、わが国の基礎科学・芸術等の非営利の文化事業が、その財源を主として国からの財政支援に依存しており、欧米諸国と異なり文化的事業に寄付する慣行が社会的に未だ定着していないこと、このような慣行を確立するための法整備が遅れていることに根本的な原因があると存じます。(平成基礎科学財団解散のお知らせ より)

(「平成基礎科学財団解散のお知らせ」のデータをグラフ化)

ちなみに2016年度の地方自治体の会員数は、岩手県、富山県、鳥取県、飛騨市、豊橋市、横須賀市、杉並区の7団体にまで減っていました。

公益財団法人平成基礎科学財団の解散は、2016年3月の理事会において小柴昌俊理事長により提案され、理事会および評議員会による検討の末、決定しました。2016年度の事業は平常通り行われ、2017年3月末をもって財団の一切の事業が停止することになります。

財団がこれまで行ってきた事業の内容は、
1.幼児、小・中・高校生の自然科学への興味と関心を高め、科学的な能力の育成を図ることを目的とした小柴昌俊教育賞の授与、
2.素粒子物理学分野の実験または理論研究で優れた業績をあげた研究者の顕彰を行なう戸塚洋二賞・折戸周治賞の授与、
3.高校生・大学生を対象とし全国各地で開催した 「楽しむ科学教室」 、
4.「楽しむ科学教室」実録DVD教材の作製と配布
などです。

基礎科学の研究・教育の振興のために高校生と大学生を対象に主催された「楽しむ科学教室」講演会の記録

参考

  1. 平成基礎科学財団
  2. 平成基礎科学財団解散のお知らせ
  3. 折戸周治賞・戸塚洋二賞 歴代受賞者リスト(第1回2009年~第7回2015年)

報道

  1. 小柴さんの財団3月解散へ 役員高齢化など理由に(日本経済新聞 2016/10/24 21:04 ):”2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊・東京大特別栄誉教授(90)が設立し、理事長を務める平成基礎科学財団(東京)は24日までに、来年3月末に解散することを決めた。「財政上の問題と役員の高齢化が理由」としている。”
  2. 小柴さんの科学財団解散へ=財政難や高齢化で(時事ドットコムニュース2016/10/24-16:28 ):”ノーベル物理学賞を2002年に受賞した小柴昌俊東京大特別栄誉教授(90)が理事長を務める公益財団法人「平成基礎科学財団」(東京都千代田区)は24日までに、来年3月末で解散することを明らかにした。”

ネットの反応

  1. 【平成基礎科学財団 解散】ノーベル賞・小柴氏設立の財団解散へ 財政・人事苦しく(ヤフコメコム 2016-10-24 10:57:00)
  2. 【社会】ノーベル物理学賞・小柴氏設立の財団解散へ 財政・人事苦しく (daily.2ch.net)
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