岡山大学長は解雇権の乱用 地裁が給与の一部支払いを命じる
続報 ⇒ 岡山大学学長が研究不正を告発した教授を解雇した事件で、岡山高裁が解雇無効仮処分決定を取り消し (2017年3月30日)
研究不正を告発した二人の教授を学長が解雇したというこの事件の背景や発端については、次のウェブ記事がわかりやすいです。
… 「大学の研究者が、製薬会社にとって都合のいいように研究データを改ざん、それを根拠に執筆された不正論文は、この大学にもヤマのようにあります」森山教授がこう切り出して告発した数々の論文不正と、そこに至る岡山大学医学部の一部に広がる産学癒着の構図を、私は2月10日発売の『週刊ポスト』で記事化し、医薬 業界に衝撃をもたらした。… 大学院生の博士論文に疑問を感じ、調べたところ、実験も研究もろくに行わず、他人の論文を張り合わせただけの「論文」と呼ぶに値しないものであることが判明した。しかも、そう指導したのは担当教授だった。調査結果に驚いた森山教授らは、2012年3月初旬、調査委員会の報告書を森田潔学長に提出。処分があるものと思っていたら、森田学長は3月末、森山学部長を呼び出してこう伝えたという。「この問題は、これで終わりにしたい。これ以上、騒がないで欲しい」 岡山大医学部教授であり病院長でもあった学長が、不正の封印にかかったわけである。そこから両教授の戦いが始まった。… (データ改ざん、不正論文が次々発覚!製薬業界と大学「癒着の構造」に切り込んだ2人の岡山大教授の闘い 現代ビジネス 2014年02月13日 伊藤博敏)
また、「今、岡山大学で何が起きているのか」というウェブサイトのインタビュー記事からは、森山・榎本両氏の考え方がわかるので、その一部を改めて紹介します。
… 改革の過程で、既得権益を失った、あるいはこれから失う可能性のある複数の教員に対して、改善を促す努力をしてきたものの、既得権益を死守したい教員からは強い反発を受けることになりました。さらには、予算の不正執行、研究論文のねつ造、博士論文の剽窃など、驚くべき事態が次々に見つかり、それらを一つ一つ丁寧に調査し、改善に奔走してきたわけです。
私たちは森田潔学長らの大学執行部も賛同し、応援してくれるものと信じて疑いませんでしたが、実際にこれらの不正行為について報告、告発を行うと、隠蔽や不当な妨害、圧力をかけるという信じがたい対応を受けることとなりました。…(森山・榎本両教授への特別インタビュー 今、岡山大学で何が起きているのか?2014年11月01日)
森山芳則・榎本秀一両教授を解雇した岡山大学(森田潔学長)の主張は以下のとおりです。
平成26年1月から平成27年4月までの間に,元教授2名が本学の名誉を害する行為等を行ったため,本学の役員・部局長等で構成されている教育研究評議会で審査した結果,元教授2名は教員としての適性を欠くと判断され,学長は,同年12月28日をもって,元教授2名を普通解雇するとの決定を行いました。(岡山大学 元教員に関する裁判について 16.06.06)
これに対して、森山芳則元教授と榎本秀一元教授は平成28年1月12日付けで,岡山地方裁判所に対し,上記普通解雇が無効であるとして,労働契約上の仮地位の確認及び賃金相当額の仮払いを求める仮処分申立てを行っていました。
岡山地方裁判所(池上尚子裁判長)は、内部告発の公益性を認定し、処分は合理的な理由を欠き大学側が解雇権を濫用したという判断を下しました。申し立てのうち、給与の仮払いは認めましたが、地位の保全については、給与の仮払いが認められるので必要性がないとして却下しました。
森山元教授のコメント:
「地位保全は認められず残念だが基本的な主張は認められ、うれしく思う。裁判でも主張が認められることを確信している」(NHK岡山放送局)
森田潔学長のコメント:
「仮の地位が認められなかったことは正当ですが,仮払い請求が一部認められたことは誠に遺憾に思います。今後の不服申立手続きや地位確認訴訟において,引き続き本学の正当性を主張していきます。」(岡山大学 元教員に関する裁判について 16.06.06)
報道
- 岡大に解雇無効の仮決定(NHK NEWSWEB 岡山放送局 岡山県のニュース 2016年(平成28年)6月7日 13時07分):”医学部の論文に不正があるとして告発を続けていた 岡山大学薬学部の元教授2人が解雇されたことについて岡山地方裁判所は解雇権の乱用で無効だと指摘し大学に対して2人に給与を支払うよう命じる仮処分の決 定を出しました。…”
- 論文改竄告発で解雇、岡山大元学部長らへの処分は「無効」 地裁、大学側に給与支払い命令(産経WEST 2016.6.6 23:48):”岡山大の複数の博士論文について「データ改竄(かいざん)の疑いがある」との内部告発を行い、解雇された岡山大薬学部の元学部長と元副学 部長が処分の無効を求めた仮処分申請で、岡山地裁(池上尚子裁判長)は6日、「解雇は無効」として、大学側に2人の給与の一部を支払うよう命じる決定をし た。 …”
- 論文改竄告発で解雇、岡山大元学部長らへの処分は「無効」 地裁、大学側に給与支払い命令 (gooニュース/産経新聞 06月06日 23:54)
- 論文改竄告発で解雇、岡山大元学部長らへの処分は「無効」 地裁、大学側に給与支払い命令 (livedoor NEWS/産経新聞 2016年6月6日 23時52分 )
- 岡山大学に賃金の一部仮払い命令 (山陽放送 RSKニュース 2016年6月7日(火) 19:10):”… 仮処分の決定について岡山地裁の池上尚子裁判長は、岡山大学が2人の教授を解雇したことは「客観的に合理的な理由を欠き、解雇権の乱用であって無効」としました。 …”
参考
- 元教員に関する裁判について (岡山大学 ニュース 16.06.06):”岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の元教授2名が,平成28年1月12日,岡山地方裁判所に対して,労働契約上の仮地位の確認及び 賃金相当額の仮払いを求めていた仮処分申立てについて,同裁判所は,平成28年6月6日,以下の概要の決定を行いました。…”
- 岡山大学で不正告発をした教授らの解雇無効申立仮処分決定について 森山元教授に対する仮処分決定文 榎本元教授に対する仮処分決定文 (warbler’s diary 2016-06-06)
- 岡山地裁、「研究不正告発で解雇」無効の仮決定~岡山大学事件続報 (YAHOO!JAPAN ニュース 榎木英介 病理専門医かつ科学・技術政策ウォッチャー 2016年6月7日 17時0分配信)
- 今、岡山大学で何が起きているのか? 岡山大学の抱える問題点を告発し、大学執行部による懲戒処分の背景を解説します。
- なぜ?! 岡山大学の教授2人解雇 論文不正の告発から解雇処分までの4年間に起きたこと (WEB RONZA 高橋真理子 2016年01月28日)
- これは言論封殺だ!不正告発教授のクビを切った岡山大学の愚挙 (現代ビジネス 伊藤博敏 2016年01月14日)
- データ改ざん、不正論文が次々発覚!製薬業界と大学「癒着の構造」に切り込んだ2人の岡山大教授の闘い (現代ビジネス 伊藤博敏 2014年02月13日 )
- 岡山大学 薬学部紹介 岡山大学チャンネル(OkayamaUniversity)Published on Aug 18, 2015
- 岡山大学 医学部医学科紹介 岡山大学チャンネル(OkayamaUniversity) Published on Nov 12, 2013
- 卒業したことを誇りに思える大学へ 学長 森田 潔 (Buzip+ 岡山の社長.TV 番組公開日:2012年04月01日)
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